僕のマグノリアレーン

2011.12.15

【第47回】
「絶不調」と「絶好調」

僕のマグノリアレーン

マスターズを目指す! そう宣言したジャーナリスト・上杉隆と、それをサポートするプロゴルファー・中井学の二人三脚レッスンドキュメント「僕マグ」。ここまで順調に上達してきた上杉だが、最近どうも不調のようで……。

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手打ちになるの原因は
「勇気」がないからだ!

上杉 いや~、中畑清さんの横浜DeNAベイスターズの監督就任には驚きましたね~。

中井 中畑さんといえば、5月に上杉さんが主催したチャリティゴルフコンペ「Save The IBARAKI」にも参加してくれましたよね。

上杉 そうですよ。そして、私がマスターズから持ち帰ったオーガスタのレプリカフラッグに、被災地へ復興のメッセージを書いてくれた4人のうちのひとりです。

中井 あとはたしか、松山英樹くん、孫正義さん、堀江貴文さんでしたっけ。

上杉 中畑さんは監督就任。松山くんはプロの試合で優勝。孫オーナーはソフトバンクホークスが日本シリーズ制覇、そして堀江さんは長野の刑務所に収監――。あのフラッグは「幸福の黄色いフラッグ」だったようですね。

中井 堀江さんは違うような気もしますが…(汗)。まぁ、言われてみると大体はそうですね。それにしても、中畑監督には現役時代同様、絶好調! という感じで頑張ってもらいたいです。

上杉 問題はそこですよ。中畑さんが文字通り「絶好調」なのとは裏腹に、私のゴルフは「絶不調」です。

中井 うーん、たしかに最近の上杉さんのスウィングは、正面から見て、グリップエンドがインパクト直後にターゲットラインの後ろを向く傾向があります。これは、手打ちスウィングになっている証拠です。

上杉 いきなりですね。どういうことでしょうか。

中井 繰り返しになってしまいますが、僕の考える理想のスウィングは、手は動かすのではなく「動かされる」もの。みぞおちを左右に向けることに伴う骨盤の旋回と、腰椎・胸椎の捻転による動きでスウィングするというもの。手は、遠心力によってコック(手首の親指方向への動き)とローテート(前腕の回旋運動)というふたつの動きをしますが、これは無意識の動き。ともかく、このようにスウィングしたとき、インパクト前後でグリップエンドは体の中心を指すはずなんです。

上杉 はあ。

中井 正面から見てフォローでグリップエンドがターゲットの逆方向を指しているということは、手先でクラブをひねっている証拠。つまり、「上杉さんはクラブをひねっている。クラブをひねるとグリップエンドが後ろを向く。グリップエンドが後ろを向くのは手打ちである。ゆえに上杉さんは手打ちである」となり、論理学の祖・アリストテレスもびっくりの、「上杉さん手打ち仮説」が証明されるわけです。

上杉 なるほど。「中井プロのギャグはスベる」「中井プロは頻繁にギャグをいう」ゆえに「中井プロは頻繁にスベる」というのと似たような三段論法ですね。

中井 なっ……。まあ、仕方ありません。大阪で生まれた男の宿命です。そんなことより、ではなぜ手打ちになってしまうのか、です。僕が言うまでもなく、上杉さんも、この連載の読者のみなさんも、「手打ちはダメ」って分かっているんです。なのになぜ、手で打ってしまうのか?

上杉 なんでだろう。たしかに、好き好んで手打ちをしているわけじゃないんですよね。読売新聞記者との諍いもいつの間にか手打ちになっていましたし……。

中井 ゴルフにメディア間の紛争を持ち込まないでください。それよりも、暗闇の中にいることを想像してください。たとえば真夜中に突然起きた停電で、視界がゼロになったとします。そのとき人間は手を前に出し、手先で周囲の状況を確認しようとしますよね。つまり、怖いとき、不安なとき、しびれるとき、人は手を使うんです。

上杉 なるほど~。でも、ゴルフと関係あるんですか? その話。

中井 大アリです。「手を使わずに体で打つ」のがなぜ難しいのか。それはOBや池に入れるのが「怖いから」なんです。怖いから、ついつい器用な手を使ってしまい、それがミスを生む。ここは極めて重要なポイントですが、手打ちにならないために必要なのは技術ではなく「勇気」。「勇気を持って、体で振ろう!」これを僕は声を大にして言いたい。

上杉 私が代表を務める自由報道協会のモットーである、「敬意を持って批判せよ」みたいですね。

中井 そうです。ジャーナリストは敬意を持って批判せよ。ゴルファーは、勇気を持って体で振ろう。これを忘れてほしくありません。「人間の偉大さは、恐怖に耐える誇り高き姿にある」と、古代のギリシャ人著述家・プルタルコスも言っています。「スウィングの偉大さは、OBの恐怖に耐えて体で振る姿にある」と言ってもいいでしょう。

上杉 プルタルコスもゴルフをしていたんですか。なんか、今日は古代ギリシャネタが多いですね。

中井 古代ギリシャでのゴルフは確認されていません。なにより、現代のギリシャのように我が家の財政が破綻しないように、必死に仕事をしようという決意の表れかもしれません。どうでもいいですけど。

アオリ打ちを抑えるには
低い球を打つ意識で振ろう!

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正面から見たとき、腕を使わないとフォローでグリップエンドは体の中心を指し(左)、腕を使うとターゲット逆方向を指す(右)

上杉 しかし、「勇気」とか「恐怖」といった一種哲学的な人間の内面の話ばっかりではレッスン記事として成立しないのも事実。たとえば「スコア30台を出す」という具体的目標を達成するための、具体的なアドバイスが必要だと指摘せざるを得ません。

中井 なるほど、ヘレニズム哲学の学派「ストア派」ならぬ「スコア派」の教えが必要だ、というわけですね?

上杉 やっぱり滑りますね、中井プロのギャグは。その会話に、無理やり哲学を滑り込ませようとするあまり、かえって衒学的になり、逆効果となっています。早く具体的に教えてください。

中井 悲しいけれど、了解です。では、僕自身がやっている「不調脱出法」をお伝えします。今の上杉さんもそうなんですが、僕も、調子が悪くなると「アオリ打ち」になりやすいんです。

上杉 なるほど、中井プロと私は同レベルだ、と言いたいわけですね?

中井 あえてスルーします。そして、アオリ打ちを直したい場合、ひじの位置がどう、脚の動きがどう、肩のひねりがどうと言い出したら、これはもうキリがありません。なので、僕は自分が不調になったら、「低い球を打つ」このひとつの意識だけを一日中持ち続けるようにしています。

上杉 低い球を打つ。それなら私が高校時代、冬の河川敷ゴルフ場でいつもやっていたことじゃないですか。そんなことでこの深刻な不調から脱せるとは到底思えません。

中井 論より証拠。ちょうどティグラウンドが空きました。ためしに、思い切り低い球を打つ意識で振ってみてください。もちろん、「勇気を持って体で振る」のが前提です。

上杉 やってみましょう。とりゃっ(と、打つ)。

中井 おーっ。軽いドローでキャリーが約240ヤード。理想的なショットです。

上杉 でも、おかしいですね。球が予想以上に上がってしまいました。「低い球を打つ」のは失敗です。まあ、ナイスショットだったからいいけど……。

中井 ああ、まさしくそれでいいんですよ。アオリ打ちになり過ぎていたのを矯正するための意識ですから。アオリ打ちのままでは低い球は絶対に打てませんからね。

上杉 そういうもんですか。

中井 そういうもんです。さて、読者のみなさま。普段からアオリ打ち傾向のある人は低い球、逆に打ち込む意識が強過ぎる人、球筋でいえば左に出て右に曲がる球や、テンプラが出やすいという人は、高い球を打つ意識をラウンド中に持ち続けてみてください。その意識だけでスウィングが変化し、不調からの脱出の糸口をつかめるはずです。

上杉 いや~、来年に向けて、希望が出てきましたね。マスターズの開催される4月までには、中畑さんばりに「絶好調!」といえる状態に持っていけそうです。

中井 アレ? 私の記憶がたしかならば、上杉さんにはマスターズ出場権がないはずですが……。

上杉 分かっていませんね、中井プロ。マスターズに取材に行った際、プレスは抽選でオーガスタをラウンドできるんですよ。確率は低いですけど。楽しみだな~。絶対当てますよ、ラウンド権を!

中井 実力でラウンドするんじゃないんだ……。

 
というわけで今週は、あくまで「低い球を打つコツ」ではなく「アオリ打ちを抑える秘訣」のお話でした。意識って大切! 一日続ければ、必ずスウィングが矯正されます。来週も、目指せ、マスターズ!



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