僕のマグノリアレーン

2012.09.13

【第83回】
「慣れないショット」を身に付ける

僕のマグノリアレーン

「マスターズを目指す!」と宣言した元ジャーナリスト・上杉隆とレッスン担当中井学。アラフォーふたりが夢を見る、大人のためのゴルフレッスンドキュメント「僕マグ」。今週はなにやら中井学がヘンテコな提案をしているようですが……。

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いつものように2人でラウンド。
しかし中井から上杉へ次々と"指令"が……

※とあるホールのセカンド地点

上杉 さ~て、グリーンまで残り100ヤード。50度のウェッジでピッタリの距離ですね。

中井 そうですね。でも、ここはひとつ、9番アイアンのハーフショットで寄せてみませんか?

上杉 どうしてですか。100ヤードのショットは私の得意距離のひとつ。わざわざ9番アイアンを使う理由がありません。
中井 まあまあ、そう言わずに。

上杉 仕方がないな~。あっ、オーバーした。ほら~、だからウェッジで打ったほうがよかったのに……。
※とあるホールのティグランド

上杉 フェアウェイ左にバンカーがありますが、180ヤードのキャリーで越えます。ここはドライバーで問題ないですね。

中井 ええ、上杉さんの飛距離なら楽々超えるでしょう。でも、ここはひとつ、5番アイアンでバンカー手前にレイアップしてみませんか?

上杉 一体全体なんでですか。そうしたら、セカンドが200ヤード以上残ります。左右にOBがあるわけでもないし、ここはドライバーでしょう、どう考えても。

中井 まあまあ、そう言わずに。

上杉 仕方がないな~。ティショットさえ成功すれば、楽々パーがとれるホールなのに……。
※とあるホールのガードバンカー

上杉 セカンドを引っかけてバンカーに入れてしまいましたが、アゴは低いし、楽勝ですね、これは。サンドウェッジを開いて、と。

中井 上杉さん、確実に出せるとは思いますが、たまにはどうです? パターを使ってみるっていうのは。

上杉 ちょっと! さっきからなんなんですか。確実に超えるバンカーを手前に刻めっていったり、100ヤードから9番で打てっていったり。挙句の果てにはバンカー内からパターを使えだなんて。私は尾崎将司プロとメジャーの舞台で優勝を争っている合田洋プロではありませんよ。

中井 ええ、それは重々承知です。

 

攻め方の引き出しが増えれば、
いざというときに重宝する!

083残り100ヤードを9番のハーフショットで狙わせる中井の真意とは?

上杉 はは~ん、分かりましたよ。最近私がめきめきとスコアを伸ばし、このままでは私にスコアで負ける危険性があることを危惧し、あえて意味のないショットをさせてスコアを崩させようという魂胆ですね?

中井 んなわけないじゃないスか。これは、万が一のときのための“引き出し作り”です。

上杉 引き出し作り? 私は机ではありません。

中井 知ってます。これは読者のみなさんにも知っておいていただきたいのですが、当たり前のことを当たり前に思うことのできなくなる状況が、競技の世界では必ず訪れるんですよ。

上杉 たとえばどういう状況ですか?

中井 さっき上杉さんがおっしゃった、合田プロがまさにそうです。1994年の日本プロ、ジャンボ尾崎さんと最終組で回っていた合田プロは、18番ホールのセカンドをバンカーに入れ、そこからパターで寄せて優勝を手繰り寄せました。合田プロの腕前なら、サンドで打っても楽々寄せられたはずです。ただし、練習ラウンドだったら。

上杉 うーん、なるほど。そのときのために、普段と違う攻め方を試す必要があるってことですか。

中井 そうです。前にも言いましたが、普段のラウンドから「つねに練ラン」という意識を持ってプレーしてほしいんです。それが引き出しの増加につながって、プレッシャー下で自分を助けてくれますから。

上杉 そういえば、今年の全英オープンを取材に行った際、藤本佳則プロがグリーン奥から転がすアプローチをひたすら練習していました。他のプロはグリーン手前からのピッチ&ランばかり練習していたのに……。

中井 彼は勘のいい選手ですからね。全英の舞台では、自分の思い描くようにはプレーさせてもらえない。そのことを本能的に感知していたのでしょう。プレーの中で披露することは少ないですが、たとえばタイガー・ウッズもフェアウェイウッドでのアプローチを練習ラウンドで試す姿が見られます。

上杉 全英とは違うし、私の目指すマスターズとも違いますが、この夏に出場した関東ミッドパブ予選で、普段だったら絶対にありえないミスをして予選落ちした人がいましたね、そういえば。

中井 それ、上杉さんです。でも、その気持ちはよく分かりますよ。プレッシャーがかかると、普段は見えないOB杭が見えてくる。よっぽどのミスをしない限り入らない池がやけに気になってくる……。こればっかりは、プロだって100が切れないアマチュアだって、気持ち的には同じです。そんなとき、“違う選択肢”を持っていたいんです。

上杉 それが100ヤードから9番で寄せる、とかそういうことですか。

中井 そういうことです。普段ならウェッジで気持ち良く振ってなんでもなく乗せられる距離。しかし、プレッシャー下では、引っかかるのが怖くなる。手前のバンカーが大きく見えてくる。そうなると、「完璧なスウィングをしなくちゃ」という、新たなプレッシャーが加わってしまう。その結果、インパクトゆるんだり、逆にパンチが入ったりしてしまうんです。

上杉 しかし、そういうときに付け焼刃のショットをして、果たして成功するものなんですかね。

中井 成功する、しないは時の運です。でも、普段から引き出しを増やす努力をしておくことが大事なんです。ナイスショットの感触はゴルフの最大の喜びのひとつですが、あえて「ナイスショットする必要がないショット」も覚えておくと、いざというときにラクなんですよ、ホント。なるべく自分にプレッシャーをかけないゴルフ、勝負をしないゴルフ、「後の先」をとるようなゴルフを、普段から心がけたいですよね。

上杉 だからといって、普段のゴルフでバンカーからパターで打とうとは思いませんけどね……。

 
慣れないショットも技のうち! すべてのラウンドは練習ラウンドである! この気持ちをもって、週末のゴルフに行かれてはどうでしょうか。きっと、違うゴルフの世界が広がるはず! というわけで来週も、目指せ、マスターズ!



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