名手・達人の言葉

2009.11.04

腕前は一流たれ。しかし練習するのは三流コースがよい。━━中村寅吉
 

 この「言葉」は、トラさんが弟子たちに言う口癖であった。

 現在は日本女子プロ協会・会長である樋口久子は、トラさんの下で修行中、何百回となくこの話を聞いたという。樋口は弟子のなかでも末っ子的存在で可愛がられ、トラさんが手塩にかけて育てたといっていい。

 しかし、手取り足取りで教えたわけではない。そんなことしても技術は決して身につくものではなく、それよりも師を見て“盗め”と……。

 自分の目で見て、試して、体を動かして、納得したものしか自分に残ってはいかないというのが、トラさんの教えの哲学だった。試す段階は、度を越すようなシチエーションがあるコースの方が練習台として役に立ち、過酷な条件での練習の方が、より優れた技術を生み出すと考えたわけだ。

 そんな中村寅吉の「言葉」には、体験で培った職人の汗の匂いがする。

 

■中村 寅吉(なかむら・とらきち 1915~2008)

横浜市生まれ。家が貧しかった寅吉少年は、小学校を卒業後、保土ヶ谷CCでキャディとして働く。見よう見真似でゴルフを覚え、やがて先輩を追い抜く上達をみせる。158cmの小柄な身体で飛ばすための「2段モーション・スウィング」は血のにじむような練習で身につけた。プロ入りし、マッチプレー全盛の頃はさしたる成績は残していないが、ストロークプレーになって無類の強さを発揮しはじめる。56年に始まった関東オープンでは4年連続、その後2年置いて3連勝を果たす。
日本オープン3勝、日本プロ4勝など勝利多数。81年の関東プロシニアでは公式戦では日本で初めてエージシュートも達成。なかでも極めつけは57年に霞ヶ関CCで行われた当時のゴルフのワールドカップ「カナダカップ」に小野光一と組んで優勝したことだろう。中村は個人優勝も果たして戦後のゴルフブームに火をつけた。
女子プロ界の女王となる樋口久子を育てたことでも有名。その後も日本プロゴルフ協会会長なども歴任。プロ界の指導的役割も果たした。

 

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