僕のマグノリアレーン

2013.03.21

【第109回】
8ミリの大問題

僕のマグノリアレーン

マスターズ出場という見果てぬ夢に向け、その手前の手前の手前の手前くらいの目標に挑戦中の元ジャーナリスト・上杉隆。今週は、スウィングの自覚できないクセのお話です。

第1回から読む   バックナンバー

都アマ予選を通過した上杉に
中井から重大な指摘が……。

中井 今週は、私から重大な発表があります。

上杉 なんでしょう。夏の参議院議員選挙に立候補でもするのですか?

中井 そうそう、日本ゴルフ党として……って違います。もうちょっと細かい話、具体的にいえば上杉さんのスウィングに関することです。

上杉 この連載の主要なテーマである私のスウィングを「細かいこと」とは、言ってくれますね、中井プロ。

中井 いや、そういう意味じゃなくて……ってなんで私が言い訳してるんだろう。

上杉 ははははは。

中井 はははははじゃないですよ、ホントにもう……ともかく、今のままのスウィングでは、マスターズ出場はおろか、日本アマ出場はおろか、東京都アマでのトップテン入りすらも到底おぼつかないでしょう。

上杉 なっ……ついに2年間続けた自らのレッスンの誤りを認めたということですか?

中井 なにっ、そう言われると……! とか言い出すと話がまったく前に進まないのでやめます。2年間のレッスンを経て、上杉さんのスウィングの完成度はかなり高まっています。バックスウィングの伸び上がりはなくなったし、ダウンでの振り遅れも、フォローで左ひじが抜ける動きも、見事になくなりました。

上杉 ふふふ、その通りです。なにしろ東京都アマ予選を楽々通過した男ですからね、私は。

中井 1打差での予選通過を楽々と表現してよいかどうかの議論はともかく、スウィング自体は完成度が大分高まった。ただ、ひとつだけまだ極めて重大なクセが残っているんです。

上杉 本当ですか? まったく自覚症状がないなあ。

中井 定規をあてないと分からないような微細な部分ですからね。ちょっとアドレスしてもらえますか。

上杉 はい。

中井 ターゲットに対してスクェアな、いいアドレスです。では、実際に1球打ってみてください。

上杉 おやすいご用です(と、始動……しようとした瞬間!)

中井 スト―――――ップ! そこです。テークバックを開始する直前に、上杉さんの“最後の悪癖”が顔を出すんです。

上杉 ええっ、どういうことでしょう。

 

フェースの向きによって
スウィング軌道は無意識に変わる!

109アドレス時にはスクェアなフェース(左)が、始動時には僅かにクローズ(右)になる上杉
中井 アドレスの基本は、ターゲットに対してスクェアに構えること。であるがゆえに、フェース面は打ち出したいラインに対して垂直に構えるのが基本です。上杉さんも、アドレス段階ではきっちりラインに対して垂直に構えられています。しかし、始動を始める瞬間、8~9ミリ程度の小さな動きですが、フェースをかぶせる動きが入るんです。

上杉 細かい男ですね~。そんな数ミリくらいどうっていうことないでしょう。

中井 その数ミリが大問題なんですよ。250ヤード先では数十ヤードの違いとなります。

上杉 中井プロ、今、すぐに直しましょう。知っていますか? 神は細部に宿るという言葉を――。

中井 相変わらずの素晴らしい変わり身の早さ。ただ、直す前にもう少しこの問題の重要性を説明しておきましょう。フェースがかぶった状態でスウィングをはじめてしまうと、まずテークバックの軌道が狂います。これは近々みっちり解説しますが、テークバックの軌道はアドレス時のフェースの向きに大きく影響されるんです。さらに、もっと重要なのは、人間の体が想像をはるかに超えてセンシティブだという事実です。

上杉 私も人一倍センシティブな心の持ち主と言われていますからね、わかります。

中井 え~と、心ではなく体のほうです。スウィング中、フェースがかぶっていると、たとえプロゴルファーでなくとも、無意識のうちに体はそれを認識するんです。だから、インパクトではなるべく手を返さないように、ボールにぶつけるようなスウィングをする。結果、飛ばない、ダフる、引っかける、逆にプッシュスライスするといったミスを生む。始動の瞬間のほんの1センチ弱が、スウィング全体に悪影響を及ぼしてしまうです。

上杉 なんか、「バタフライエフェクト」みたいな話ですね。

中井 日本名、「風が吹けば桶屋が儲かる」ですね。その通りです。「5ミリかぶせりゃチーピン連発」っていう感じですかね。

上杉 うーん、恐ろしい。で、どうやって直せばいいんですか? 解決策を教えてください。

中井 ――ないんです。

上杉 ん? なんですと?

中井 基本的にはないんです、解決策。たとえていうならば、考え事をしているときに指先でペンをくるくる回すクセを持つ人に対して、どうやったらそれを止めさせることができるのか、そういう問題に近いんです。プロゴルファーではなく、むしろメンタルの専門家の領域なんですよ。

上杉 ダメじゃないですか、それじゃ。私のマスターズの、日本アマの、国体の夢が崩れ落ちてしまうじゃないですかっ。

中井 ただ、一般論としては言えることがあります。それは、「自分にはそういうクセがある」と認識すること。そして、意地でもフェースをかぶせず、構えたままの状態でテークバックするように強く意識することです。覚悟と時間が必要です、これを直すには。はっきり言って、現状ではここに手を付けないほうがスコアメークは簡単。しかし、さらに上を目指すには避けて通れない問題です。

上杉 ……やりましょう。国体、いや、マスターズのためならば。

中井 最後になりますが、読者の方の中にも、デジカメやスマホで撮影した自分のスウィングを見て、アドレスもいいしスウィングの軌道もいいのになぜか球が曲がり倒すという人がいるかと思います。そういう方は、始動時のフェース向きを信頼できるゴルフ仲間に確認してもらってください。多いんですよ、上杉さんとまったく同じクセを持つ人。とくに、初心者の頃に「フェースをかぶせて構えればスライスしないよ」と教わった人は要注意です。

上杉 はっはっは、諸君、気を付けてくれたまえ。

中井 上杉さんも同じ問題を抱えってるっつーの!

 
これは本当に小さな動き! よくぞまあこんな細かいところに気が付くもんです。さすがプロゴルファーですね。とはいえアドレス時のフェースかぶせは小さな大問題。読者のみなさんの中にも、同じクセを持つ人が必ずいるはずですよ~。ご注意を! というわけで来週も、目指せ、マスターズ!



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

運営会社 | プライバシーポリシー