僕のマグノリアレーン

2012.06.07

【第70回】
「素振り」、第三の役割

僕のマグノリアレーン

「マスターズを目指す!」そう宣言した元ジャーナリスト・上杉隆と、それをサポートするプロゴルファー・中井学の二人三脚レッスンドキュメント、「僕マグ」。上杉がハーフ「35」の好スコアを出したことにより、にわかにパブリックミッドアマチュア選手権への挑戦が決定したが――!?

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ハーフアンダーを出した上杉は
自信満々にラウンドをスタート……。

上杉 さて、中井プロ。ミッドパブ予選まで時間がありませんから、今日もラウンドしましょう。

中井 いやー、気合が入ってますね、上杉さん。さっそくティショットをお願いします。

上杉 了解です。なにしろ前回のラウンドは「35・40」の「75」。中井プロ、ハンディが欲しかったら、早めに言ってください。

中井 そのお気遣いは無用です。

上杉 そう? では、打ちます。250ヤード先のフェアウェイ目がけて、とりゃーっ。

中井 ……あれ? 私の見間違いでなければ、力弱い球が左のバンカーを目がけて申し訳なさそうに落ちていきました。200ヤードも飛んでいませんが……。

上杉 ははははは、こんなこともあります。弘法にも筆の誤りといったところです。
――セカンド地点(つま先上がりの斜面)
上杉 ぐわっ、ダフったっ。

中井 あちゃー……。

上杉 まあまあ、これもまたゴルフ。なにしろ私は前回ハーフアンダーパーを叩きだした男です。猿だって木から落ちることがあります。
――左足下がりのフェアウェイからのサードショット
上杉 わーっ、トップだっ。中井プロ! 奥ってOBありますか?

中井 うーん、一応もう1球打っておきますか。しかしまあ、先週の面影は完全に消えましたね……。

上杉 河童も川に溺れることが……などと悠長なことを言ってられませんね、これは。よし、ここから本気を出します(と、打つ)。ぎゃーっ!
――3ホール経過
上杉 (クラブを杖代わりに、憔悴し切った様子で)……中井プロ、もうダメ、もう降参です。早くも先週のオーバー数を超える大たたき。もしこれがミッドパブ予選当日だったら、とんだ赤っ恥をかいていたところです。助けて~、中井プロ~。

中井 え~、まず、私は「ドラえもん」ではありません。まったくもう、予選当日は私はコースに立ち入れませんから、不調の場合もセルフチェックできなくてはいけないんですよ、ホントは。

上杉 では、そのセルフチェックのやり方を教えてください。

中井 言われてみればその通り。プロのゴルフとアマチュアのゴルフには数多くの違いがありますが、そのひとつに「好不調の波の大きさ」が挙げられます。プロの場合、自分で自分をチェックする術を持っていますから、好不調の波が少ない。逆に、セルフチェックの術を持たないアマチュアは、好不調の波が極めて大きい。70台を出した翌週に100を打つなんていう、信じられないことも起こります。

上杉 まさに今、私がそれを実感しているところです。でも、セルフチェックってなかなかできないですよ。自分で自分の姿は見られませんからね。

 

調子が悪いときは、素振りで
ボール位置をチェック!

070ボール位置が右足寄りになるクセがある上杉。体調によってもボールの位置はズレることがあり、それが不調の原因となる

中井 誰でもできるセルフチェックがありますよ。それは、「素振り」です。

上杉 素振りなら私も毎ショット繰り返していますが……。

中井 上杉さんの素振りは、ただ体をほぐしているだけ。どれだけ好意的に見ても、スウィングのリハーサルの域を出ていません。しかし、本当は、素振りをしたらその感覚をセットアップにフィードバックしなければならないんです。

上杉 また難しいことを言いだしましたね。

中井 どんだけ調子が悪いって言っても、何十年もゴルフをやってれば、日によってスウィングが大きく変わることなんてありえないんですよ。しかし、恐ろしいもので、ボール位置はその日の体調その他によって大きく変わるものなんです。上杉さんの場合、油断するとすぐボールを右足寄りに置きたがるクセがあります。

上杉 えっ。そんな意識全然なかったんですけど。最近は論調が右に寄っているとは言われますが…。

中井 そこではありません。ゴルフの話です。意識してなければ気づけないんです、ボール位置のズレって。おそらく、お仕事の疲れがたまっているんでしょう、上杉さんは1番ティからボールを右足寄りに置いていました。その結果、バックスウィングが浅くなる、ダウンで下からアオるといったことが起こる。それでミスをすると「スウィングが悪い」と思い込み、あれこれ細かい修正を加えはじめる。結果、ドツボにはまるわけです。

上杉 うーん、恐ろしい。たしかに、今日はほとんど寝ていませんが――。

中井 睡眠不足がボール位置に出たわけですね。だからこそ、素振りが重要なんです。素振りの意義には、①打ちたい球筋をイメージし、スウィングをリハーサルする、②体をほぐし、緊張をとる、といったこともありますが、③ボール位置を確認する、これを忘れちゃいけないんです。

上杉 素振りでボール位置を確認するって、どういうことですか?

中井 言い換えれば、素振りとは「最下点探し」なんです。スウィングの最下点は、エネルギーが最大になり、本来であればフェースもスクェアに戻る位置。そこを、素振りで探るんです。

上杉 よく、「アイアンが芝をこする位置にボールを置く」なんて言うやつ?

中井 正確に言うと、「アイアンが芝をこする位置の『手前に』ボールを置く」ですね。最下点の手前に置いたボールに対し、ボディの動きのみでヘッドを動かした結果、ハンドファーストインパクトが導かれるわけですから。あと、もうひとつ重要なのは、傾斜地から打つ場合のボール位置です。

上杉 あ。斜面から打つときって、そんなにボール位置を気にしないかも。

中井 でしょ? プロの場合、傾斜地で何度も素振りするのは、ボール位置の確認を綿密に行っているからなんです。多くの人は、斜面ではボール位置を右足寄りにします。右足寄りに置いたボールに対して構えると、本来フェースは開くはず。なのに、手先でフェースをかぶせ、一見スクェアに見えるようにセットアップしている。これは、球に当てやすいセットアップではありますが、真っすぐ飛ばせるセットアップとは言えません。

上杉 で、どうすればいいんですか。

中井 まずは素振りでスウィングの円の「最下点」を探す。次に、その円がターゲットに対しスクェアに向いているかを確認する。最下点の位置でフェースがターゲットより右や左を向く位置にセットアップしても意味がありませんからね。この2点ができれば、どんな斜面でも確実にスクェアに構えられますから。これをやらずに、左足上がりは右足寄り、とか、逆に左足下がりは左足かかと線上、なんていう風にボール位置を決めるのは、実はナンセンスなんですよ。

上杉 なるほどな~、言われてみれば納得です。でも、自慢じゃないけど私は斜面からのショットは大得意。これは、無意識に正しいボール位置にセットできていたということでしょうか?

中井 そこは上杉さんのセンスですよ。基本的に上杉さんは手先が器用な「当てる天才」。しかし、だからこそ、好不調の波が激甚だったわけです。手先で当てるゴルフを卒業して、いつでも当たる、振ればおのずと当たってしまうゴルフに脱皮するためには、素振りでボール位置を決める、セルフチェック法を身に付ける必要があるわけです。

上杉 いずれにせよ、今日の不調はボール位置がいつもより右足寄りだった、それだけのことだったわけですね。

中井 その通り。たったそれだけのことに気が付けるか、気が付けないか。これが、競技の場では予選を通過できるか否かの分かれ道になってくる。競技に出るというのは、そういうことなんですよ。

 
ただ漠然と素振りをするのではなく、「最下点」を探し、「スクェアに戻る位置」を探る。これがホントの素振りの意味! 上杉の競技挑戦まであと1カ月弱。目指せ、マスターズ!



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