上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2010.11.09


【第30回】
電話ボックスゴルファー"ウエスギ"

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(前回のあらすじ)
ジャーナリスト・上杉隆。政治やメディアの問題に深く切り込む彼は、1980年代、ゴルフに夢中なひとりの高校生だった。大ちゃん、ヨデブ、鈴っちゃん、エテパン、イワオといった個性的な仲間たちと上杉の頭の中は、放課後も授業中も、ゴルフのことで占められていた。これは、大都会新宿に生きる5人の高校生ゴルファーを中心とした「青春ゴルフノンフィクション」だ――。

ダグ・サンダースのスウィングに
似ているファッションモデル。

 ソリッドコンタクツのゴルフコンペに参加した。

 秋のGC成田ハイツリー、空は高く青く澄んでいる。紅葉は緑の芝に映えている。私は自らの足でフェアウェイを歩いている。

 なんという幸福だろうか。生きててよかった。ゴルフをやっていてよかった。あなたに会えてよかった♪ まさしく小泉今日子も喜ぶゴルフ日和の週末である。

 さらに幸福なことにメンバーにも恵まれた。

 麻布十番のイタリアンレストランのオーナー、汐留のテレビ局の政治記者、そして仕草もスウィングも美しいファッションモデルの三人とのラウンドであったのだ。

 誰もがボールを上手に扱う。さすがゴルフメーカーのコンペである。ツワモノを揃えてきている。中でも前半9ホールで軽く38を叩き出してきたファッションモデルは素晴らしい。顔、スタイル、いや、ちがった。これはゴルフのコラムだ、そう、彼女のゴルフスウィングが素晴らしいのだ。

 限りなく小さなトップから放たれる正確なショット。ボールはまっすぐに飛び、ピンを射る。腰の高さまでしか上がらないトップオブスウィングから打たれたとは思えない。なぜそこまで飛ぶのか皆目、見当がつかない。

「テレフォンボックススウィング」と呼ばれたコンパクトトップのダグ・サンダース
 誰かに似ている。私は彼女のスウィングを見つめながら、なんとか記憶の糸を辿っていた。

「ダグ! ダグ・サンダース!」

 思わず叫んでしまった。そう、彼女の打ち方はまるで、あの「テレフォンボックススウィング」のダグ・サンダースを髣髴とさせるコンパクトさなのである。

ダグ・サンダース※写真:「テレフォンボックススウィング」と呼ばれたコンパクトトップのダグ・サンダース

 携帯電話全盛の時代にあって、なにしろ電話ボックスである。だからこそ、パステルに染まった高原のテレフォンボックスのように、芝にも映えていたのだろう。

 まさしく彼女は、田原俊彦もハッとしてグッとくるような現代の「テレフォンボックススウィング」の持ち主なのである。

 ダグ・サンダースのコンパクトスウィングは、とかくオーバースウィング気味になる私たち少年ゴルファーにとっては、奇異で理解しがたいスウィングの代表格であった。

「身体の捻転」と「大きな弧」こそがボールを飛ばす秘訣だと教えられてきた私たちにとって、それは常識を覆すものであった。

 確かにショットの正確性においては理解できるスウィングであった。その理由はアプローチを考えれば簡単だった。ボールとクラブヘッドの離れる距離が小さくなればなるほど、正確性は増す。たとえ物理の成績が悪くてもそれくらいのことは私たちの頭脳でも十分に理解できたものだった。

 だが、それで飛距離が出るというのはどうしてもわからない。なぜだろうか。ダグ・サンダースの連続写真を見つめながら、みな頭をひねったものだった。


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