上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2011.01.25


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大学生活の初日、スタッフの一言に
目の前が暗くなった……。

 「ゴルフ部はありません」

 大学オリエンテーションの初日のことだった。

 パンフレットの部活・サークル紹介の欄を、グリーン上のカップよりも大きな穴が開くほど長く見つめていた私は、思い切って説明している大学スタッフに尋ねてみた。

「施設もないですし、希望者もいないので、サークルや同好会もありませんね」

 ゴルフ部がない。しかもサークルも同好会もないという。

 地方の大学にいけば、必ずゴルフ部があるものとばかり信じていた私の大学生活は、最初の一歩から大きく躓いたのだった。

 それにしてもこんなに緑深い自然に恵まれた場所で、都留文科大学の学生は何をしてきたのか? 絶望の淵に追いやられながらも、私はどうにか心を立て直し、小さな声で再度たずねた。

「では、作る予定は?」

 大学事務局か、あるいは大学の先輩だったのだろうか、その説明者は、間髪入れずにこう回答したのだった。

「一切ありません」

 目の前が暗くなった。楽しいはずの入学式、その際、ここまで絶望の淵を彷徨った大学生がいたことを、都留文科大学事務局と、山梨県のゴルフ関係者はぜひとも忘れないでほしい。

 とはいえ、ゴルフというスポーツに関しての認識は、当時は大抵その程度だったのだ。

 大学がゴルフを毛嫌いし、スポーツ競技として認めることに積極的でなかったのは何も都留文科大学だけに限ったことではない。全国どこでも、とくに国公立大学ではそうした傾向が強かったのだ。

 大学が協力してくれないというのならば、あとはいつものように、自分でやるだけである。

 私はふと、入学式のときに昇ってきた大学入口の坂の途中のゴルフ練習場らしきネットの存在を思い出した。

 私にとっては何の実りもないオリエンテーションである。トイレに行くふりをして、さっさと抜け出すと、そのまま坂を下って緑色のネットの方に向かって歩いた。

「こんな素晴らしい場所に、都合よく練習場があるのだろうか」

 疑心暗鬼のまま、私は建設会社の建物の脇を抜けた。

 果たしてそこは4打席の見事なゴルフ練習場であった。

[ 第39回 終わり ]


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