名手・達人の言葉

2008.02.13

格好なんて気にするない。格好気にし始めたら、上達はそこで止まっちまうよ。 中村寅吉

 寅さんが2月11日、亡くなった。

 今でも表題の「言葉」が筆者の耳に甦ってくる。太鼓腹の下でベルトをしめ、胸を張ってノッシノッシと歩き、ザックバラン、ベランメー調でまくしたてる寅さんは、筆者が小社に入社した頃はまだまだ健在であった。

 158cmの小柄な身体ながら、その言動といい、実績といい、圧倒的存在感を示していた。人も多く集まり、自分の名を冠したトーナメント(「日経カップ―中村寅吉メモリアル」)は、日本で初めてではなかったか。

 エピソードも山のように多く、「2段モーション・スウィング」も小柄な身体で飛ばす独自な工夫でつくりあげた様々なエピソードに彩られている。

 アイアンでクラブハウスの屋根を越す練習で度胸をつける話。

「ハウスのガラスの値段は給料の倍。そうやって度胸をつけたんだよ」

 真っ暗闇のグリーンでパット。

「左耳でカップインの音を聞くんだから、本番でもヘッドアップなんかしねーよ」

 表題の「言葉」は弟子、樋口久子のスェー打法、安田春雄の「肩ではなく顔を回す打法」へと受け継がれた。

「自信なき正統は、自信ある我流に負ける」という。寅さんは65歳の時、日本初の公式戦エージシュートをなしとげているのでも、そのことが見事に実証されている。

 享年92歳。合掌。

 
■中村 寅吉
(なかむら・とらきち 1915~2008)
横浜市で生まれ、家が貧かった寅吉少年は、小学校を卒業し、保土ヶ谷CCにキャディとして働く。見よう見真似でゴルフを覚え、やがて先輩をも追い抜く上達をみせる。158cmの小柄な身体で飛ばすための「2段モーション・スイング」は血のにじむような練習で身につけた。プロ入りし、マッチプレー全盛の頃はさしたる成績は残していないが、ストロークプレーになって無類の強さを発揮しはじめる。56年に始まった関東オープンでは4年連続、2年置いて3連勝。日本オープン3勝、日本プロ4勝など勝利多数。81年の関東プロシニアでは公式戦では日本で初めてエージシュートも達成。なかでも極めつけは57年、霞ヶ関で行われた当時の「ゴルフのオリンピック」カナダカップに小野光一と組んで優勝したことだろう。中村は個人優勝も果たして戦後のゴルフブームに火をつけた。女子プロ界の女王となる樋口久子を育てたことでも有名。その後も日本プロゴルフ協会会長なども歴任。プロ界の指導的役割も果たした。

 

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