僕のマグノリアレーン

2012.03.08

【第58回】
ゴルフスウィング2.0 ~上杉隆の覚醒~ <中編>

僕のマグノリアレーン

「マスターズを目指す!」そう宣言した元・ジャーナリスト上杉隆と、それをサポートするプロゴルファー・中井学。連載開始から1年超、ついに上杉に“開眼”の瞬間が訪れる!?

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先週のウェッジから、ドライバーに
持ち替えた上杉のショットは……

中井 今週は先週の続きです。上杉さん、ちょっと前回のあらすじを説明してもらえますか?

上杉 時は2012年2月末。仮想オーガスタナショナルGCこと、東京は江戸川区のロッテ葛西ゴルフでの取材に向け、元ジャーナリスト・上杉隆は愛車のステアリングを握り、軽快なドライブを楽しんでいた――。

中井 え~、そのあたりは省略していただいて結構です。その分だと、練習場に辿りつくまでに文字数が埋まってしまいます。

上杉 そうですか。では、要点だけを述べましょう。セベのつもりだったのがストレンジになったら飛距離が伸びた。以上です。

中井 今度はワケがわかりません。仕方ない、僕が説明します。えーと、「手を意地でも動かさず、体だけを動かす」その意識で100ヤードのウェッジショットを練習した上杉さん。イメージ的には豪快なセベ・バレステロスではなく、コンパクトスウィングのカーティス・ストレンジのスウィングに変化したものの、飛距離はむしろ伸びた、というのが前回です。

上杉 そうでした。イメージ的にはスペイン人からアメリカ人くらい変化したのに、見た目にはほとんど変化がなかったんですよね。腕をまったく動かしていないし、トップも小さいのに、飛ぶ――まさに、東浩紀の「ゴルフスウィング2.0」もびっくりな感じです。

中井 実際、その有名評論家の方の著作によく似た言い回しは、的外れではありません。日本のゴルフ界では、「腕を高く上げろ」「腕を速く振れ」といった、直接的に手打ちを奨励するわけではないものの、結果的に手打ちになりやすいイメージの言説が主流派でした。しかし、この打ち方は手をまったく動かさない。バージョン2.0のゴルフスウィングです。

上杉 素晴らしい自画自賛ですね。

中井 僕は客観的に状況を述べたまでです。さて、先週は100ヤードのウェッジショットでしたが、今週は同じイメージでドライバーを打ってもらいます。

上杉 先週のレッスンで体は温まっていますからね。早速打ちます(と、打つ)。

中井 !!

上杉 「!!」じゃ分かりませんよ、中井プロ。逆光で球の行方が見えないので、どこに飛んだのか教えてください。

中井 !?

上杉 ニュアンスを変えても無駄です。

中井 失礼しました。いやはや、驚いた。250ヤード先のネットにもう少しで直接当たるところでしたよ。うーん、これは凄い。上杉さんのゴルフ仲間で、飛ばし屋として有名な俳優・乃木涼介さんにも負けませんよ、この飛距離なら。

上杉 乃木さん? ああ、あの飛ばないアマチュアの人かぁ。残念ながら僕が戦うのは、ダスティン・ジョンソンやローリー・マクロイ、タイガー・ウッズに石川遼、松山英樹といった面々ですからね。まあ、頑張ってもらいたいね、彼も。

中井 上杉さんが乃木さんにスコアで勝ったところを見たことがないのですが……。

上杉 引き分けたことはありますよ。でも、いつもイーブンパーで回るあの手堅いゴルフには正直ついていけません。なにしろ面白味がないじゃないですか。

中井 負け惜しみですね。まあ、ともかく僕もこれほどまでに飛距離が伸びるとは驚きです。振った感覚はいかがですか?

上杉 相変わらず、カーティス・ストレンジです。感覚的には、バックスウィングの大きさが普段の7割といったところかなぁ。

中井 それで正解です。よし、そのイメージでもう1球打ってください。

上杉 参ったな~。ネットを超えたりしませんよね? その先にある首都高湾岸線を通行止めにしたほうがいいでしょうか。

中井 まさに心配ご無用です。いいから早く打ってください。

ドライバーの構造から考えると
ボールの位置は左足寄りがいい!

058以前は真ん中よりにボールをセットしていた(写真左)が、これでは当てにいくスウィングになりやすい。「ゴルフスウィング2.0」では、左わきの前に置くのが正解(写真右)
上杉 では打ちます(と、打つ)。あれっ?

中井 「どチーピン」ですね。コースであれば確実にOBです。今のは、一発目が飛んだもんだから、「もっと飛ばしてやろう」と、トップの位置を手で作っていました。スウィング自体は大きくなりましたが、それでは飛びませんし、今のようなミスも出ます。

上杉 「もっと飛ばしてやろう」と考えたのは恐ろしいことに事実です。中井プロ、なんで僕の考えていることが分かったんですか?

中井 上杉さんの、いや、アマチュアの方の考えていることは大体分かります。いいですか、あくまでも動かすのは体だけです。上杉さんって、朝イチのチーピンが多いじゃないですか。上杉さんはラウンド前に練習をしないから、1番ホールでは体が動かず、完全に手だけで振ってしまうんです。腕の上下動と、手のターンだけで振ってしまうため、スピンが増えて飛ばないか、ヘッドを巻き込んでチーピンか、いずれにしてもミスになってしまうわけです。

上杉 むむむ。オーガスタの1番ホール「ティーオリーブ」は、距離のある緩やかな右ドッグレッグホールですからね。チーピンを打ったらその瞬間にダボが確定します。ああ、僕のマスターズが初日の1番ホールで終わってしまう。

中井 その悩みは出場が決まってからでも問題ありません。上杉さん、ボール位置をボール2、3個分左足寄りにしてもらえませんか?

上杉 え? こんなに左足寄りにしたら、空振り、あるいは体が突っ込んで余計にチーピンが出そうですけど。

中井 多くのアマチュアゴルファーは、「当てたい」という意識から、ドライバーのボール位置が体の中心近くになっています。しかし、「ゴルフスウィング2.0」は、当てにいかずともスウィングすれば自ずと当たってしまう振り方。ボール位置は、左わきの前あたりにしなければなりません。

上杉 どういうことでしょう。

中井 ボールを体の中心に置くメリットは、ボールに「当てやすい」というただ1点しかありません。というのも、ゴルフクラブにはプル角というものがありまして……。

上杉 なんですか、そのプル角って?

中井 ゴルフクラブって、ちょっとハンドファーストに構えたときにフェースがスクェアになる構造ですよね。つまり、どんなクラブもやや左からシャフトが差さっているわけです。その角度のことを「プル角」といいます。

上杉 それとボール位置になんの関係があるんですか?

中井 簡単にいえば、プル角の分だけインパクトの位置は体の中心より左にズレるということです。だから、ボール位置は、とくにドライバーの場合、体の中心ではありえない。体の動きだけでスウィングすれば、左わきの前に置いたボール位置にクラブが戻ってきたときに、自ずとハンドファーストになり、フェースもスクェアに戻る。余計な小細工がいらないんですよ。

上杉 うーん、分かったような、分からないような。まあとにかくボール位置を左にズラして打ってみます。腕を意地でも動かさない意識で……とりゃっ(と、打つ)。

中井 ……。

上杉 今度はなんですか。

中井 凄い。今度は直接ですよ。下のほうとはいえ、250ヤード先のネットに直接当たりました。キャリーで250ヤード、しかも練習場のワンピースボールですからね。

上杉 きましたね。

中井 完全に、きました。飛ばないプロより飛んでるくらい飛んでますよ、今の。

上杉 微妙な表現ですが、褒め言葉と受け取っておきましょう。しかし、スウィングは小さい。力も入れてない。なのに飛ぶ。本当に不思議です。

中井 この分ならまだまだ飛距離は伸ばせますね。というわけで、来週も続きます!

 
というわけで、ここまでのまとめ。①手は「意地でも」動かさない ②体(腕の付け根)「だけ」を動かす ③感覚的にはスウィングが小さくてOK ④ボール位置は左わき線上。以上をふまえて来週も続きます! 上杉隆のガチ飛距離アップ、しかと目撃してください。それでは来週も、目指せ、マスターズ!



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