名手・達人の言葉

2009.09.09

扇風機は心棒が不動やから、いつも同じ首振りができるんや。――戸田藤一郎
 

「鬼才」と呼ばれたトイチこと戸田藤一郎は、ゴルフの才能はむろん、その言動においても伝説的存在だ。稀代のショットメーカーと謳われたベン・ホーガンにも擬せられる。

 鬼才ぶりを示すプレーでのエピソードは数多いが、先程もふれたがその言動も異色だった。今回はその“言”のひとつを紹介しよう。

 トイチの「言葉」には独自の言い回しがある。それはゴルフ用語以外はカタカナを使わなかったこと。喩えにしても自分の身のまわりのこと、モノを使って表現した。

 表題の「言葉」もそうだ。トイチは晩年、京都の白川通りで蕎麦屋「藤十郎」を営んだが、取材のお供で筆者が訪れたときに、その「言葉」は発せられた。

 近くにあった扇風機を指して、「スウィング軸が不動だからいつも同じ振りができ、同じ風がくるんや」と。

 実際、トイチのスウィング軸である背骨は常に不動であった。トップでこそ上体は頭一個分右に動くが、“165cmの小柄な体で円弧を大きくするため”トップからフィニッシュまでは背骨の軸は微動だにしなかった。

 57歳でレギュラーツアーを制した、見事な球捌きの秘訣はそこにある、と筆者は思う。

 

■戸田藤一郎(1914~84年)

10歳から甲南GCのキャデイとして働きながら、見よう見まねでゴルフを覚える。廣野GCが創立されると同時に移籍。18歳でプロの資格を得て、19歳で初優勝を飾る。35年には全米オープンに出場。W・ヘーゲンの回顧録に、「日本からきた6人のなかで素質抜群、外国勢のなかでも最極上」と記されている。39年には日本オープン、日本プロ、関西オープン、関西プロを獲り、年間グランドスラムを達成。圧巻は63年の日本オープンで25年ぶりに2回目の優勝を飾ったこと。71年には57歳で関西オープン7回目の優勝を果たすなど、38年の長きにわたって第一線にいた。

 

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