名手・達人の言葉

2009.07.22

そうだ、順位を示すボードを試合中見ないと心に誓ったんです。――樋口久子"
 

 樋口は、メジャータイトルを獲っている唯一の日本人である。そのメジャータイトルとは1977年の、全米女子プロ選手権。

 最終日、樋口はパット・ブラッドレーと首位で並んでスタートしたが、1打差に5人が並んでいて大混戦が予想された。その時、樋口は勝てるなどとは露とも思っていなかったという。

 前半の9ホールが終わって混戦から抜け出したのは、ブラッドレー。2打差をつけた。しかしここから彼女は崩れていく。代わって樋口が伸びていく。アウトは34。10番、12番とボギーが続いたが、13番、14番でバーディが出て息を吹き返す。この時、樋口は思った
「他のプレーヤーのことはどうでもいい。ただ悔いの残らない自分だけのゲームをしよう。そうだ、それにはボードを見ないことだ」

 しかし、15番でパットラインを読んでいる時、カメラマンが動き、それにつられて目をやると、ボードが目に映ったのだ。なんと自分の名前がいちばん上に載っているではないか!

 それでも樋口に動揺はなかったという。その時にはもう“自分のゴルフをする”という決意が全身にいきわたっていたのだろう。

 結局、2位に3打差をつける圧勝だった。

 夕食時に日本の特派員たちが集まってお祝いしてくれたのだが、その時のエピソードもまた時代を反映して微笑ましい。当時のサウスカロライナ州では、日曜日に酒を売るのが禁止されていたため、隣の州からワインを買ってきて、コーヒーカップで乾杯したのだという。

 

■樋口久子(ひぐち・ひさこ、1945年~)

埼玉県川越市出身。高校1年まで陸上部ハードルの選手だったが、姉が務めていた砧ゴルフ場でゴルフと出会い、卒業後、プロ界の大御所・中村寅吉門下生に。67年の第1回女子プロテストに合格。翌年、22歳で日本女子プロを制し、以来国内通算69勝。独特の「スエー打法」で(米国ではマグネティックスウィング)、世界の試合に参戦。77年には、念願のメジャー・全米女子プロに優勝する。現在に至るまで、日本ではただ一人のメジャータイトリスト。海外3勝、国内と合わせて72勝の金字塔を打ち立てた。96年に日本女子プロゴルフ協会会長に就任。2003年には、アジア人初の世界ゴルフ殿堂入りを果たす。

 

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