僕のマグノリアレーン

2012.04.26

【第65回】
花道に潜む「魔女」

僕のマグノリアレーン

「マスターズを目指す!」そう宣言したジャーナリスト・上杉隆とそれをサポートするプロゴルファー・中井学。夢のオーガスタ目指しての二人三脚ゴルフレッスンドキュメント、今週はアプローチがテーマです!

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アプローチの重要性を物語る
「GIR」って知ってる?

上杉 いや~、間もなくゴールデンウィークですね。

中井 そうですね。上杉さん、ゴルフのご予定は?

上杉 ふふふ、もちろんありますよ。先週のレッスンでショットは絶好調。パッティングも引き続き好調。この分だと、黄金週間のゴルフでは70台連発、あわよくばパープレー、さらにはアンダーパーの期待も膨らみます。そうなったらいよいよマスターズ出場が現実味を帯びてきます。

中井 うーん、まさに絵に描いた餅……。それはさておき、ショットとパットはいいとして、もうひとつ大切なことを忘れていませんか?

上杉 バーディパットを沈めたときのガッツポーズのことですね。大丈夫、その点に関しては間もなく一周忌を迎えるセベ・バレステロス研究家として、スペインの闘牛士のように派手なポーズを用意しています。

中井 まったくもって不正解です、上杉さん。正解は、アプローチです。アプローチの成否は、平均ストロークに直結します。「マスターズを目指す!」という言葉を言い換えれば、それは「平均ストロークを下げる」ということ。そしてそのためには、なんといってもアプローチです。

上杉 アプローチかぁ、地味ですよね、アプローチって。いいじゃないですか。ショットが良ければアプローチをする必要もありません。

中井 ……上杉さん、「GIR」って知っていますか?
上杉 GIR? 「G」は、まあ「グリーン」ですよね。「IR」は……「イシカワ・リョウ」?

中井 グリーン・イシカワ・リョウってなんのことですか一体。正解は、グリーンズ・イン・レギュレーション。規定打数でのグリーンオン率といった意味で、いわゆるパーオン率のことです。

上杉 なんでアプローチの話なのにパーオン率が出てくるんですか。

中井 実は、GIRこそアプローチの重要性を物語る数値なんですよ。たとえば、今年の米ツアーGIRランキングは、以下のようになります(4月26日現在)。

1位 L・ウエストウッド 75%
2位 B・ワトソン 73.61%
3位 J・センデン 71.79%
4位 H・メイハン 71.23%
5位 J・ローズ 70.63%

上杉 お~。やはり調子のいいプロたちが上位にきますね。

中井 ええ。特にウエストウッドの75%という数字は驚異的です。しかし、この数字を逆側から見れば、超・絶好調のウエストウッドでさえ、4回に1回はパーオンを逃しているということがわかります。

上杉 あ、そっか。

中井 そして、いいですか上杉さん。世界ランク2位のルーク・ドナルドのパーオン率は、全体の137番目、61.67%に過ぎないんです。こうなると、3回に1回はグリーンを外す計算です。

上杉 下手ですね~、ルーク。なんか、私でも世界ランク2位を目指せる気がしてきました。

中井 逆です。この数字が証明しているのは、ルークが「滅茶苦茶上手い」ということです。だって、3回に1回以上グリーンを外しているのに、世界で2番目に強いわけですから。ちなみに、世界ランク1位のR・マクロイは67位タイで65.28%。ルークとは約4%差ですが、やはり3回に1回グリーンを外す計算。つまり、18ホール中6ホールはパーオンを逃している……。

上杉 なるほど。それでも世界ランク1位、2位にいるということは、ショートゲームがすごく上手いということか。

中井 その通り。ドライバーの飛距離やショットのキレにばかり注目が集まりがちですが、本当に強い選手はなによりアプローチが上手い。「アプローチの上手さ=強さ」という式が成立するのです。

上杉 なにをグズグズしているんですか。中井プロ、さっさとアプローチを教えてください。

中井 おわっ、急に態度が変わりましたね。よし、ではグリーン周りにいきましょう。

芝が生え変わる時期の花道は
「ライの確認」が重要だ!

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安易にピッチショットを選択した上杉に、まずは「ライの確認」が大事と中井プロはいう
中井 では、さっそく花道からアプローチしてみましょう。

上杉 はい。エッジまで10ヤード。奥に切られたピンまで30ヤードといったところですね。得意のサンドウェッジで、ふわりと浮かせてベタピンを狙います。よいしょっ(と、打つ)。あっ、トップして奥のOBまで行った!

中井 さもありなん。この場面、マスターズに出場する選手たちがサンドウェッジでのピッチショットを選択する可能性は、いいですか、0%です。

上杉 ゼロっ? 今年のマスターズ最終日15番、ミケルソンはピッチショットどころか、ロブショットをやったじゃないですか。観てないんですか?

中井 それは、あくまでロブを打つ必要性があったからです。ハイリスク・ハイリターンのスペクタクルゴルフが持ち味のミケルソンでも、このシチュエーションなら確実に転がしを選択します。

上杉 どうしてそう断言できるんですか。ミケルソンに聞かなきゃわからないじゃないですか。

中井 その答えはライにあります。

上杉 ライ麦?

中井 念のため申し上げると、ワイルド・ターキーやジム・ビームの原料や、サリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて」で有名なライではなく、「ボールの置かれた状況」を意味するゴルフ用語のライのほうです。春の終わりから初夏にかけては、芝が生え変わる時期。今上杉さんが何気なくボールを置いたライは、今まさに芝が生え変わる寸前の、ボールが浮いているように見えて沈んでいる、超・難ライでした。あのライからピッチショットを打つのは、正直プロでも難しい。

上杉 ♪ライララーイ、ライラライラーライララーイ(歌いだす)。

中井 (完全に無視して)ゴルフボールは直径約4センチ強。ですから当然、「ひと転がり」で移動する距離は12センチ強。その距離が明暗を分かち、アプローチで使用するクラブも変化するのがアプローチです。

上杉 うーん、たしかに、ほんのちょっと手前だったら、芝が生えそろってティアップ状態になります。

中井 オーガスタには魔女がいると言いますが、この時期の「花道」にも魔女がうようよいるんです。

上杉 では、今の場合だったらピッチングウェッジかなんかで転がすべきだったんですかね。

中井 それでは中途半端ですね。ズバリ、使うべきは「パター」です。ちょっと、打ってみてください。

上杉 え~、距離感が難しいなぁ。まあ、やってみます。(打つ)あ、意外と寄った。これならパーでしのげますね。

中井 「絶対にダフらない」という安心感があると、人間は潜在能力を発揮して意外と寄るものなんですよ。「寄せワン」を増やしたいなら、打ち方なんて後回し。とにかくライを観察することが大切です。

上杉 (カミロ・ビジェガスでお馴染み、一時石川遼プロも真似していた“スパイダーマンポーズ”をとる)

中井 ――なにをやっているんですか、上杉さん。

上杉 当たり前じゃないですか。ライを観察しているんです。

中井 そこまでしなくても大丈夫ですよ……。

 
というわけで、技術の前に、ライ確認。「そんなの当たり前じゃん」と思ったあなたは上級者。ほとんどのアマチュアがこれができてない! と中井プロが嘆いております。そんなわけで来週はゴールデンウィークにつきお休みです。再来週も目指せ、マスターズ!



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