僕のマグノリアレーン

2012.07.26

【第77回】
「ナチュラルボーン・スウィンガー」

僕のマグノリアレーン

マスターズを目指す! そう宣言した元ジャーナリスト・上杉隆とそれをサポートするプロゴルファー・中井学の二人三脚ゴルフレッスンドキュメント、「僕マグ」。それにしても、盛り上がりましたね、全英オープン。

GDとニコ生のコラボ番組、
第2弾も大盛況だったが……。

上杉 いや~、盛り上がりましたね、「上杉隆の勝手に全英オープン実況中継」。

中井 見事な自画自賛っぷりですね。ゴルフダイジェストとニコニコ生放送が組んだインターネット番組。僕も観てました、自宅で。

上杉 最終的に、視聴者数が6万人ですからね。いやー、これもひとえに私の実力です。

中井 番組中、「出演者の中で誰が一番仕事をしているか?」というアンケートで、私の記憶が確かならば、進行役の唐橋ユミさんが「30%」、解説の田村尚之さんが「18%」という数字を叩き出すなか、上杉さんは約「8%」だったような気がするのですが。主役なのに……。

上杉 気のせいですね。万が一、気のせいでないとしたら、まぁ、ニコニコ生放送の視聴者には、私の解説はハイレベル過ぎた、ということでしょう。

中井 なんという上から目線……。いずれにしても、試合展開も面白かったし、盛り上がってよかったですね。番組終了後のアンケートでも、98%超の人が「おもしろかった」と回答していました。

上杉 ニコ生の運営スタッフも、「極めて異例の数字だ」と言っていました。うーん、放送が大成功だったのはいいんですが、アダム・スコットが気の毒でなりませんでしたね。直前に私も「ミッドパブ」関東予選で予選落ちを喫していますから、アダムの気持ちがよくわかります。

中井 アダムの気持ちと上杉さんの気持ちは相当かけ離れている気もしますが、気の毒だったのは事実です。しかし、そうはいっても上がり4ホール連続ボギーを叩いたアダムは、想定外の不運に見舞われたわけではありません。厳しいようですが、すべて自分のミスから崩れているわけですから、エルスこそがあの試合では勝者に相応しかったのです。

上杉 たしかに、あの4ホールはオーガスタの11、12、13番、いわゆる「アーメンコーナー」ならぬ、「アーメンスクェア」とでも呼ぶべき難ホールが続いています。それにしても、あれだけ完璧なゴルフをしていたアダムが、あそこまで崩れるとは……。18番のパーパットを外し、優勝を逃した瞬間は、スタジオにいた誰ひとりとして、言葉を発することができませんでした。ジャン・バンデベルデが最終ホールでまさかのトリを叩いてプレーオフで散った、「カーヌスティの悲劇」にも匹敵する衝撃でしたよ。

 

アダム・スコットの敗因は、
作り込んだスウィングにあった!

077中井 あの4ホール、セカンドショットをすべて左にミスしているんですよね。曲げたくないという気持ちが出る中、それでも置きにいくスウィングをするには残りの距離があり過ぎる。曲げたくないけど、振り切らなければ届かない。飛距離と方向性を、極めて高いレベルの両立させなければならない、ある意味ゴルファーにとっての“極限状況”が、あの4ホールでした。

上杉 うーん、ミッドパブ予選の3番ホール、まさにそれを両立させようとした結果、ティショットを木に当てて池に落とした私にとっても、他人事ではありませんね。

中井 またずいぶん早く極限状況が訪れたものですね、それは。上杉さんは3ホール目、アダムは68ホール目にして、己の真価が問われる場面に遭遇したわけです。アダムが敗北した理由、それは「作り込んだスウィング」の脆さだといえます。

上杉 ん、どういうことでしょう。

中井 彼のコーチはブッチ・ハーモン。言わずと知れた、タイガー・ウッズの元コーチです。アダムはブッチに「ビー・ライク・タイガー」、すなわち「タイガーのような」スウィングにしてほしいと依頼をしたといいます。結果、彼は“ホワイトタイガー”の異名を誇るようになり、世界中を見渡してもこれほど美しいスウィングはないというほどのスウィングを手に入れました。

上杉 えへへ、照れますね。

中井 いったいなぜ上杉さんが照れるのですか。ともかく、ピクチャーパーフェクトなスウィングを手にし、それに見合った飛んで曲がらない球を手に入れた。しかし、68ホールまでは完璧に機能したそのスウィングが、ナチュラルボーンではないがゆえに、残り4ホール、もっともプレッシャーがかかる場面で崩壊してしまった。

上杉 あ、そういえば解説の田村さんも同じことを言っていましたよ。「作り込んだスウィングはこういう場面で弱い。「我が出てきた、我が出てきた」って。まるでアダム・ガガみたいな言いっぷりでした。さては中井プロ、田村さんのコメントを盗んだなっ!

中井 ちがうわい! ある程度のレベルのゴルファーにとって、それは共通認識なんですよ。ともかく、ナチュラルボーンでないがゆえに崩れたアダムに対して、72ホール目の最後のストロークまで、終始自分のリズム、自分のスウィング、自分のテンポでプレーしきった、“究極のナチュラルボーンスウィンガー”とでも呼ぶべき選手がひとりいました。誰だかわかりますか?

上杉 セベ・バレステロスですね。

中井 ある意味正解。セベもまさにそうです。ちなみに、今回の第141回全英オープンでいえば、アーニー・エルスがそうでした。

上杉 うーん、たしかに。終始、もっとも淡々とプレーしているように見えたのがエルスでした。実は、現地ではエルスはかなり注目されていたんですよね。日本のメディアはほぼスルーでしたが……。

中井 エルスは「自分のリズムを崩さなかった」のではありません、「リズムが崩れないスウィングをしていた」というのが正解。日本のアマチュアゴルファーは努力家が極めて多く、スウィング改造などを頻繁におこないます。でも、大事なことですが、作り込んだスウィングはナチュラルなスウィングよりも、プレッシャーに弱いのです。

上杉 ハンディ+6の最強社会人アマチュア・田村尚之さんの「がんばらないから、うまくなった」というのは、一面の真実をついているというわけですね。

中井 ええ。上杉さんも、フィーリングを重視するプレーヤー。正直、スウィングを作り込むよりは、動きのスピードや再現性を高めるほうが優先です。これは、意外と多くのプレーヤーに言えることなんですよ。

上杉 なるほど! じゃあ、私も「がんばらない」ことにします。

中井 上杉さんは「がんばらなすぎ」ですけどね……。

 

というわけで、読者のみなさんも、スウィング改造に血道をあげるより、地道に自分のスウィングを磨いたほうがいいかも、です。リズムとタイミングが大事です! というわけで来週も、目指せ、マスターズ!



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