上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2011.09.13


【第66回】
夏よ!我に艱難辛苦を与えたまえ

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(前回のあらすじ)
ジャーナリスト・上杉隆は、中学・高校時代を通じて、ゴルフに夢中な青春を過ごしていた。大都会・新宿を舞台に、「大ちゃん」「イワオ」といった友人たちと、勉強を放り投げて白球を追う中学・高校時代――。これは、彼と彼の仲間たちを中心とした、青春ゴルフノンフィクションだ!

晩夏に振り返る
この夏一番の思い出

 夏が終わろうとしている。

 桑田佳祐さんの仙台での復活チャリティライブも終わった。布袋寅泰さんと吉川晃司さんによるコンプレックスの再結成チャリティライブも、その布袋さんとの熱い会話も終わってしまった。

 また、山下達郎さんの新アルバム発売のプロモーションも過ぎ、もう、彼と東京エフエムのスタジオで、刺激的な会話を交わすこともない。

 私は決して自慢しているわけではない。この夏に起きたアラフォー世代のヒーローたちとの邂逅を、厭味たらしく、誇らしげに見せ付けているだけなのだ。ふふふ。

 いずれにしても、さよなら夏の日である。今年の夏はいつまでも忘れないよ。放射能の雨に濡れながらも、ぼくらは大人になってしまったのだ。

 ジャスラックも地団駄を踏む、若干の虚脱感をもって、私は夏を振り返る。

 そう、北海道での夏のゴルフ、私にとって、今年最大のイベントはまさしくこれだった。

 高気圧ガールもびっくりの晴天の中、2000マイル飛び越えて、私は毎週、北海道に通ったものだった。北の大地でのゴルフは本州のそれとはまったく違う。せっかくだから、その羨ましい違いを読者のみなさんにお伝えしよう。これは端的に自慢である。

 まず、気候だ。北海道では真夏のゴルフにもかかわらず、真夏の果実も喜ぶような快適な空の下、フェアウェイを歩くことができるだろう。まず汗をかくことはない。しかも、もしも、暑いと感じれば、簡単に涼をとる方法もあるのだ。

 それは、少しばかりドライバーのフェースをオープン、あるいはクローズにして軽く振り抜けばいいだけだ。その結果、ほとんどOBのない北海道のゴルフ場では、プレーヤーは快適な木陰の下を歩くことができる。

 ただし、当然ながら、スコアが快適ではなくなることを覚悟しなくてはならない。

 次に違うのは芝だ。本州ではあまりお目にかかれない青々としたベント芝は、歩いているだけで心が躍るはずだ。

 その上、カート道はない。そう、北海道は基本、徒歩でのラウンドなのだ。美しい芝生の上を、誰もが、カートによる轍を希望の轍に変えて、悠々とゴルフを愉しむことができる。

 そのベント芝の上でのアイアンショットは格別だ。そう、北海道では、少年時代に夢見たオーガスタナショナルでの、あの草鞋のようなターフを、いとも簡単に飛ばすことができるのだ。

 必然、プレーヤーはダウンブローで打つことに心を奪われるだろう。その結果、スコアもダウンブローになることは避けられない現実だ。

 最後はスルーでのラウンドだ。海外では当然ではあるが、北海道でもまたゴルフは18ホールを通して行われる。文字通りのアウトとインで、恋もゴルフも止めないで、クラブハウスに戻ってくることができる。

 よって、スタート前に仲間たちとランチを愉しんでもいい。あるいは朝早く回って、ラウンド後にゆっくりとアルコールを愉しんでもいい。パーティの後の静けさで二人、転がるボールを、ダボの数だけ数え上げてもいいだろう。

 いずれにしろ、北海道のゴルフは、ダラダラとラウンドする本州のそれとは雲泥の差なのである。

 だが、その北海道での夏のゴルフも終わろうとしている。そう、いつの時代でもそうなのだが、人生において、愉しい時間は常に儚いものなのだ。


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