名手・達人の言葉

2012.01.18

他人のものを盗んだら泥棒だが、他人の技術を盗んでも泥棒にはならない。――林由郎
過日に続いて訃報である。日本のプロゴルフの黎明期(れいめいき)に活躍した林由郎が、2012年明け早々に老衰のため永眠した。89歳であった。

林は10歳で自宅近くの我孫子GCでキャディのアルバイトを始めたことから、プロゴルファーへの道を開いた。

16歳でプロになったのだが、技術習得はもっぱらお客さんのフォームを盗むことから始まった。

林がビッグタイトルを総ナメにする飛躍をしたのは、当時の超一流である、戸田藤一郎、宮本留吉からスライスの技を盗んだのがきっかけだった。それまでフックしか打っていなかったが、技術の幅が広がったのだ。

「技術は教わるものでなく、盗むもの」。この精神は後に弟子になる青木功、ジャンボ尾崎兄弟、新しくは福嶋晃子にまで受け継がれた。

樋口久子は全米女子プロに優勝する1977年のオフに、林が所属するコースへ訪れ、バンカーの技を“盗んで”帰り、それが勝因の一因にもなったという。

名選手でありながら名伯楽であった稀有な例。合掌。

■林由郎(はやし・よしろう 1922~2012)
ゴルフは10歳の頃、自宅近くの我孫子GCでキャディのアルバイトをしたのがきっかけ。プロ入りは昭和13年、16歳の時。だが戦前はプロ活動はほとんどなく、兵役にとられた。戦後になって、才能は一気に開花。戦後再開の公式戦、関東プロ、日本プロ、日本オープンの3戦をとり、一躍、中村寅吉とともにプロゴルフ界興隆の担い手となった。その後も順調に実績を重ね、日本オープン2勝。日本プロ4勝。関東オープン、関東プロ各2勝。ワールドカップへも参加。青木功、尾崎将司、尾崎直道、飯合肇、福嶋晃子など賞金王、女王を育てた名伯楽として知られる。七色の球筋を操り、我孫子弁での朴訥(ぼくとつ)なレッスンも評判を呼び、一世を風靡した。 2012年1月2日、老衰のため死去。

 

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