僕のマグノリアレーン

2012.03.29

【第61回】
使っていけない「ロブショット」

僕のマグノリアレーン

「マスターズを目指す!」そう宣言した元ジャーナリスト・上杉隆とそれをサポートするプロゴルファー・中井学。非現実的ともいえる目標に向けて迷走しながら突き進む、ゴルフレッスンドキュメントです。

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中井が伝授するマスターズ開幕直前
スペシャルレッスンとは?

上杉 いや~、すっかり春ですね。

中井 今年の冬は長かったですから、うれしいですよね。いよいよ本格的なゴルフシーズン到来です。

上杉 気が付けばマスターズももう来週ですからね。タイガーも復活優勝したし、楽しみですねえ。

中井 ルーク・ドナルド、ローリー・マクロイのワールドランク1位2位を競い合うふたりも調子がいいですし、日本からは石川遼、松山英樹が参戦。さらに直前でのタイガー復活。舞台も役者も完全にそろった感があります。

上杉 そうですね、ただひとりを除いては――。

中井 ただひとり。うーん、誰だろう。先日のアーノルド・パーマー招待で優勝争いに加わったアーニー・エルスでしょうか。

上杉 違います。ほら、いるじゃないですか、すぐ近くに。

中井 まさか、もう、めんどくさいので私から申し上げます。ウエスギタカシですね。でも、その選手は、マスターズの前にアジアアマ、その前に日本アマ、そのまた前に関東アマ、そのさらに前に関東アマ予選、挙句の果てには大前提として関東ゴルフ連盟の正会員倶楽部の会員となり、公式ハンディキャップを取得する、といったハードルがあります。

上杉 そんなにあったんでしたっけ……。オーガスタへの道は、まずは会員権の購入から、というわけですね。

中井 まあ、アマチュアの場合そうですね。読者の皆様も、会員権を購入される際は、「これがマスターズ出場への第一歩だ」と思うと、ちょっとワクワクするかもしれません。

上杉 中井プロ、どこかにマスターズへの「裏口」はないんでしょうか?

中井 ありません。厳しくもフェアな競争によってのみ、マグノリアレーンへの道は開かれます。

上杉 仕方ない、では今週もレッスンですね。

中井 今週は、マスターズ直前スペシャルレッスンをやりましょう。

上杉 なんですか、それ。

中井 ロブショットです。

上杉 ロブショットなら、以前“マジェスティック・ロブ”を習いましたが……。

中井 フェースを開き、開いたフェースをしっかりとローテーションさせることでフワリと浮かせ、球の重さで止める。それがマジェスティック・ロブでした。今週お教えするのは、それとはちょっぴり違うんです。

上杉 ほほう。

中井 そもそも、ロブショットにはふたつの種類があります。「重さで止めるロブ」と「スピンで止めるロブ」。後者の、「スピンで止めるロブ」が今週のテーマです。

上杉 いいですね。フワッと上げてピタリと止める、私の華麗なプレースタイルにピッタリくる技。そもそも、そういった球筋は、私の得意とするショットのひとつです。

中井 ほほう。では、ちょっとやってもらっていいですか?

上杉 お任せください。では、あの20ヤード先のピンを狙って……とりゃっ(と、打つ)。あっ、ダフった!

中井 見事なお約束通りの展開ありがとうございます。上杉さん、今の打ち方では「3打数1安打」が関の山です。

上杉 3割打者じゃないですか。首位打者すら狙える数字です。私は小学生の頃ヤクルトスワローズのファンクラブに……。

中井 その話は先週うかがいました。さらに、ゴルフで成功率3割は致命的です。上杉さんは、ショットでは腕を使う意識が大分減ってきましたが、このような小技になるとやはりまだ手を使ってしまっていますね、どうしても。

右ひじは伸ばさず、絞らず、
ただキープすればいい!

061
ロブショットであっても、通常のスウィングと同様に「手ではなく体で振る」イメージが大切だ
上杉 しかし、ショートゲームにおいては手先の感覚もやはり重要ではないのでしょうか。

中井 少なくとも、ロブショットに関してはNOです。ロブショットとはなにか。答えは簡単です。アドレス時にロフトを寝かせ、寝かせたロフトを維持したままインパクトを迎える。ただこれだけのことなんです。4度前後のロフトでボールにコンタクトするパターでは球が上がりません。しかし、ロフトを60度以上寝かせた状態でボールに当たれば、球が上がる。それだけ単純な話なんです。

上杉 それと手を使うこととなんの関係があるんですか?

中井 手を使うと、ロフトを維持するのが難しいんですよ。ロフトが立ったり、寝すぎたり、かぶったり、開いたり。なにが起きてもおかしくない。しかし、手を使わずに体だけで振れば、構えたロフト通りの球が確実に出る。ゴルフにおけるミスショットとは、「自分の意図しない球」のこと。だから、手を使っちゃいけないんです。

上杉 うーん、なるほど。納得せざるを得ない。じゃあ、正しい打ち方を教えてください。

中井 まず、バンカーショットのように構えてください。オープンスタンスに立ち、フェースを寝かせてロフトを増やし、ややハンドファーストを弱めます。バンカーショットの場合、ボールではなく砂を打つのでフェースが右を向いたまま構えますが、ロブの場合はフェースはターゲットを向けるので、スタンスごと回り込みます。

上杉 回り込みました。

中井 あとは、オープンに立ったスタンスなりに振るだけ。そのとき、構えたときにできる右ひじの角度を変えないことだけ意識して、実際にボールを打ってみてください。

上杉 了解(と、打つ)。おーっ、高く上がった球がグリーンに落ちて、その場で止まりました。ベタピンとはいきませんでしたが……。

中井 右ひじの角度をキープすると、ダウンスウィングでクラブが寝ません。つまり、ロフト角、ライ角を維持しやすくなるわけです。

上杉 右ひじを絞るってことですか?

中井 ダウンで右ひじを絞っちゃうと、クラブが寝ちゃうんですよ。ひじは伸ばさない、絞らない。ただただ、キープです。

上杉 (何球か続けて打つ)うーん、面白いように球が上がる。かなりの頻度で使うことになりそうですね、このショットは。

中井 残念です。上杉さん、このショットは「使ってはいけない」ショットなんです。

上杉 なにを言い出したんですか、中井プロ。自分が教えておいて「使ってはいけない」とは。記者会見を開いておきながら、「フリージャーナリストはお断り」と言っているようなものですよ、それは。

中井 それとこれとは違う気もしますが、理由を説明します。今回教えたロブは、オープンに構えたスタンスなりに振る「カットロブ」。球が上がり、スピンも効くのが特徴ですが、それは、完全にピンポイント狙いでしか使えないということを意味しています。

上杉 いいじゃないですか、ピンポイント狙い。

中井 うーん、そこなんですよ。それこそオーガスタでは、左足下がりのライから、砲台グリーンの手前に切られたピンを、バンカー越えで狙わなければならないような状況があるかもしれません。しかし、そういった状況以外では使うべきではないし、もっといえば、こういったショットを使う必要がないコースマネジメントをしなければならないんです。

上杉 そういうことか~。しかし、いずれにせよ「じゃあなんで教えたんだよ」という疑問が残るのですが……。

中井 家庭における非常用袋みたいなもんです。技術自体を修得し、いざというときに備えておくのは悪くありません。それに、ショートゲームだって体で振るんだ、という感覚も身に付くし、練習してて楽しいですから。

上杉 その「いざというとき」は、すなわち「マスターズに出場して、なおかつピンチになった状況」ということですね。よ~し、そのときに備えてしっかり練習しておきます。

中井 まずは会員権を買うところからですけどね……。

 
中井いわく、特殊技術「カットロブ」を使わなくて済む、ゲームマネジメントがもっとも重要。というわけで、マネジメントの話はまたいつか詳しく。来週はマスターズ開幕超直前スペシャルです!



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