僕のマグノリアレーン

2012.03.01

【第57回】
ゴルフスウィング2.0 ~上杉隆の覚醒~ <前編>

僕のマグノリアレーン

「マスターズを目指す!」そう宣言しながらもなかなか上達しない上杉隆。そんな上杉が中井を呼び出したのは、普段まったく行かない「あの場所」だった――!

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東京都江戸川区に
仮想オーガスタを発見!

中井 やってきましたね、「ロッテ葛西ゴルフ」。東京のベイエリアにある距離250ヤードを誇る練習場です。

上杉 ふふふ。この練習場を取材場所に選んだのには理由があります。

中井 そこなんですよ。普段練習場に行かない上杉さんがココを取材場所に指定するなんて、なにか理由があるんじゃないですか?

上杉 オーガスタです。

中井 え?

上杉 ここはオーガスタナショナルGCなんです。

中井 ここはアメリカ・ジョージア州のオーガスタではなく、東京都・江戸川区の「ロッテ葛西」ですが……。

上杉 まったくそれでよくプロコーチが務まりますね。見てください、この緑一面のロケーション! そしてレンジ内に散在する、ガラスのグリーンに匹敵する高速人工芝グリーン! これぞ、「仮想オーガスタ」です。

中井 なるほど~、そういうことか。言われてみればたしかにそうかもしれません。

上杉 ここの練習場のグリーンはただ高速なだけでなく、「おわん型」で、しかも小さいんです。つまり、精度の高いショットを打たないと、グリーン上に止められない。実際のオーガスタのグリーンは極めて大きいですが、バーディを狙うために止めなければならないエリアは極めて小さく、そういう意味でもここは最適な練習環境と言えます。見てください、あの約100ヤード先にあるグリーンを。

中井 はあ。

上杉 僕にはこの1階の1番打席がオーガスタの17番、通称「ナンディナ」のセカンド地点にしか思えません。

中井 17番。時の大統領に「あの木を切ってくれ」と懇願されながら、ボビー・ジョーンズがついに首を縦に振らなかったという伝説が残る木、「アイゼンハワーツリー(アイクズツリー)」がフェアウェイ左にそびえ立つホールですね。

上杉 そうです。ティショットでその「アイゼンハワーツリー」を避けてフェアウェイをキープしたとしましょう。問題はセカンドです。17番のグリーンは波のようにうねった形状。ハンカチ一枚の精度のアイアンショットが求められます。

中井 それはたしかにその通り。しかしまあ、いきなり「ハンカチ一枚」は難しいので、せめて「風呂敷一枚」あたりにしませんか?

上杉 志の低い男ですね。まあ仕方ない。それでいきましょう。

中井 では上杉さん、とりあえず打ってみてください。

上杉 いいですね。早速いきましょう(と、打つ)あ、トップした。

中井 春が近いとはいえ、まだまだ寒いですからね。しばらくはウォーミングアップということで。

目指すのはセベではなく、
ストレンジのスウィングだ!

057
いつも通りのイメージ(写真左)と、レッスン後(写真右)を比較。「感覚的にはセベとストレンジくらい違う」(上杉)が、実際はほんのわずかな差しかない。レッスン後のほうがトップの位置がやや低いのに、体のターンはむしろ多くなっていることに注目!
上杉 (何球か立て続けに打つ)あれ~、思ったより飛ばないな。50度のウェッジなのに、100ヤードをショートするなんて……。

中井 うーん、これは寒さのせいばかりとは言い切れませんね。はっきり言って今の上杉さんのスウィングは、体が全然動いていません。

上杉 でも、ウェッジショットですからね。体の動きはドライバーなどに比べ、必然的に小さくなるのではないでしょうか。

中井 それは大いなる勘違いで、正解はむしろ逆です。上杉さん、ウェッジとたとえばドライバーやスプーンなどのロングクラブで、一番の違いはなんだと思いますか?

上杉 素材や形状、重さやロフト角などの差異もありますが、やはり一番は長さですかね。

中井 その通りです。そして、クラブが長ければ長いほど、クラブヘッドにはより多くの遠心力が働き、その作用で“クラブが体を動かしてくれる”んです。逆に、短いクラブは遠心力が働かない分、“自分で体を動かさなければならない”んですよ。

上杉 そういうもんですか。

中井 そういうもんです。ちょっと、今のショットを撮影した画像を見てください。

上杉 はい(写真を見る)。あれ? しっかりと腕が上がって、いい感じのトップができているじゃないですか。

中井 それまた誤解なんです。寒さのせいもありますが、これは体が止まって腕だけが上がっているトップです。これでは体のターンのエネルギーが使えないので飛ばないし、方向も安定しません。いいですか、上杉さん。ゴルフスウィングの真髄は、「いかに手を止めて体だけを回せるか」です。

上杉 うーん、分かってるつもりなのに、それがなかなかできないんだよなぁ。

中井 大丈夫です。はっきり言って、上杉さんのスウィングはこの一年でかなり進化しています。あとはきっかけだけ。この「仮想オーガスタ」は、そのきっかけになるかもしれません。もう1回打ってみましょう。

上杉 はい(と、打つ)。

中井 まだダメです。もっと意地でも手を動かさない意識で振ってください。

上杉 それだとスウィングが小さくなっちゃう気がするんですよ。

中井 それもよくある勘違いです。僕はドライバーのハーフスウィングで270~280ヤードくらい飛ばせますが、これは体だけで振っているから。体を止めて手だけで振ったら、プロの僕でも250ヤード飛ばすのは難しい。いいですか、「スウィングの大きさなんてクソ喰らえ」です。

上杉 そこまで言うならわかりました。とりゃーっ(と、打つ)

中井 おっ、ナイショッ! いいですね、今の感じです。

上杉 中井プロ、私の理想のスウィングは豪快を絵に描いたようなセベ・バレステロスのそれなんですが、今のイメージで振ると、まるでカーチス・ストレンジになった気分なんですけど……。

中井 いいじゃないですか、ストレンジ。ベン・ホーガン以来となる全米オープン連覇の偉業、米ツアーの賞金王3回の超トッププレーヤーですよ、ストレンジは。

上杉 なんか、正直あまりカッコよくないというか……。スウィングも小さいし、あんまり飛ばないし、マスターズに勝っていないし……。

中井 しかし、オーガスタの17番グリーンを風呂敷一枚の精度で射抜くには、ストレンジスウィングがベスト。贅沢は敵です。さあ、もう一球お願いします。

上杉 不本意ですが、仕方ない。とりゃっ(と、打つ)

中井 ……うーん、完璧ですね。

上杉 逆光でボールが見えませんでした。どこに飛びましたか?

中井 狙い通りですよ。ピンフラッグ目指して一直線に飛んだボールが――グリーンを軽々とオーバーしていきました。

上杉 駄目じゃないですか……って、そんなに飛んだの!?

中井 115ヤードくらい飛んでましたよ、今のショット。

上杉 ストレンジなのに?

中井 ストレンジに謝ってください。

上杉 スウィングの大きさはいつもの半分くらい。それでも飛距離が伸びるって、すごいですね。

中井 実は、見た目にはスウィングの大きさはほとんど変化していません。手だけを動かす感覚と、体だけを動かす感覚では、それだけ体感に差があるんです。この「感じ方の違い」を是非覚えておいてください。今の感覚が、これからの上杉さんの「フルショット」です。

上杉 うーん、これははじめての感覚だ。まさに「ゴルフスウィング2.0」です。

中井 評論家・東浩紀さんの著作みたいな感想ですね……。しかし、これはもしかしたら本当にきっかけをつかんだかもしれません。当初の趣旨からは外れますが、来週以降このイメージでドライバーのレッスンいきましょう!

<続く>

 
というわけで、今度という今度こそ上杉が中井流ボディスウィングに開眼!? 次週、衝撃の展開です。乞うご期待。ということで来週も、目指せ! マスターズ!



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