上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2011.06.15


【第54回】
今も同じ風が吹いている。

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(前回のあらすじ)
ジャーナリスト・上杉隆は、中学・高校・大学時代を通じて、ゴルフに夢中な青春を過ごしていた。中学・高校では「大ちゃん」「イワオ」「鈴っちゃん」「コミ」といった友人たちと、大学では自ら立ち上げたゴルフ同好会の仲間たちと、勉強を放り投げて白球を追う日々――。これは、彼と彼の仲間たちを中心とした、青春ゴルフノンフィクションだ!

ゴルフジャーナリストとして
福島のゴルフ場に行ってきた。

 今週、福島県を二度にわたって訪れた。

 原発取材での訪問だったが、もちろん本業を疎かにするつもりはない。厳しい原発取材の合間を縫って、ゴルフ場に向かった。ゴルフジャーナリスト(仮)としては当然の行動だろう。

 阿武隈の深い緑の中に広がる美しいコース、初夏のゴルフシーズンを迎えているにもかかわらず人影は多くない。いや、ないと言った方がいいかもしれない。

 3・11の大震災による被害は計り知れない。あらゆる分野において震災は影響を与えている。もちろんゴルフとて例外ではない。

 客足が遠のいただけではない。経営状況の悪化しているゴルフ場も続出している。とくに放射能事故のイメージのついた福島県でそうだ。

「福島じゃ、自粛、自粛でとてもゴルフという雰囲気じゃないね。人が死んで、放射能で家に帰れない人もたくさんいるんだ。そんな中、ゴルフなんてやっている場合じゃないだろう、という空気があるのはしかたない。でも、本当はラウンドしたくても人の目もあるし、相手もいないし、それで、どこのゴルフ場も閑古鳥が鳴いている状況なんだよ」

 ゴルフ場で働く知人のひとりはこう分析する。確かに、福島県内のゴルフ場はどこも厳しい状況に置かれているようだ。

 とりわけ、浜通りのゴルフ場は営業再開の目途すら立っていないところが多い。あの美しい海岸沿いの深い緑の芝を踏むことは永遠にかなわないのだろうか。

 大学時代、日本一周の旅に出たことがある。男3人、一台のワゴン車に、寝袋と着替えとゴルフクラブを積んでひたすら走り続けた。

 アライとオッキーと私の3人が、代わる代わるハンドルを握って、旅をする。ちょうど東北地方の海岸沿いを北上しているときのことだった。強風の吹きつける海に囲まれた小さな岬に這い蹲るようにして緑の芝生が生えている場所を見つけたのだ。

 緑の芝といえばやることは限られている。寝転ぶか、四葉のクローバーを探すか、ゴルフをするかのどれかだ。

 もちろん、私たちは躊躇することなく、ゴルフクラブをクルマから取り出した。そう、3人とも都留文科大学ゴルフ同好会のメンバーだったのだ。


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