僕のマグノリアレーン

2011.12.02

【第45回】
「真実のターゲットライン」

僕のマグノリアレーン

マスターズを目指す! そう宣言したジャーナリスト・上杉隆と、それをサポートする二人三脚ゴルフレッスンドキュメント、「僕マグ」。今週もオジサンふたりが夢舞台目指して奮闘しておりますが――。

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ジャーナリスト休業を宣言した上杉が
ティグラウンドで事件に巻き込まれた!?

中井 先週、ニコニコ生放送で放映された特番、「さようなら! ジャーナリスト上杉隆」拝見しましたよ。

上杉 いや~、すごかったですね。来場者(視聴者)数が3万人を超え、大いに盛り上がりました。

中井 ご覧になっていない方に説明すると、上杉さんのジャーナリスト「休業」宣言を受け、メディアジャーナリストの津田大介さん、作家の室井佑月さんたちがその真意を聞く、という趣旨でしたが……。

上杉 ええ。休業後は「ゴルフ作家」として活動する旨、しっかり説明してきました。なにしろ私には「放課後ゴルフ倶楽部」という素晴らしいゴルフの著作もありますからね。

中井 思いっきり「作家の前で失礼だ」っていうコメントが来てましたけどね……。

上杉 その程度の批判は序の口です。「惜しい人を亡くした」とか「ついに逮捕か」とか「ご愁傷様」といったコメントも多くきましたよ……まったく、ネットの匿名社会はおそろしいですね!

中井 まあ、有名税ですね。ともあれ、ジャーナリストを養成する学校を作る、とか、被災地支援にさらに深く取り組むといった表明は素晴らしいと思いました。ところで、前々から気になっていたんですが、上杉さんが休業したらこの連載はどうなっちゃうんでしょうか。

上杉 愚問です。

中井 というと?

上杉 私は、ジャーナリストである前にひとりのゴルファー。私がゴルファーである限り、この連載は続きます。たとえほかの仕事を全部失おうと、ゴルフだけは私の人生そのものですから。たぶん……!

中井 「たぶん」なんですね……。読者のみなさん、この連載はひとまず来年も続きそうなのでよろしくお願いします。

上杉 ということで、今週もレッスンをお願いします。

中井 よし、早速コースにいきましょう!

<とあるパー4のティグラウンド――>

中井 さて、右ドッグレッグのパー4にやってきました。左はOBですから、右の山すそ狙いで打つのがいいでしょう。

上杉 お安いご用です。ティグラウンドの右目にティアップして、直線的に狙っていきます。弾道はズバリ、軽めのドロー。手を使わずにみぞおちを左右に向け、体全体でしっかり球をつかまえていこうと思います。

中井 上杉さん……っ(涙)。

上杉 どうしたんですか、中井プロ、そんな潤んだ瞳をして。かつて、松田聖子さんの潤んだ瞳はダイヤモンドでしたが、30代後半の男性の瞳が潤んでいても嬉しくもなんともありません。

中井 失礼しました。珍しく上杉さんが以前教えたことをしっかりと覚えていてくれて、感動してしまったんです。ふだんは教えてもすぐ忘れてしまうのに。

上杉 なにを言っているんですか、中井プロ。まずターゲットを決め、次に球筋を思い描き、最後にスウィングをイメージする。ショットマネジメントの常識です。

中井 なんか、僕が教えたことをそのまま喋っている感じがするのですが……。

上杉 事実誤認です。まあいいや、ともあれ打ちます(と、打つ)。ああっ、チーピンだっ。

中井 あちゃ~、これは“即死”ですね。文句なし、OBです。

上杉 「あちゃ~」じゃないですよ。教わった通りに完璧にショットマネジメントしたのに、OB。この責任、どうとってくれるんですかっ。

中井 その前に上杉さん、「右の山すそ狙い」をするために、どのような準備をしましたか?

上杉 論点をずらして責任を回避するつもりですね……。まるで野田内閣の閣僚たちのようだ。いいでしょう、まずティグラウンドの右目にティアップして、山すそに対して直線的にターゲットラインを設定。そして、そのライン上の目印に対してスクェアにアドレス。まさに反論不可能、完璧なセットアップです。

中井 なるほど、謎はすべて解けました。犯人は、「ターゲットライン上の目印」だっ。

上杉 突然どうしちゃったんですか、中井プロ。“探偵”みたいな口調になって。なにか新しい遊びですか、それ?

中井 ご説明しましょう、この「上杉隆チーピン左OB事件」の真相を……。

上杉 なんか、よく分かりませんが、どうぞ。

ターゲットライン上に目印を
見つけるのは"誤った常識"だ!

045目印を地面に設定するか、空中に設定するかで、スウィングは変わってしまうという中井プロ
中井 ターゲットライン上に目印を見つけ、そこ目がけてボールを打ち出す。これは、パット時には実に有効な方法です。しかし、ショット時には“やってはいけない”ことなんです。

上杉 えっ。でも、ライン上に目印を見つけ、そこに打ち出すのはゴルフ界の常識のひとつですよね。

中井 たしかに。しかし、それは僕がこの連載で数多く指摘してきた「誤った常識」のひとつです。まさに常識の盲点をついた、恐るべき犯行と言えますね。上杉さん、ドライバーで打たれたボールは、どこに打ち出されますか?

上杉 そりゃ、空中でしょう。

中井 そう。よほどのミスショットでない限り、打ち出されたボールがいきなり地面を転がることはありません。ポイントはここです。パットではボールが地面を転がりますが、ドライバーでは地面を転がることはない。これが、パットでは地面に目印を見つけることが有効で、ドライバーでは逆効果になる理由です。

上杉 イマイチ意味がわかりません。要するに、イメージの問題ということでしょうか。

中井 いいえ、違うんです。よし、犯行現場を再現してみましょう。上杉さん、ちょっとアドレスしてみてください。

上杉 はい。

中井 では、アドレス時のターゲットライン上の1.5メートル先に、もう一個のボールを目印として置きます。これが、おおよその上杉さんのターゲットのつくり方ですよね?

上杉 そうです。

中井 実際の打球は、先ほども言ったように地面を転がることはありません。ドライバーの打ち出し角は約13度。地面上の目印までの距離は1.5メートル。ここで三角関数が登場します。

上杉 サイン、コサイン、タンジェントという数学の定理ですね。中学校の教室ではなく、ゴルフ場で耳にするとは思いませんでした。

中井 打ち出し角度が13度の場合のタンジェントの値は約「0.2309」。その数値を元に計算すると――実際にボールが通過する場所は、目印を置いた地点からおよそ35センチ上になります。つまり、この地点を通るラインが、“真実のターゲットライン”なんです。上杉さん、この真実のターゲットラインをイメージして、もう一度打ってみてください。

上杉 おかしいですね。イメージするのが地面上の線か、空中にある線かの違いだけなのに、ターゲットラインが右方向に感じます。
中井 人間の目の機能上、必ずそう感じます。真実のターゲットラインは、わずかに右斜め方向に見える。それでスクェアなんです。さあ、どうぞ!

上杉 よし、打ちます(と、打つ)。おお~、我ながら今のはナイスショットだ。まさに狙い通り、右の山すそに真っすぐ出たボールが、落ち際で軽くドローしました。

中井 OKです。ターゲットラインを地面にイメージするか、空中にイメージするか。それだけでスウィングは大きく変わります。簡単にいえば、地面にあるターゲットラインに対して振ると、「手を返すスウィング」になりやすく、空中、すなわち立体的にターゲットラインをイメージすると、「体のローテーションで振るスウィング」になりやすくなるんです。

上杉 たしかに、立体的にターゲットラインをイメージしたほうが体を使って振りやすく感じます。なるほど、さっきのチーピンは、地面に目印を見つけてターゲットラインを描いたせいで、手を返すスウィングになっていたわけか。

中井 そうです。それが、「ターゲットライン上の目印」が犯人だと言った理由です。

上杉 うーん、納得。しかし、今回は中井プロにしては珍しく知的なレッスンでしたね。

中井 明らかに「珍しく」が余計です、上杉さん。ゴルフに出会う前の僕は、それなりに優等生だったんです。ゴルフと出会う前はね……。

上杉 私と同じですね……。まあいいじゃないですか、ゴルフのない人生なんて、味気ないものです。

中井 いいこと言いますね、上杉さん!(涙)

上杉 あ、また瞳がダイヤモンド……。

 
というわけで今週は地味にゴルフ界の新しい常識になりそうな、すごいテーマでございました! 本当にスウィングが変わりますので是非、お試しを。驚きます。来週も、目指せ、マスターズ!



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