僕のマグノリアレーン
2013.12.13
【第146回】
ボールマーク、確認していますか?
マスターズを目指してゴルフに夢中な日々を送るジャーナリスト・上杉隆とレッスン担当のプロゴルファー・中井学。今週はグリーン上で中井プロが探偵に変身し、トリックを見破ります!?
グリーン上で事件が発生!
中井プロの推理は……。
中井 バーディパットが大オーバー。ありますよねえ……。うーん、「あわよくばバーディ」が、一瞬にして「へたするとダボ」に変わるこの瞬間。いやー、おそろしい。
上杉 ちょっと! 冷静に感想を述べていないで、返しのパーパットをなんとかねじこむコツを教えてください。
中井 残念ながら、こればっかりはファーストパットのラインを参考に打ちましょうとしかいえません。それよりも、ファーストパットでなぜ大オーバーしたかを考えるべきですね。
上杉 原因はシンプルですよ。上り傾斜だと思ったら、それは目の錯覚で、実際は下り傾斜だった。残念ですが、それに尽きます。
中井 ですよね。ゴルフ場にはゴルファーの感覚をだます仕掛けが山ほどありますし、それがコース設計家の腕の見せ所でもあります。もちろん、その“仕掛け”を見破る方法もあるのですが、今週はもっとシンプルに錯覚に陥らない方法をお教えしましょう。
上杉 あるんですか、そんな便利な方法が。
中井 ありますとも。名付けて「探偵はグリーンにいる」作戦。
上杉 なんか、映画のタイトルのパクりみたいなネーミングですね。
中井 おそらく、気のせいです。探偵がわずかな痕跡から犯行の手口を見破るように、我々ゴルファーも、グリーン上の傾斜を見破るための痕跡を探すことが大切なんです。
上杉 なんですか、痕跡って。
中井 ふふふ、論より証拠。いま、上杉さんの目に錯覚を起こさせた犯人はお前だっ!(と、グリーン上を指さす)
上杉 「お前だっ」って、さっき私が直したボールマークじゃないですか。
中井 グリーン上のボールマークとボールが止まった位置を結ぶ線。そこには犯行のトリック、じゃなかったグリーンの傾斜を見破るヒントがあふれているんです。
上杉 なんか、今週ノリノリですね。聞いているんで、続けてください。
ボールマークはボールの
ダイイングメッセージだ!
中井 セカンドショットを、上杉さんは5番アイアンで打ちました。それがナイスショットだったからピン奥3メートルのバーディチャンスに付けられたわけですが、5番アイアンで打ったにしては、ボールマークからボールが止まった位置が近すぎる。つまり――。
上杉 私のアイアンショットの切れ味があまりにも良すぎる――そういうことだったのかっ。
中井 全然違います。つまり、意外と受けているグリーンだってことですよ。ボールの位置からカップ方向を見ると、たしかに上っているように錯覚させるつくり。しかし、ボールマークとボールを結んだ線は、それが錯覚であることを雄弁に物語っている。
上杉 まさに、ボールが力を失い、止まる間際にグリーンの正体を暴いてくれた――ボールの“ダイイング・メッセージ”というわけですね?
中井 おっ、うまいこと言いますね。
上杉 えへへ。
中井 ともあれ、アマチュアゴルファーはボールマークの位置を気にしなさすぎです。テレビの中継を観ると、グリーンにあがってきたプロが必ずボールマークを修理しますよね? あれは、マナー的な観点からも大事なことですが、そこから得られる情報に価値があることをみんな知っているから欠かさずにやっているんです。
上杉 なるほどなー、そうだったのか。
中井 もっといえば、僕はティショットを打ったあと、セカンド地点に向かう途中でもボールマークを探しますよ。カラダが感じられないような微妙な傾斜でも、ボールはその転がりで教えてくれますから。
上杉 いいことを聞きましたよ! よ~し、次のホールでさっそくティショットのボールマークを探してみます。
中井 いいですね! 普段からそのように心がけておくことが、なにより大切。そういう小さいことの積み重ねが上達に、ひいてはマスターズにつながっていくはずですよ!
<次のホールのティショット終了>
上杉 おかしいですね、これは。うーん、ボールマークが見つからないぞ。おかしいなあ。
中井 ……思いっきり曲げて、林の中に突っ込んでましたからね。上杉さんは“ボールマーク”じゃなくてご自分の“ボール”自体を探したほうがいいんじゃないですかね……。
みなさん、ボールマークを確認していますか? プロはこんなところからも傾斜を読むヒントを得ているんです。是非、次回のラウンドからチェックしてみましょう! ということで来週も、目指せ、マスターズ!
「お尻」で打てば、真っすぐ飛びます。