上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2011.08.24


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僕たちにとってゴルフとは
「青春」そのものだった。

 その美しい女性がローラ・ボーというプロゴルファーであることを知ったのはずっと後のことだった。さらに、そのカレンダーがゴルフダイジェスト社製のものであることを知ったのはさらにもっと後のことだった。

 ある意味で、僕とゴルフとの最初の出逢いはこの上なく美しかったのだ。

 美しいといえば、朝のゴルフ場の空の美しさに初めて気づいた時のことも忘れられない。

 冬の夜明け前、僕たちは、暗い道のりを歩いて赤羽ゴルフ場の門にたどり着く。まだ、太陽の昇る前の1番ホールで素振りを繰り返す。徐々に白んでくる東の空に向かって、ティアップをする。日の出を待ち切れず、次々と情けないショットを放っていく僕たち。

 フェアウェイ、いや左右のラフを歩きながら、僕たちはセカンドショット地点に向かう。ふと顔を上げると、グリーンの遥か向こうの空から一条の光が射し込んでくる。そして、次に、輝く白い光線が低い雲の中に隠れた瞬間、誰もが沈黙し、思わず立ち止まる。

 空全体が一瞬にしてピンク色に染まると同時に、風がやみ、なんとも言い難い柔らかい空気に包まれるのだ。

「暖かいな、きょうは」

「うん、風、止んだね」

 冬の朝の厳しいゴルフを覚悟していた僕らは、雲の中に太陽が隠れると喜んだ。そうすると、なぜか風は止み、少しだけ寒さが和らぐことを自然に知ったからだった。

 なぜ、僕らはゴルフを続けたのだろう。フェアウェイ、いや、ラフや林の中に青春の喜びは一切なかった。どちらかといえば、繰り返されるミスショットが生み出す「絶望」という感覚ばかりが心を支配した。だが、それでも僕らはゴルフを続けた。

「おー、ナイスショット」

「マジかよ、なんだよ、それ」

 そう、その理由はひとつ、ライバルでもある仲間たちからの驚きと賞賛の声を、その耳に響かせたかったのだ。

 その先には、誰もがひそかに夢見るプロゴルファーという将来の目標もあった。

 だが、結局、『放課後ゴルフ倶楽部』のメンバーからプロになった者は誰一人いない。少年たちの青春を費やしたゴルフというスポーツは見返りを与えなかったのか。

 いや、そんなことはないだろう。なにしろ、ゴルフそのものが僕たちの青春だったのだ。美しい思い出も、驚きの記憶も、いつもゴルフとともにあった。その理由は、『放課後ゴルフ倶楽部』という本にすべて書いてあるという。

 さぁ、予約のために本屋に走ろうではないか(笑)。

[ 第63回 終わり ]


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