名手・達人の言葉

2007.05.30

ルールとマナーを勉強したまえ。スコアを口にするのは、それからだ。――― サー・マイケル・ボナラック

ボナラック卿はゴルフの総本山R&Aの前キャプテン。
鈴木康之著『ピーターたちのゴルフマナー』(ゴルフダイジェスト社刊)に
次のような推薦コメントを寄せている。

「ゴルフの歴史を守りながら、ゴルフ本来の姿を楽しむためには、
ゴルファー一人一人が自覚をもち、
マナーと礼節をわきまえながらプレーすることが大切です」

このボナラック卿、ただの辛口コメンテーターではない。

1934年生まれ。12歳でゴルフを始め、
1961年から全英アマに5回優勝。
冷静なプレーぶりで知られ、とりわけ68年からの3連覇は
アマゴルフ史に燦然と輝く大偉業。
ゴルファーとしても超一流の達人であった。

冒頭の痛烈な苦言は、
甥が所属しているハンスベリック校のゴルフ部を訪問した際の語録を
のちに「スポーツ・フィロソフィ」誌が掲載したもの。こうも言っている。

「なろうと思って、私は全英アマのチャンピオンになった。
大事なのは目標だ。みなさんにも、もっと視線を上げてもらいたい。
決して遅くはない、なにかになろうと決心し、目標を持って欲しいのだ」

ボナラック卿の高潔真摯な姿勢は、
ゴルフを始めたての頃に父親からうけた手厳しい叱責に由来する。
遊び半分の練習態度を指摘され、悔い改めると、
こう諭されたのだ。

「なろうと思えば、なれる、そう思い込むことが大事なのだ。
ひとつだけ覚えておきなさい。まだ見ぬお前の対戦相手は、きょうも練習しているよ」

この挿話は、2巻同時発売となった
『夏坂健セレクション』(ゴルフダイジェスト社刊)
の第2巻「スコアは天使の匙加減」に収められている。

夏坂健といえば、こうした数多の名言・名場面の蒐集家として知られる。

解説文を寄せた読書の名手、児玉清氏も
「よくもこれだけ丹念に事実を拾い集めては、教訓と示唆に富み、ときには微笑みや爆笑を誘う、
しかも品格のある名エッセイに仕上げられるものだと驚嘆し感動しきり……」
と賛辞を惜しまない。

そのプロフィールにふれておこう。

1934年(昭和9)神奈川県横浜市生まれ。翻訳家・作家。
週刊ゴルフダイジェスト1990年3月13日号より「アームチェア・ゴルファーズ」の連載を開始。
シングルであった自らのゴルファー体験と、内外の厖大な資料をもとに紡ぎ出されるエッセイは
機智とユーモアに溢れ≪読むゴルフの楽しみ≫という新境地を切り拓いた。
主著は『ゴルフの虫がまた騒ぐ』『ゴルファーを笑え』『地球ゴルフ倶楽部』
『フォアー!』『微笑ゴルフ』『ゴルフへの恋文』など。
2000年1月19日、惜しまれつつなくなった。
2007年5月、ゴルフダイジェスト社より『夏坂健セレクション』を刊行開始。

「僕にお墓はいらない。なぜって、僕の書いた原稿が、本が素晴らしい記念碑、つまりお墓だから」
が生前の夏坂健の口癖だったという。

しかし、読書好きの諸兄姉ならすでにお気づきだろう。
ここ5~6年、いつしか本屋さんの店頭から≪夏坂健の墓標≫が消えてしまったことを。

それが装いも新たに『夏坂健セレクション』として復刊した。
心寂しい思いをし、アンコールを熱望するファンの声なき声に応えたといえる。

スコアばかりにこだわって、ショットの技術だけに汲々としているゴルファーを
「下品」と嘆じ、断じた夏坂健のスピリットがボナラック卿の直言といかに共鳴しているか、
感じ取っていただきたい。

 

ゴルフ名言集へ ≫≪ ゴルフコラムTOPへ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

運営会社 | プライバシーポリシー