上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2011.07.12


【第58回】
新宿ゴルフ史上、最低最悪のチーム

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(前回のあらすじ)
1980年代、ジャーナリスト・上杉隆は、ゴルフに夢中な青春を過ごしていた。「ヨデブ」「鈴っちゃん」「大ちゃん」「イワオ」といった友人たちと、新宿・戸山公園をコースに見立てた「箱根山CC」で、また「新宿パターGC」「サンコーCC」といった、“自作”のゴルフ場で、勉強を放り投げて白球を追う日々。これはそんな上杉と仲間たちを描いた、青春ゴルフノンフィクションだ――。

鈴っちゃんの提案によって
新たな対抗戦が始まった。

 ゴルフは孤独なスポーツである。チームメートもいなければ、サッカーや野球のような応援団もいない。

 もちろん、大声援を送るギャラリーがコースにいたら、うるさくてかなわないからそれでいいのだろう。まぁ、いずれにせよ孤独であることに違いはない。

 せいぜいキャディが唯一の仲間である。だが、プロのトーナメントならばまだしも、普段はひとりで戦うことが圧倒的に多いのがこのスポーツの特徴だ。

 ゴルフコースという自然を相手にして、ときに悪態をつきながら、あるいはブツブツ言いながら、10キロ以上もの道のりを基本、ひとりで歩く。

 思えば、なんと変態的なスポーツなのだろう。しかし、不思議なことに、そうした報われない孤独を愛する人々は全世界に散らばっている。世界は孤独でできているのだ。

 この世のすべての物事には例外というものがある。ゴルフもその例に漏れない。1番ティから完全個人種目と思われがちなゴルフも、ちゃんと仲間と戦う方式を提供してくれているのである。

「ねぇ、ダブルスマッチをやろうよ。アコムダブルスみたいなの」

 アイディアマンの鈴っちゃんの提案によって、僕たちは仲間とともに戦うゴルフがあることを知った。

「二人一組でチームを組んで、対抗戦をやろうよ」

 鈴っちゃんこと、鈴木秀俊の提案はいつも唐突だ。中学生とは思えない柔軟さと貪欲さで、常に新しいことにチャレンジし続けてきた。

 中学二年生の時、彼が生徒会長の選挙に出馬したときの公約も斬新だった。

 〈教室の壁に貼るポスターの自由化。映画ポスターの掲示も可能に〉
 〈給食の時間に流れる音楽の自由化。外国ポップスも可能に〉
 〈通学専用カバンの自由化。部活用のサブバッグでの通学が可能に〉

 こうした数々の自由化を断行してきた鈴木生徒会長は、ぼくたちのゴルフに関しても、さまざまな改革を行ってきた。そのひとつが、ダブルスマッチの導入である。

「二人一組で交互にボールを打ち、トータルでスコアを競い合う。組み合わせは〈指上げ〉で勝った人物から指名するっていうのでどう?」

 当時、新宿の中学生の間では両手の親指を使って、その総数を当てる〈指上げじゃんけん〉が流行していた。その結果の上位から、パートナーを指名していくというのが鈴っちゃんからの提案だった。

 こうして5つのダブルスチームが決まり、サンコーダブルストーナメントが始まった。


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