上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2011.06.22


【第55回】
目指せ!セクシー☆ゴルファー

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(前回のあらすじ)
ジャーナリスト・上杉隆は、中学・高校・大学時代を通じて、ゴルフに夢中な青春を過ごしていた。中学・高校では「大ちゃん」「イワオ」といった友人たちと、大学では自ら立ち上げたゴルフ同好会の仲間たちと、勉強を放り投げて白球を追う日々――。これは、彼と彼の仲間たちを中心とした、青春ゴルフノンフィクションだ!

「こんなセクシーなプロがいたなんて」
若い女性がつぶやいた……。

 セベ・バレステロスを偲びたい。その一心で私は動いた。

「グラシアス!セベ実行委員会」を勝手に立ち上げ、勝手に実行委員長に就任し、勝手にディナーパーティを開くことにした。

 セベを偲ぶのだから、もちろんスペイン料理である。場所は月島の「スペインクラブ」、10年以上前から通っている倉庫を改造したレストランである。

 メニューも決まっている。今年のマスターズのチャンピオンディナーでフィル・ミケルソンがセベのために用意したスペイン料理のフルコース。レシピはしっかり頂戴してきた。

 ガスパッチョから始まり、スペイン風アップルパイでしめるフルコース。おかげさまで実に多くの人が集まってくれた。この場を借りて勝手に御礼を申し上げたい。

 セベは誰からも愛されている。そう、たとえセベを知らずに、スペイン料理だけを食べに来ていた人からでも――。

「こんなセクシーなゴルファーがいたなんて知らなかった」

 会場で流した「チョイス」付録のDVDを観ながら、参加者の若い女性のひとりがつぶやいた。そう、セベほどセクシーなゴルファーはいない。今も昔も……。

 美しいスウィングを身につけるためだったら、私たちは、あらゆるものを犠牲にする覚悟ができていた。中学生に必須の勉強も、淡く不器用な恋も、そして肝心のゴルフのスコアすら、美しいスウィングのために犠牲にすることをいとわなかった。

「完璧、完璧。トップからフィニッシュにかけての流れがまるでトム・ワトソンみたいだよ」

 ボールを打つ大ちゃんの横で、みなそれぞれが好き勝手な講評を行なっている。確かに、大ちゃんのスウィングは美しかった。私たちの中でもっとも美しいスウィングの持ち主であることは疑いなかった。

 だが、必ずしもその打ち放たれたボールの飛球線が、スウィングに伴う美しさをもっているとは限らなかった。

「あれ~」

 完璧なフィニッシュが決まった後、ボールは、大ちゃんの足元に転がることが少なくなかった。なぜそうなるのかわからない。

 だが、それでも、ゴルフでは結果よりも、美しさが勝ることはある。その一点で大ちゃんは、私たちの尊敬を確実につかんでいたのだ。


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