上杉隆 連載コラム 「前略、芝の上から」

2010.09.08


【第21回】
「泥棒ゴルフ」その2 ―セカンドショットが打てなくて―

21img01a
(前回のあらすじ)
ジャーナリスト・上杉隆は80年代、ゴルフに夢中な高校生だった。大都会・新宿の片隅を舞台に、ときには夜のゴルフ場に忍び込んでクラブを振り回した日々への追憶。これは、「ヨデブ」「鈴っちゃん」「イワオ」「エテ」「大ちゃん」といったゴルフで固く結ばれた仲間と上杉とが織り成す、青春ゴルフノンフィクションだ――。

民主党の代表選取材のため、
小沢一郎の記者会見にやってきた。

 なにやら忙しい。芝の上に立つ時間もない。今、私は永田町の衆議院議員会館のフロアの上に立っている。

 芝と違って幾分硬い。だが硬いのは地面だけではない。交わされる会話も硬い。見渡せば、周囲の記者たちはみなスーツ姿の男たちばかりである。

 ゴルフ記者にしては様子が違う。そう、きょうの私の仕事は、民主党の代表選の取材、小沢一郎の記者会見にやってきている。

 この後は続いて、鈴木宗男氏の会見が控えている。先ほど、最高裁への上告が棄却され、実刑が確定した。それを受けての緊急会見というわけだ。

 そう、ご覧の通り、私はいつもゴルフ場にいるわけではないのだ。そうしたわけで、「ゴルフの図書館」の入稿が遅れている。冒頭に言い訳を交えて現況をお伝えした。

 遅れているのは原稿だけではない。会見場への到着も遅れてしまった。そのおかげで見渡しても空席はない。

 と、そこに見えるは、「週刊プレイボーイ」の女子アナ担当、村上隆保記者(通称・たかぽ~)ではないか。さりげなく横に立つと、問わず語りでこう言う。

「上杉さん、良かったら席どうですか。ぼくはこれから堀江貴文さんのインタビューに行くので……」

 なんという親切。やはり持つべきは女子アナ関連友人、あるいはゴルフ友人の友人である。

 遠慮なく、しかしながら、コソコソと椅子に座った。そのおかげでこうやって「ゴルフの図書館」の原稿を書くことができたのである。

 思えばいつも私はコソコソしている。高校時代、大宮CC、大宮国際CCでプレーをしていた時もそうだった。

 夏休みの早朝、私は単身、埼玉の大宮駅に向かったものだった。高田馬場駅までキャディバッグを担いで山手線に乗る。京浜東北線に乗り換えて、大宮駅に向かう。当時は埼京線はなく、ぐるっと田端駅まで回って、埼玉に向かった。

 大宮に着くと今度は川越線で二駅、ほとんどさびれた無人の指扇駅を目指す。ここまででゆうに一時間、そこからさらに肩に食い込むキャディバッグの重みに耐えながら、歩いてゴルフ場に向かったものだった。

 それぞれ、大宮CCは月曜日、大宮国際GCは火曜日が定休日である。私の目指すのはまさしくその定休日である。

 ゴルフ場に到着しても、クラブハウスには近づかない。コソコソと周囲を見回しながら、木々の間を抜けて一番ホールに向かう。そこにはセルフプレーのスタートを待っている大人たちの行列がある。


次ページへ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

運営会社 | プライバシーポリシー