名手・達人の言葉

2009.02.10

ホーガンさんがただ一言、グッド!といってくれました。──陳清波 陳清波が、米国のマスターズに招待されていた頃の話だ。何年かは忘れたというが、練習日、あのベン・ホーガンとラウンドする機会に恵まれたという。寡黙なホーガンは、例によってラウンド中はほとんど喋らなかったそうだ。

 あるホール、ピンが左に切ってあるグリーンにきた。陳が打った球はピンの右側からドローしてホールにピタリ。これを見たホーガンは「グッド!」とただ一言発した。

 ドローボールを最上の球筋とみなす稀代のショットメーカー・ホーガンが、和製ホーガンと謳われた陳のドローボールを認めた一瞬であったろう。陳はその一言に深い感銘を受けたという。

 というのも、陳がドローボールに憧れを抱いたのは、1956年にイギリスで開催されたカナダカップで、ベン・ホーガンを見てからなのである。

 陳は台湾の名門・淡水から日本にやってきて、ダウンブロー打法でドローボールを自家薬籠中のものとし、「陳時代」を築いた。その華麗なスウィングは日本のプロ、アマを問わず憧れを持たれ、絶賛された。

 あのアマ界の貴公子と呼ばれた中部銀次郎も大学受験時の浪人中、一面識もない陳に自分の分解スウィング写真4枚を送り、教えを乞うた。その結果、それまで右足踵が早く上がる癖を矯正し、ベタ足打法にしてドローボールを駆使し、日本アマ6回制覇という偉業を成し遂げる要因となっている。

 ホーガンから陳、そして中部と、パーシモンヘッドでのドローボール継承の歴史をそこに見ることができる。

 

■陳清波(ちん・せいは)
/帰化名 清水泰行(しみず・やすゆき 1931~)
台湾生まれ。名門・淡水GCで17歳からゴルフを始め、1951年プロ転向。59年の日本オープンで初優勝。翌年は2年連続優勝のスコアだったが、スコア誤記により失格の憂き目に合う。レギュラーツアー12勝、シニアツアー4勝、グランドシニア12勝。海外では63年から6年連続でマスターズ出場ほか、全英オープン2回、ワールドカップ11回出場など数々の戦績を残している。比類なきショットメーカーとして知られ、切れ味鋭いダウンブロー打法は一世を風靡した。その技術理論の確かさに、現役ツアープロたちで教えを乞う人が今も引きも切らない。

 

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