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2012.12.17


人生最初の一打は、ライン川に消えていきました

 日本人初のプロサッカー選手としてドイツ・ブンデスリーガで活躍した奥寺康彦さん。サッカー殿堂入りの名選手も、ゴルフの魅力にとりつかれたひとりだ。「思い通りにいかないからこそ楽しい」という奥寺さんのゴルフライフ、さらには海外挑戦の先駆者として、遼くんへのアドバイスを語ってくれた。

意外とゴルフのほうが
“東洋のコンピュータ”かもしれません

本格的なゴルフデビューは、ちょうど現役を引退した頃ですね。周囲にゴルフ好きが多かったし、いつか始めたいな、と思いながらチャンスがなかったんですけれど、「ひと区切りついただろう」ということで、友人が誘ってくれたんです。

奥寺康彦 僕は野球やテニスの経験があったから、結構できる自信があったんですが、ダメでしたね(笑)。スコアは120くらいだと思います。マン振りしては右に行ってばかりで、これほど思い通りにいかないスポーツは初めてでした。一種、カルチャーショックだったのを覚えています。

やっぱり、止まっている球を打つというのは難しい。体も、来たボールに反応するほうが動きやすいんですよね。自分から打ちにいくと、無駄な力が入ったり動きがスムーズじゃなかったりで、どうしてもミスが多くなってしまう。頭ではわかっていても、最初はなかなか慣れませんでした。

僕のゴルフは堅実派で、飛ばしたいというよりも、曲げたくないタイプ。それにどちらかというと、しっかりコースマネジメントして、冷静にプレーしていると思います。サッカーでは「東洋のコンピュータ」なんて言われていたけれど、実際はすごく熱くなっていたんですよ。だからゴルフのほうが、プレースタイルはコンピュータぽいかもしれませんね(笑)。

僕はそこまでスコアにこだわっていなくて、スコアを気にして黙々とプレーするよりも、みんなとコミュニケーションをとって、プレーするほうが楽しいですね。もちろん、周囲に気を使って、一緒に回る人が快適にラウンドできるように、ということも心がけていますよ。

皇帝・ベッケンバウアーも
ゴルフが大好きなんですよ

実は、初めてゴルフボールを打ったのはドイツなんですよ。ちょうどドイツに渡ったばかりで、FCケルンに所属していた当時です。デュッセルドルフという町に本屋さんを営んでいる知人がいて、その方がドイツでは珍しいゴルフ好きだったんですよ。招かれて自宅に遊びにいったら、ライン川に面した広い庭に案内されて、そこでドライバーを渡されて「打ってみな」と。ちょっと戸惑ったけれど、一発打ったらバチーンって気持ちよく当たって、とにかくいい感触だった。まぁ、ボールはスーッとライン川に吸い込まれていったんですけれどね(笑)。ともあれそんな楽しい経験があったから、始める前からゴルフにはいいイメージがありましたよ。

奥寺康彦 ただ、その当時のドイツはゴルフの後進国でした。ちょうど僕がブレーメンでプレーしていたときにベルンハルト・ランガーがマスターズ(85年)を勝ったんですけれど、ほとんど話題になりませんでしたから。「せっかくの快挙なのに、空港で誰も出迎えにこなかった」って逸話があるらしいですけれど、あながち間違っていないんじゃないかなと思います。なんとなく、自分の境遇と重ね合わせてしんみりしましたね。当時はサッカーも、日本ではマイナーなスポーツでしたから。

でも、いまは日本でのサッカーのように、ドイツのゴルフも盛り上がっていますよ。マーティン・カイマーなど強い選手もいますしね。サッカー選手も、引退後はゴルフをする人が増えていて、一緒にラウンドしたことはないんですけれど、フランツ・ベッケンバウアーもゴルフが大好きらしいですよ。


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