僕のマグノリアレーン

2012.04.12

【第63回】
今年は”理論vs感覚”の勝負だった!

僕のマグノリアレーン

マスターズを目指す! そう宣言した元・ジャーナリスト上杉隆と、それをサポートするプロゴルファー・中井学の二人三脚ゴルフレッスンドキュメント、通称「僕マグ」。今週は、終わったばかりのマスターズをプレイバック!

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先週の中井の予想は
見事なまでの外れっぷり!?

上杉 いや~、すごかったですね。

中井 ――マスターズですよね。たしかに、素晴らしい試合展開、素晴らしいマスターたちのプレーでした。

上杉 名手たちの戦いもそうですが、すごかったことは他にもあります。

中井 なんでしょう?

上杉 中井プロの「マスターズ優勝予想」の外れっぷりです。先週名前が出た、ウェブ・シンプソン、キーガン・ブラッドレー、マーティン・カイマーといった選手たちは、見事に優勝争いに絡みませんでした。

中井 ぐぬっ……。しかし、私が注目したのはあくまで「中尺パター使用プレーヤー」です。中尺パターを使用するマット・クーチャーは、サンデーバックナインの終盤まで優勝争いに絡みましたよ。

上杉 男らしくないですね~。おとなしく認めたらどうですか、己の「読み」が外れたことを。現に先週の「僕マグ」では、マット・クーチャーの名前は出ていません。

中井 あれっ、そうでしたっけ? たしか、取材時には名前を挙げた気がするんですけど……。

上杉 またまた~。

中井 ホントですって! 僕は2007年のザック・ジョンソンの優勝も的中させたし、2009年のケニー・ペリーの活躍だってごにょごにょ。

上杉 なにをごにょごにょ言っているんですか。もういいです、予想の件は。それよりも、今週の「僕マグ」は幕を降ろしたばかりのマスターズを総括しましょう。

中井 無念ですが、了解です。上杉さんはどう感じましたか? 今年のマスターズ。

上杉 私が感じたのは、あるふたりの人物の「不在」と、それに伴う「機会」、すなわち私自身のチャンスです。

中井 なんと、物凄い重要な点に気が付きましたね! 私もまったく同意見です。どうぞ、私に代わって読者に説明してください。

上杉 では、解説しましょう。「ある人物」とはズバリ、セべ・バレステロスと昨年まで解説者席にいた、私も親交のある岩田禎夫さん。仮に岩田さんの後釜に私が就任すれば、労せずしてマスターズに毎年「参戦」できます。フフフ、中井プロも同じ意見とは心強い。さっそく茨城県のセべ・バレステロスGCと、TBSに交渉に行きましょう。

中井 ……僕の意見はまったく違いますよ、上杉さん。解説者じゃなくて、プレーヤーとしてマスターズに「参戦」しなければこの連載の意味がありません。

上杉 えっ、そうなの?

中井 そうです。ちなみに、僕がその「不在」を強く感じた「ある人物」とは、南アフリカの英雄、アーニー・エルスです。

上杉 え、ダスティン・ジョンソンではなく、結局出られなかったエルス。彼の不在が何か影響を及ぼしたんですか?

中井 昨年のマスターズ王者、シャール・シュワーツェルと、今年プレーオフに散ったルーイー・ウェストハイゼンはともに南アフリカ出身で、エルスのゴルフアカデミーで腕を磨いたふたりです。エルスという一時代を築いたプレーヤーの「不在」の陰で、彼の影響下にある新世代のマスターたちが台頭しているわけです。

上杉 スペインのセべ・バレステロス、日本の岩田禎夫さんという偉大な先人が引退された後に、私という新世代のゴルフクリエーターが台頭してきているように……ですね?

中井 (無視して)エルスの「不在」と時を同じくして、ウェストハイゼン、シュワーツェルといった選手がチャンスをつかんだ。そして、優勝したバッバ・ワトソンは、タイガーやミケルソンのような卓越したフィーリングと、ガンガン攻めるプレースタイルの影響を受けたプレーヤーであると感じられます。

偉大なプレーヤーたちの影響は
若手のプレースタイルに表れていた!

063
優勝したワトソンは知っていた30センチのパットの怖さ。カップインを"耳で聴く"のがコツだ
上杉 ゴルフ界でもやっぱり「先人」あるいは「先輩」の影響は大きい、と。

中井 その通りです。エルス・チルドレンの南ア勢、タイガー、ミケルソン・チルドレンのアメリカの若手、ノーマン・チルドレンのオーストラリア勢――その国の偉大なプレーヤーは、必ず後進たちに強い影響を与えます。

上杉 ジャーナリストの先人として、私がニューヨークタイムズの先輩である米国のデイビッド・ハルバースタムを尊敬しているのと同じようなことですね。

中井 でも、そういうことですよ。上杉さんがハルバースタムの確立した「ニュージャーナリズム」と呼ばれる文体に影響を受けたように、南ア勢はエルスの正確無比で理にかなったスウィングと圧倒的なショット力に憧れ、米国勢はタイガー、ミケルソンのドラマチックなゴルフに憧れ、影響を受ける。そういった意味では、今回のマスターズは理論VS感覚、曲げないゴルフVS球色を作るゴルフの戦いでもあったわけです。

上杉 前者がウェストハイゼン(南ア)、後者がバッバ・ワトソン(米国)ですね。そうか、真逆のゴルフスタイルだったわけか。

中井 その通り。そして、勝負の明暗を分けたのは、プレーオフ2ホール目の舞台となった10番ホールのように、オーガスタが実は「ティショットのミス」には寛容なコースであることが要因のひとつです。分かりやすく言うと、オーガスタは案外「ティショットを曲げても平気」なコースなんです。

上杉 たしかに。全米オープンでティショットを曲げてラフに入れたら、絶対に2打でグリーンは狙えません。そうか~、だからタイガーやミケルソンのように、たとえティショットを曲げても、フィーリングでスーパーリカバリーを見せる選手たちと相性がいいのか。ということは、私が心から尊敬する「あの人」も――。

中井 その通り。セベ・バレステロスがマスターズで2勝しているのも、マスターズとの相性の良さがその裏にはあると思います。史上最高の「フィーリング派」ですからね、セベは。そして、上杉さんは間違いなくセベ・チルドレンです。

上杉 では、やはり中井プロの理論は捨て、セベのスウィングを手本にすることにします。今までお世話になりました。

中井 ちょいちょいちょーい! それまた違うんですよ、上杉さん。セベのフィーリングは、圧倒的な技術があってはじめて生きるもの。技術、あるいは理論に裏打ちされたフィーリングこそが世界を制することを忘れてはいけません。

上杉 それを先に言ってください。

中井 さて、字数も残り少なくなってきましたが、最後にひとつだけ「レッスン」を。

上杉 なんでしょう。

中井 「30センチのパットの沈め方」です。

上杉 30センチ。馬鹿にしないでください。そんなの100回打って130回入ります。

中井 増えてます……。まぁ、僕は、その30センチを外してプロテストに失敗した男です。

上杉 なに~、そんな悲しい過去を持つ男だったんですか、中井プロって。

中井 ええ……。今年のマスターズ、ワトソンは、勝利を決める30センチのパットを打つ直前、優勝を確信して歓喜の叫びをあげるパトロンたちに「ちょっと待ってくれ」というジェスチャーを見せました。彼は、30センチの怖さをしっかりと理解していたんです。あの気持ちが僕は痛いほど分かります。

上杉 でも、さすがに外さないでしょ~、30センチは。

中井 今年の海外女子メジャー第一戦、クラフト・ナビスコでは、キム・インキョンが18番で30センチを外し、プレーオフの末敗れています。

上杉 前言撤回。今すぐ30センチのパットの打ち方を教えてください。

中井 技術的な部分は皆無です。カップインを目で見ず、耳で聴くこと。これだけで、30センチは絶対に入ります。

上杉 なんだ、それだけ? 正直に言って、期待して損しました。

中井 いつの日か、上杉さんにも、「絶対に、なにがあっても外せない30センチ」と向き合う日が来ます。そのときに思い出してくれればいんですよ。

上杉 カップインを、鼻で嗅ぐ――ですね。

中井 鼻じゃなくて、耳ーッ!

上杉 知ってますよ。マスターズの創始者、かのボビー・ジョーンズも「ゴルフは耳と耳の間で行うスポーツ」と喝破していたくらいですから。

中井 あれ? 耳と耳の間ってことは、鼻?

 
目ではなく、鼻でもなく、耳で聴く。それが30センチを外さないコツ。「ちなみに、距離に関わらずすべての『お先にパット』に言えることです」(中井プロ)とのこと。いつか訪れる「絶対に外せない30センチ」に挑む瞬間まで、どうか覚えておいてください。そんな感じで来週も、目指せ、マスターズ!



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