僕のマグノリアレーン

2012.01.12

【第50回】
プッシュアウトは文学的に直す!

僕のマグノリアレーン

ジャーナリスト休業中の上杉隆がマスターズを目指す! 無謀ともいえる夢に向け、プロゴルファー・中井学と二人三脚のレッスンを繰り広げます。今週は、オーストラリアでのゴルフ旅を終えた上杉に、新年初レッスン!

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文学少年だった上杉が語る
ゴルフと文学の深い関係!?

中井 お帰りなさい、上杉さん。オーストラリア帰りだけあって、よく日焼けしてますね。

上杉 いや~、素晴らしかったですね、オーストラリアは。季節は夏。目に痛いほどのきらめく緑の芝生から、あくまでも純白のボールを、どこまでも青い空へと打ち出していく。まあ、どういうわけかほとんどがグリーンよりも右方向に飛んでいきましたが……。

中井 なるほど。景色は最高、ゴルフは右へのプッシュアウトばっかりでイマイチだった、と。

上杉 twitterでもあるまいし、そうなんでも要約すればいいってもんじゃありません。一部報道によるとこの連載は史上初の文学的ゴルフレッスンと呼ばれているとかいないとか。やっぱり文学ですよ、文学。

中井 この連載が文学的評価を得ているという事実はありませんが、珍しいですね、上杉さんが「文学」なんて言い出すなんて。

上杉 私はもともと、中高校生時代に岩波文庫を読み漁った文学少年ですからね。実は、ジャーナリストを休業して時間に余裕ができたので、当時夢中になった文学作品を再読しているんです。

中井 へ~、それは羨ましい。

上杉 ゴルフも、いわば一篇の文学作品のようなものです。ミスショットをすればペナルティが与えられる。つまり、「罪と罰」。ナイスショットがディボットにつかまれば、カフカの「変身」の主人公、グレーゴル・ザムザのような実存主義的不条理感に思い悩み、それでもあたかもスタンダールの「赤と黒」の主人公、ジュリアン・ソレルのように野心的にバーディを狙っていく――まさに、文学です。

中井 なんか、無理矢理こじつけている感じがするんですけど……。

上杉 分かっていませんね。ジュリアン・ソレルのように無謀な攻め方を選択すると、ゴルフでも最後には破滅が訪れる。文学に描かれる人間の姿は、まさにゴルフ場におけるゴルファーの姿だと言えます。

中井 うーん、なるほど。

上杉 ミステリの女王、アガサ・クリスティには「ゴルフ場殺人事件」という“そのまんま”なタイトルの作品もありますしー、「トム・ソーヤーの冒険」のマーク・トウェインもゴルフにはまっていた。日本でも、「野火」で有名な大岡昇平や、あの「堕落論」の坂口安吾もゴルフに関してあれこれ書いています。ゴルフと文学って、冗談抜きに深い関係があるんですよ。

中井 へえ~、それは知らなかった。さすが、「元・ジャーナリスト」で「現・ゴルフジャーナリスト」ですね。

上杉 で、なんの話でしたっけ?

中井 「上杉さんがオーストラリアで右へのプッシュアウトばかり出て困った」、という話です。

上杉 まったく文学性のないテーマですね……。しかしながら、これは大問題。さっそくレッスンしてください。やっぱり、文学よりもスコアです。

中井 ……あっさり前言を翻しましたね。まあいいや。上杉さんが右プッシュしか出ないならば、原因はひとつしかありません。それは、トップから手が先に動いて「打ちにいってしまう」からです。

上杉 え~、全然そんな意識ないんですけど。

中井 これは意識しなくてもそうなっちゃうんですよ。「体で打つ」と頭では分かっていても、ついつい手が先に動いてしまう……。

上杉 うーん、またしても実存主義的な不条理感を覚えます。ああ、私がオーストラリアで打ったプッシュアウトは、太陽のせいだったのか。

中井 太陽は悪くありません。手です、手。

手打ちでプッシュアウトに悩む人は
「左脚挙げ素振り」をやってみよう!

050プッシュアウトを直すには、テークバックで右足を浮かせ、トップで着地させる素振りが有効だ
中井 とにかく、頭で分かってもダメならば、体に覚え込ませるしかないんです。そのためには「素振り」のやり方を変えることです。

上杉 どういうふうに?

中井 簡単です。テークバックをとるときに、左足を軽く地面から浮かせるだけ。そして、トップの位置まできたら、浮かせた左足を着地させることで切り返す。これを、何度も何度も繰り返すんです。ちょっとやってもらってもいいですか?

上杉 はい。こんな感じ?

中井 あ、王貞治さんの「一本足打法」みたいに上げる必要はありません。

上杉 じゃあ、こんな感じ?

中井 えーと、イチロー選手の「振り子打法」みたいに上げる必要もありません。

上杉 じゃあどうしたらいいんですかっ。中井さんが足を上げろっていうから上げたのに……。

中井 すねないでください。ほんとに少しでいいんですよ。そうだなあ、大体10センチとか、それくらいで大丈夫です。それで、トップの位置にきたら、10センチポンと下ろす。それだけです。

上杉 でも、これになんの意味があるんですか?

中井 ひとつは下半身リードを身に付けるため。上杉さんをはじめほとんどのアマチュアゴルファー、そしてプロゴルファーでも調子が悪くなると、トップから手で切り返してしまうんです。その瞬間、クラブは本来あるべき軌道から外れ、ナイスショットが原理的に打てない状態になってしまう。それを避けるのが第一の目的です。

上杉 第一、ということは第二の目的もあるんですか?

中井 「体の面を変えない」ということです。

上杉 体の面? 「フェースの面」じゃなくてですか。

中井 フェースの面=体の面と思ってください。前に、正しくアプローチすると、フォローでシャフトが地面と平行になったとき、トウは上を向くとお伝えしたのを覚えていますか?

上杉 いいえ、覚えていません。

中井 そうですか……若きウェルテルもビックリの悩ましい返答をありがとうございます。とにかく、手を使わずに体で振った場合、フェース面と体の面は、トップとフィニッシュを除いてほぼ連動します。ですから、インパクトで体の正面にクラブがあれば、フェース面もスクェアに当たるはずなんです。

上杉 分かった! じゃあ、右にプッシュアウトするってことは、インパクトで体が正面を向いてないってことですね。

中井 その通りです。手で打ちにいった結果、体ばかりが先行して、かえって振り遅れの状態になり、フェースは開く。右に飛ぶのは軌道の問題だと思っている人が多いですが、実際はフェースが開いて当たっているから、右にプッシュアウトするんです。それに対して、下半身から切り返して体で振れば、フェース面は体の面とリンクし、ナイスショットになるんです。

上杉 そうか~。やっぱり、下半身リードが大切なんですね。

中井 ええ。この素振りをやってもらえれば、その感覚が肌で理解できると思います。まあ、「下半身リード」という言葉は誤解されやすいから、実はあまり積極的に使いたくないんですけどね……。

上杉 大丈夫です。文学作品は、100年の時を経ないと、本当の意味では理解されません。中井プロのレッスンもきっと理解されますよ、100年後には――。

中井 その頃にはこの世に存在しない気がするんですけど……。

 
というわけで今週はドリルであり、同時にルーティンにもなる「左脚上げ素振り」をご紹介。手打ちに悩む人は、ふだんからこの素振りを意識すると今年一年「大吉」です。来週も、目指せ、マスターズ!



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