僕のマグノリアレーン

2011.10.06

【第37回】
ご用心! ショートを誘う「秋の罠」

僕のマグノリアレーン

マスターズを目指す! そう宣言したジャーナリスト・上杉隆と、巻き込まれる形でそれをサポートすることになったプロゴルファー・中井学。異色タッグがお届けする、「くだらないけど、ためになる」夢のレッスンドキュメントです。

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サンデーバックナインに
仕掛けられている罠とは?

中井 いやあ、すっかり秋めいてきましたねぇ。

上杉 はぁ……。

中井 どうしたんですか、珍しくため息なんてついて。

上杉 どうしたもこうしたもありませんよ。秋がはじまっていいことなんてひとつもありません。あぁ、哀しみの秋、また落ち葉が舞っていくのだろう。

中井 上杉さん、真夏はゴルフするのに暑過ぎるから、早く秋にならないかなあって言ってませんでしたっけ。

上杉 それは去年までの話です。私が現在、毎週月曜日に北海道文化放送の「U型テレビ」に生出演しているのはご存知ですか?

中井 ええ、もちろん。残念ながら、関東では見られませんが。

上杉 今年の春以降、番組出演に絡ませて、前日、あるいは放送当日の午前中に北海道でゴルフをするのが私の無上の喜びだったんです。秋になると、それが出来なくなっちゃうんです。ああ、どこまでも青い空、白い雲、緑に輝く洋芝、快適なスループレー、味噌ラーメンに、ジンギスカン……間もなくお別れかぁ。

中井 なるほど。いつものことながら実にワガママな理由です。しかも、味噌ラーメンにジンギスカンは秋でも楽しめますね、明らかに。さて、グリーンが空きましたよ。

上杉 残りは100ヤードくらいですね。先月、ハーフ2イーグルを達成したときと、ちょうど同じくらいの距離です。

中井 すっかり得意距離になりましたね。ここはアドバイスなしでいってみましょうか。

上杉 お任せください。パー5の3打目ですから、ここはオーガスタの13番をイメージして打ちます。(と、打つ)ああっ、ショートだっ。中井プロ、13番グリーン手前、数々のドラマを生んだクリークに、私もつかまってしまいました。

中井 ショット後までイメージするとは、さすがですね……。

上杉 同伴競技者のダスティン・ジョンソンは楽々と2オンに成功しているというのに、一気にダボのピンチです。中井プロ、イチかバチかのウォーターショットでパーを狙うか、あるいはドロップして4打目を乗せてボギーを確定させるか、どちらを選択すべきでしょうか?

中井 いい質問ですが、さすがにそこまでのイメージ力は現状では不要です。

上杉 そうですか。ちょっと楽しかったんですけど。

中井 それよりも、なぜ今のショットでショートしてしまったかを考えてみましょうか。

上杉 うーん、実はそれが分からないんですよ。スウィングにとくに問題はなかった気がしますし、インパクトの感触も必ずしも悪くはありませんでした。

中井 そうですね。たしかに、今のショット、スウィング自体に大きな問題はありませんでした。ゴルフ場の「秋の罠」にハマりましたね。

上杉 「秋の罠」。なんですか、それ。

中井 ちょっと、読者のみなさんも考えてみてください。ちなみにこの「罠」は、オーガスタにも仕掛けられています。ヒントはふたつ。ひとつは「秋」。そして、「サンデーバックナイン」です。

上杉 中井プロ、マスターズが開催されるのは毎年4月の第2週。アゼリアやゴールデンベルが咲き誇る、春真っ盛りです。日本の秋とはなんの関係もありません。

中井 それがあるんですよ。答えは、「逆光」です。今のショット、上杉さんの3打目は、沈みゆく太陽に向かって打つ、要するに完全な逆光となるショットでした。マスターズでも、サンデーバックナインでは太陽が大きく西に傾いた状態でショットを強いられますよね。当然、逆光のなかで打つ場面も出てくるはずです。

逆光に打ち勝つには、
ヒーローに変身だ!

037逆光の時は「逆光仮面になれ」と意味不明なアドバイスを繰り出した中井。その真意とは――
上杉 でも、逆光とショートとなんの関係があるんですか?

中井 日本アマ6勝を誇る伝説のアマチュア・中部銀次郎さんの言葉に「サンシャイン・アゲンスト」というものがあります。逆光のショットはなぜかショートしやすい。それを、向かい風の「アゲンスト」に似ていると喝破した言葉です。さすが、達人は言うことが違います。

上杉 ふーん。でも、なんで?

中井 上杉さんの今のショットは、普段よりもほんの少し、全体的にリズムが速かったんですよ。それが打ち急ぎにつながり、ほんのわずかにインパクトが薄くなった――。逆光は人間にとって不愉快な状態ですから、無意識のうちにリズムが速くなってしまうんです。

上杉 なるほど~。言われてみると、逆光のときはショートすることが多いかもしれません。

中井 ですよね。それを防ぐには――「逆光仮面」になるしかありません。

上杉 ……なにを言ってるんですか? 中井プロ、面白いじゃないですか。

中井 私はいたってマジメです。いいですか? 逆光仮面は極めてテンションの低いヒーローで……。

上杉 中井プロ、この時期は夏の疲れの出やすい時期。ゴルフ場は逃げません、今日のところは東京に帰ってゆっくり休んだほうが――。

中井 だから私は疲れていませんし、いつだって真剣勝負です。とにかく、ポイントはリズムなんです。逆光の不快さから逃れるために、ついついショット前のルーティンが速くなる。結果、スウィングリズムも速くなり、ミスにつながる。それを防ぐには、いつもよりテンションを下げ、ルーティンを意識的にゆっくり行って、ショットをする必要がある。つまり、逆光仮面に変身する必要があるんです。

上杉 なるほど。実に説得力がありますが、逆光仮面なしでも説明できる気がするのは気のせいでしょうか。

中井 気のせいに他なりません。秋のゴルフ場、そしてオーガスタのサンデーバックナイン。逆光のショットを強いられる場面では、逆光仮面を登場させる。このように意識付けしておくことで、無駄なミスを減らせるんです。注意しなくてはならないのは、ゆっくりにするのはあくまでルーティンだけで、スウィングリズムを変える意識は不要だという点。ルーティンをゆっくりにすることで、スウィングリズムは自然に適性の幅に落ち着きますから。さあ、打ってみてください! 逆光仮面となって!

上杉 うーん、ここまできたら致し方ありません。ルーティンをゆっくり行って――とりゃっ(打つ)。

中井 OK! ナイスオンですね。

上杉 素晴らしい。ほぼワンピンの位置につきました。

中井 ピンポジション、風向き、ライの状態には気を使っても、「光の向き」は意外と気にしないもの。1打の違いが天国と地獄を分かつオーガスタでは、そこまで気を使う必要が絶対にあります。ありがとう! 逆光仮面!

上杉 だから逆光仮面は必要ない気がするんですけど……。

 
というわけで、秋のゴルフのバックナインは、眩しいのをぐぐっとこらえてゆっくりルーティン。これがナイスショットのレシピです! 秋のベストシーズン、みなさまも良きゴルフの一日を。それではまた来週も、目指せ、マスターズ!



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