僕のマグノリアレーン

2012.02.09

【第54回】
高速グリーンは「侘びパット」で制す!

僕のマグノリアレーン

「マスターズを目指す!」そう宣言した元・ジャーナリスト上杉隆と、それをサポートするプロゴルファー・中井学。一進一退、一喜一憂、日進月歩、一日千秋ゴルフレッスン、2年目突入中です!

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下りのパットを決める秘訣は
“和の心”に潜んでいる!

上杉 うわーっ、バーディパットが5メートルもオーバーしましたよ、中井プロ。

中井 今のは下りの強烈に速いラインでしたからね。それにしても、ちょっとパンチが入ってしまいました。

上杉 バーディチャンスが一転、ボギーがほぼ確定の状況です。あーあ。

中井 いや、それにしても本当に上杉さんは下りのパットがアレですよね。

上杉 奥歯にモノが挟まったような言い方ですね。なんですか、アレって。

中井 なんていうか、必ずしも得意とは言い切れないところがある、っていうか。

上杉 要するに下手って言いたいんですね、中井プロ。まったく、日本人ならではというか、そういったオブラートに包んだ言い方のほうが、かえって傷つくというものです。

中井 上杉さん、意外と繊細ですもんね……。しかしながら、下りのパットを決めるための秘訣は、日本人特有の気質“和の心”に潜んでいるのも事実です。

上杉 また大きい風呂敷を広げましたね。どういうことですか?

中井 その前に、以前、超高速の下りのラインを攻略するコツをお教えしたのを覚えていますか?

上杉 前世で?

中井 前世ではなく、昨年です。それは、大きく上げて、ゆっくり打つ、というものでした。すなわち、テークバック量を多めにとり、その分ダウンストロークの速度を落とすことで、下りのラインに対応すべしと説いたのです。

上杉 記憶の彼方にある気がします。

中井 それから1年。上杉さんのゴルフをつぶさに観察してきて、その方法では手ぬるいことが分かってきました。上杉さんのパットは、タップ式を超越したパンチ式、いわば狩猟民族的パットです。

上杉 いついかなる時でもカップの向こう縁を破壊する覚悟でパットする。これが、私がセベリアーノ・バレステロスから学んだことです。

中井 そう。であるからこそ、上杉さんはラインを薄めに読み、パンチ式のストロークで直線的に、強めのタッチで狙っていく。しかし、それではオーガスタのガラスのグリーンを攻略することは、やはり難しいのです。

上杉 うーん、たしかに、下りのパットを5メートルオーバーするのはキツイですね、我ながら。オーガスタのグリーンであれば、5メートルどころかグリーンをこぼれ落ち、池にまで入ってしまうかもしれません。

中井 そこで「和の心」です。いままでの上杉さんは、カップという「獲物」に対し、直線的かつ攻撃的に攻めていましたが、そうではなく、カップを自然の一部と思い描き、そこに一体となり、カップインという実りを「収穫」する、「農耕民族的パット」を心がけてもらいたいのです。

上杉 言っている意味がまったく分かりませんが……。

グリーン上ではマラドーナではなく
中田英寿になりましょう!?

054距離感は「スピード感」でつかむのが、オッケーに寄せる秘訣だ
中井 具体的にいきましょう。ストロークのことは考えず、ボールがどれくらいのスピードで転がればちょうどカップのところで止まるのか、それだけを考えてほしいんです。ストロークの幅、タッチの強さなどは考えなくてOKです。ちょっと、同じラインから打ってみてください。

上杉 了解(と、打つ)。あ、またオーバーした。

中井 今のは、やさしく打とうとして振り幅を小さくし、その結果パンチが入ってしまっています。それでは本末転倒。ただただボールのスピード、思い描くのはそれだけです。そして、技術的に一番ポイントとなるのは、ボールのスピードが思い浮かべられたら、そのスピードでヘッドを動かすことです。

上杉 となると、この約6メートルの下りのライン、できうる限りヘッドをゆっくりと動かさなくっちゃですね。やってみます(と、打つ)……あ、10センチに寄った。

中井 素晴らしい。これぞ、グリーンという自然と一体化した、“農耕民族的パット”、いや、それをさらに進めて芸術の域にまで高めた、“侘びパット”です。

上杉 ……熱でもあるんじゃないですか、中井プロ。

中井 いたって平熱です。とにかく、距離感をストロークの幅ではなく、タッチの強さでもなく、あくまでボールのスピードでイメージする。これが下りのパットの最大の秘訣であることだけは忘れないでください。では続いて、同じラインを反対側から、すなわちカップ側から打ってみましょう。

上杉 ふふふ、私の出番ですね。下りが「農耕民族」ならば上りは「狩猟民族」。まさに猟犬の如くカップに襲い掛かる、セベ譲りのパットを披露しましょう。

中井 では、先ほどのボール位置に仮想カップのマークを置きます。では、どうぞ。

上杉 距離は6メートル、向こう縁を破壊する勢いで……(と、打つ)。ああっ、またしてもオーバーだっ。どうなってるんですかコレは。

中井 単純に、下りのラインの速さがイメージに残り、その分だけやはりパンチが入り過ぎたんですね。しかし、それ以上に、今のはボールの転がるスピードをイメージできていませんでした。

上杉 だって、スピードをイメージするのは下りの場合だけでしょ?

中井 上りもです。ただし、上りの場合にイメージするのは、「初速」と「終速」、その両方をイメージすることが大切です。

上杉 「社食」と「就職」? 大和書房のベストセラー「体脂肪計タニタの社員食堂」でおなじみのタニタに就職したい、そういうことでしょうか。もう少しプロゴルファーとして頑張ってもいいと思いますが……。

中井 違いますし、頑張ってます。転がりはじめのスピードと、止まり際のスピード、双方をイメージするということです。「どれくらいのスピードで飛び出せば、カップで止まってくれるか」、これをイメージする。これこそ上りの「侘びパット」。オーガスタのグリーン上でスコアを崩さないための、日本の伝統を生かした攻めです。

上杉 うーん、なるほど。でも、そのイメージはちょっと難しいですね。

中井 サッカーでいえばシュートではなくパスってことですよね。シュートならばゴールに向かっての速度は問いませんが、パスの場合スピードが合わなければ意味がない。日本人はストライカーは育ちにくいけど優秀なパサーは多い。まさに和の心でもってカップに向けてキラーパスを送ればいいんです。

上杉 なるほど、マラドーナではなく中田英寿、というわけですね。よし、やってみます。

中井 その際、ヘッドはイメージした初速に合わせて振ってください。それによって、自然に終速も合ってくるはずですから。

上杉 了解(と、打つ)。おー、ピタリと寄った。

中井 素晴らしい。グリーンは緑。緑は茶の色。まさに茶席のような静かな心で持って臨めば、自ずとボールはカップに寄るのです。一座建立、これにて成りました。

上杉 さすがにたとえが強引すぎる気がするんですけど……。

 
中井プロいわく、「距離感とは、スピード感のこと」。なるほどっ! というわけで、ボールの転がる速度だけをイメージして、極めよう! 侘びパット! そして来週も、目指せ、マスターズ!



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