僕のマグノリアレーン

2011.12.08

【第46回】
バーディパットの「未来予想図」

僕のマグノリアレーン

「マスターズに出る!」そう宣言したジャーナリスト・上杉隆と、それをサポートするプロゴルファー・中井学。アラフォーふたりの二人三脚ゴルフレッスン、今週は「セベ追悼コンペ」の現場からレポートします!

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「セベ追悼コンペ」で連覇を狙う上杉。
しかし、序盤からミスが続く……。

上杉 ……それではみなさん、今日は怪我のないように、楽しくプレーしましょう!

一同 おーっ(拍手)。

中井 朝のあいさつ、お疲れさまでした。さて、そろそろスタート時間。1番ティグラウンドに向かいましょう。

上杉 そうしましょう。しかし、セベ・バレステロスGCを舞台とした「第2回セベ追悼コンペ」に、今回も50名近い参加者が集まって、うれしいですね。えーっと、ちなみにこのコンペ、前回は誰が優勝したんでしたっけ?

中井 はいはい、上杉さんですよね。過去の栄光にいつまでも浸ってないで、さっさとティショットを打ってください。
<15分後>
上杉 ぎゃ~っ! ボギーパットがカップに蹴られたっ。出だしから痛い、痛すぎるダボです。

中井 まあ、仕方ないですよ。この季節のスタートホールはある程度叩いても仕方ない。気持ちを切り替えて次のホールへ行きましょう。
<さらに15分後>
上杉 ぐわ~っ! 3メートルのバーティチャンスから3パット! 痛い、あまりにも痛いボギーです。

中井 まあ、仕方ない……とは言えませんね今回の場合は。今のは絶対に打ってはいけないボギーです。

上杉 そんなことは分かっています。よ~し、次のホールで取り返すしかありません。早く次のホールにいきましょう。

中井 残念ながら、そのような心持ちで臨んでは、次のホールもボギー確定です。このままでは“連覇”の望みはかなり薄いと言わざるを得ません。

上杉 なんということを言うんですか、中井プロ。この薄情者っ。

中井 私は奈良の山奥育ち。東大寺の大仏のように情けの厚い男です。今のボギー、原因が技術的なミスならいいんです。それは、練習や経験を積むことで修正することができますから。しかし、今のような“心のミス”はそのままにしておいてはいけません。

上杉 心のミス。中部銀次郎さんのようなことを言う人ですね。さては、そっちの路線で売り出そうという魂胆ですか。まあいいや、それで、どういうことですか?

中井 その前に上杉さん、3メートルにオンさせた瞬間、なにを考えましたか?

上杉 出だしがダボですからね。当然、それを取り返すために、是が非でも入れたいと思いました。分かってるんですよ。どうせ「そのように、バーディが欲しいという“欲”がスコアを崩す元凶なのです、上杉さん」とか言いたいんでしょう、中井プロは。

中井 フフフ、甘いですね。僕が言いたいのはそこではありません。上杉さんがおっしゃった欲うんぬんの話は、換言すれば、「タッチが強過ぎた」ということですからね。むしろ技術的なミスです。今のダボは、「確率計算」と「コース観察」、このふたつのミスに原因があります。

上杉 確率って、結局バーディを狙いにいったことがミス、ってことですよね。

中井 バーディを狙うことがミスなのではなくて、「バーディ」しか頭になかったことがミスなんですよ。いいですか、セカンドを3メートルにオンさせた瞬間、上杉さんには少なくとも3つの未来が予想できたはずなんです。

上杉 「未来予想図3(スリー)」というわけですね。

中井 ええ。そして上杉さんのバーディというドリームはカム・トゥルーしなかったわけですが……ってそんなことはどうでもいいんです。さて、僕のいう「3つの未来」とはごくごく簡単。つまりバーディを獲る未来、パーセーブする未来、ボギーを叩く未来です。
上杉 はあ。

中井 このとき、それぞれの確率は絶対に33.3%ずつではありません。そして、この確率は“計算”ひとつで変化させることが可能です。

上杉 よく分かりません。

「確率計算」と「コース観察」で
「未来予想図」を描こう!

046
上杉は「心のミス」でバーディチャンスをボギーにしてしまった……
中井 3メートルにオン。しかし、ラインはピン右奥の下って曲がるライン。さすがに4パットのダボはないとして、バーディの確率は10%。パーが60%、ボギーが30%。だいたいこれくらいが平常心で臨んだ場合のスコアの確率分布だったわけです。にも関わらず、無理に狙いにいった瞬間、バーディの確率も5%くらいは増えますが、ボギーの確率は大幅に上昇、つまり、バーディ15%、パー
30%、ボギー55%くらいに確率の割合が変化してしまったんです。

上杉 出馬は「2万%ない」と言っていた橋下徹さんが大阪府知事になり、今度は大阪市長になる時代ですからね。そんな確率論を語ったところで、現実に意味があるのかという疑念が湧くのですが……。

中井 府知事時代の橋下氏の支持率よりも低いスコアを出そうと思ったら、大ありです。「絶対にボギーは打たない」と考えた場合、必然的に距離を合わせるパットになりますから、パーの確率は70%程度まで上昇、そして、ここが重要なのですがバーディの確率も15%と変わらないんです。単純に、ボギーの確率だけを15%程度まで減らすことができたはずなんです。

上杉 なんか、マルチ商法の臭いすら漂う、都合のいい理論ですね。にわかには信じられません。

中井 同じ3メートルでも上りのラインだったら、確率はここまで変化しませんし、狙いにいくメリットのほうが大きくなります。しかし、今のは下りでしたからね。距離を合わせることに集中すれば、横からコロンと入ることもありますから、確率としては変わらないんです。この計算をしなかったのが、ひとつめのミス。そして、もうひとつは「観察ミス」。上杉さん、セカンドをオンさせた瞬間にカートに乗り込みましたよね。あれもミスです。

上杉 カートに乗ったのがミス? それはおかしい。セカンドを打った瞬間、私はグリーンにしか用はなくなりました。カートがダメだというのならば、ゴルフ場にいるほとんどのプレイヤーがミスしてるじゃないですか。

中井 ええ。これは上杉さんに限らず、ゴルフ場にいるアマチュアのほぼ全員がミスをしています。

上杉 あらま。ずいぶん大きなことを言う人ですね。

中井 橋下徹氏の大阪都構想ばりの確信を持って断言できます。上杉さん、なぜマスターズで選手はカートに乗らず、歩いてラウンドすると思いますか?

上杉 マスターズに限らず、プロの試合では、ということですよね。タイガーやマキロイ、遼くんがカートに乗っていたら、絵にならないからでしょう。

中井 それもあります。しかし、プロにとってカートに乗るメリットはひとつもないんです。アマチュアの人も、スロープレーにならない範囲で、せめてグリーン周りだけはカートに乗らないでいただきたい。

上杉 どうしてでしょうか。

中井 カートはほぼ100%、グリーンよりも高い位置を走ります。これだと、グリーン全体の傾斜がぜんぜん分からないんですよ。

上杉 思い出しました。そういえば、かつてトップアマの田村尚之さんも、まったく同じことを口にしていたような気がします。

中井 そうです。プロも、歩きながらたくさんの情報を収集しているんです。はっきりいって、グリーンに歩いて到達した僕の感想としては、上杉さんのラインは「かなりの下り」という印象でした。しかし、カートに乗っていた上杉さんの感覚は「やや下り」程度ではなかったのかと思います。

上杉 いいえ。マスターズの16番ホールでピン奥につけてしまったときの気持ちでパッティングしたつもりでしたが――。

中井 だとしたら、カップを通り過ぎたボールがぐんぐん転がっていくのを見て、「あらっ、こんなに下ってんの!」という発言は出なかったはずです。

上杉 お詫びして訂正します。

中井 というわけで、今のスリーパットは、「確率計算」と「コース観察」。技術以前に心の中で解決しておくべきふたつを怠った結果、起こったものだったのです。

上杉 そうだったのか~。つまり、私の技術にはなんの問題もないということですね。よし、では残り7ホール、今教わったことを忘れずにプレーしてみます!
<2時間後――>
上杉 ……中井プロ!、 「確率計算」と「コース観察」を心がけてラウンドしたにも関わらず、ハーフで「48」も打ってしまったのですが――。

中井 どうやら“心”の問題ではなかったようですね……。

上杉 はい。教える人の問題でしたね。

中井 教わる人の問題でしょ!

 
というわけでお互いに責任を擦り付け合う展開で終わった「僕マグ」、いかがでしたでしょうか? みなさんもコースでは確率計算とコース観察を忘れずに! スコアは自己責任! 来週も、目指せ、マスターズ!



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