上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2011.04.20


【第47回】
都留文科大学ゴルフ同好会の優雅で散文的な代表選考顛末記。

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(前回のあらすじ)
1980年代、大都会・新宿の真ん中で過ごした中学・高校時代をゴルフに捧げたジャーナリスト・上杉隆。大学受験のためにしばしゴルフから離れていた彼は、都留文科大学入学後、持ち前のエネルギーとゴルフ愛で「ゴルフ同好会」を設立する。会の活動がようやく軌道に乗った頃、仲間の提案で他大学との対抗戦に出場することになったが――。

初の対外戦に挑む、
男子選抜メンバーたち。

 「ロイヤル&エインシェント・セントアンドリュース・ゴルフクラブ&ザ・ニュース・オブ・都留」

 偉大な正式名称が決まったら、次は部員の補強である。対外戦のためにはなにより強力な助っ人がほしい。

 しかし、ムササビが飛び交う山間の都留文科大学に、強力なゴルファーがいるとは思えない。いや、ひとりだけゴルフ歴の長い先輩がいたことにはいた。彼女は、高校時代からゴルフ部でならしただけあって圧倒的に上手かった。

「時間があったらご一緒するわ」

 彼女は淡々と練習をこなし、決して私たちのサークルの中に溶け込むことはなかった。それは賢いゴルファーであるならば、当然の選択であるといえた。時間は有効に使わなくてはならない。そう、仮に、私が彼女の立場でも、きっとそうしたであろう。

 そうなると、私は自前で助っ人を作らなければならない。作る、つまり育てる必要があるのだ。まったくそれは至難の業だった。

 現在の日本政府をみればわかるとおり、そうそう都合の良い人材は、都合よく存在しないものなのだ。

 風間直樹(カザマ)と天野和弘(アマキチ)――。ゴルファーとしてはまだまだ都合がいいわけではなかったが、同じ山梨県出身のこの二人の後輩は、練習熱心という点では非常に都合のよい選手候補であった。

 カザマは、その長身を生かしたゆったりしたスウィングで、ゆったりとボールを打ち、ゆったりとしゃべる人物だった。元来、器用であり、几帳面だからであろう、ボールを丁寧に捉えて、すぐに上達し始めた。

「上杉さん、ぼくのスウィング、どの点に問題がありますか?」

 カザマはまた研究熱心な人物でもあった。打つよりも考えている時間が長い。

 一方で、アマキチは考えている時間よりも、動いてる時間の長い対照的な後輩だった。

「案外、簡単っすね、ゴルフって。打ちゃーいいんでしょ、打ちゃー」

 トム・カイトのような愛らしい表情で笑いながらそう言うと、実際、アマキチはあっという間にスウィングし、驚くほど見事にボールを捉えるのだった。

 アマキチには天性の才能が備わっているようにみえた。さっぱりした性格とそれ以上にさっぱりしたアイアンショット。一分間に65発ほど打っているのではないかという程の早撃ちは、往時の倉本昌弘かのようであった。

 だが、そのさっぱり感は天性の飽きっぽさにつながる。アマキチの姿がさっぱりと練習場から消えることもしばしばであった。

 後輩のうち、この二人は自動的にレギュラー候補であった。


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