上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2011.07.22


59img01a

プロテニス界の悪童と
ギタリストがタッグを組んだ!

 若いぼくたちはニックネームをつけただけの憧れのプロに成りきり、勝手に興奮し、胸をときめかせて決戦のときを待つのであった。

 そのとき、最後にエントリーしてきたのがコバとムーチンの二人であったのだ。

 当然ながら、この二人にもニックネームをつけなくてはならない。だが、ゴルフを球技ではなく、格闘技だと勘違いしているこの二人に相応しいゴルファーはなかなか思いつかない。

 クラブを叩きつけ、悪態を付き、超攻撃的なコバには、クレイグ・スタドラーでも、トム・ワイスコフでも、まだ足りないような気がした。

 僕たちが渾名付けで呻吟している中、いよいよ、東の空からは陽が昇ってきた。早くニックネームをつけないと、トーナメントも始まらない。

「そうだ!」

 円陣を組んでみなが悩んでいる中、突如、私の脳裏にコバにぴったりの人物が閃いたのだ。

「ジョン・マッケンロー!」

 おおー、ぴったしじゃないか。賛同の声が聞かれる。だが、当のコバだけが同意しない。

「ウエスギ、おまえ、ふざけんなよ。なんで俺だけテニスの選手なんだよ」

「いいじゃん、強いから」

 これでコバのニックネームは決まった。残るはムーチンだ。再び呻吟が始まった。

「何がいい? ムーチンは?」

 私が本人に尋ねた。だが、ギャンブルしか興味のないムーチンはゴルファーの名前などひとりも知らない。そこで、誰か好きな外国人はいないのかと聞きなおした。

「ジョージ・ハリスン」

 麻雀の最中も『ホワイトアルバム』(ビートルズ)1枚目の7曲目のジョージの歌「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」を口ずさみ、ギターで弾いていたムーチンらしい選択だ。

「それでいこう!」

 こうして、9人のゴルファーと1人のテニスプレイヤー、さらにビートルズからも1人のギタリストが参加して、いよいよ豪華なダブルスマッチがスタートすることになったのである。

[ 第59回 終わり ]


前ページへ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

運営会社 | プライバシーポリシー