僕のマグノリアレーン

2011.09.22

【第35回】
魔女からの脱出

僕のマグノリアレーン

マスターズを目指す! そう宣言したジャーナリスト・上杉隆と、それをサポートするプロゴルファー・中井学。夢かうつつか、本気か冗談か、その辺が曖昧なまま突っ走る、二人三脚ゴルフレッスンドキュメント、今週は魔女の手をかいくぐる、脱出ドキュメント(!?)

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オーガスタの魔女からスコアを守る
「究極のヨコ出しショット」とは?

上杉 とりゃーっ!

中井 うわーっ、上杉さんのティショットが左の林に突っ込んだ!

上杉 なんか、先週とまったく同じ展開ですね……。

中井 ええ……。でも、先週は明らかなミスショットでしたが、今のはナイスショット。ただ、ちょっとつかまり過ぎましたね。

上杉 つかまり過ぎということは、クラブのせいじゃないですか。私はマルマンの「コンダクター」を愛用していますが、マルマンに勤務する高校時代の友人・吉田直毅に文句を言わないといけませんね、これは。

中井 吉田さんは、いや、クラブは悪くありません。上杉さん、最近ぐっとスウィングが良くなって、それに伴いヘッドスピードも上がっていますからね。以前ちょうどよかったスペックが、ちょっと物足りなく感じる時期になっているんだと思います。そもそも、そのクラブに変えて10ヤードくらい一気に飛距離が伸びたじゃないですか。

上杉 なるほど、あまりにも急激な私の上達っぷりに、クラブがついてきていない、というわけですね。

中井 実に同意したくない言い回しですが、結果的にはそうです。

上杉 たしかに、先日マルマンのフィッティングルームで測ったら、ヘッドスピード45.7メートル/秒を記録しましたからね、ふふふ。

中井 お~、それは凄い。去年の冬に測ったときは、40~41くらいでしたよね、たしか。ヘッドスピードが45を超えたら、立派な飛ばし屋です。

上杉 ええっ? 聞こえませんでした。僕が「なに屋」ですって? もう一回言ってください。「寿司屋」じゃなくて「ミヤネ屋」じゃなくて?

中井 ああ、もう面倒くさい。2打目地点に行きますよっ。

上杉 ちょっと、中井プロっ。今「なに屋」って言ったんですかーっ?
(2分後――)
上杉 ……うーん、実にもって先週と同じような状況ですね。

中井 ええ。ボールが木の下にあって、バックスウィングはとれるけど、フォローはとれない。しかも、目の前の木がスタイミーになってターゲットを直接狙えませんから、先週よりもタフな状況といえます。

上杉 まあ、私にとっては望むところ。先週教わったアイアンの「ハンドファーストインパクト」でもって、木の脇をすり抜け、セベ・バレステロスばりの勇気あふれるインテンショナルフックでグリーンを狙います。

中井 それは勇気ではなく無謀です。おとなしくヨコに出してください。

上杉 なんと! 先週は安易にヨコに出さずにグリーンを狙えと言ったのに……。これでは言っていることが真逆じゃないですか。まるで1年に1回首相が変わり、政策もその都度、二転三転するどこかの国の政府みたいです。中井プロ、それでは諸外国からの信頼は得られません。

中井 諸外国からの信頼よりも、今は目の前の一打です。目の前が開けていた先週の状況と違い、今週は目の前に木があります。フェアウェイからならともかく、林の中の悪いライからインテンショナルフックを狙うのは、あまりにも無謀。ここはヨコに出すの一手です。

上杉 でも、それじゃあボギー確定じゃないですか。

中井 いいえ、そうとは限りません。ヨコに出すといっても、ただ出すだけではありませんからね。

上杉 むむ、どういうことでしょう。

中井 とりあえず、一度ヨコに出してみてください。

上杉 はい。出しました。あ、ちょっと飛び過ぎた。

中井 上杉さん、次の3打目は、何番を使ってどういうショットを打ちますか?

上杉 うーん、ボール地点に行ってみないとなんとも言えません。

中井 それでは、ボギー確定です。

上杉 ちょっと、中井プロ! ボギー確定とは限らないと言ったりボギー確定と言ったり、いったいどっちなんですか。それとも、「直ちにボギーと決まったわけではない」といった曖昧な答弁で、私ならびに読者を煙に巻き、結果的にスコアに甚大な被害をもたらすおつもりか!

中井 違います。これが今週もっとも重要なポイントなのですが、「林の中からヨコに出すショット」は、「チップインを狙うアプローチ」と同じなんです。

上杉 出ましたね、中井プロの独特の表現が。どういうことですか?

中井 チップインを狙うアプローチでは、落としどころや球の高さ、落ちてから転がるラインなどを緻密にイメージしますよね? ヨコに出すだけのショットも、実はそれと同じくらいの集中力が必要ということです。具体的にいえば、まず「3打目をどの番手で打つか」「どんな球筋を打つか」「その球筋を打つにはどんなライがいいか」をしっかり決めてから打つ。これが、スコアを守る「究極
のヨコ出しショット」です。

上杉 またしても、どこか情けないネーミングですね……。

ヨコに出すときも「次で攻める」
ショットマネジメントをしよう!

035
林から脱出するショットこそ、フォローでトウが空を向く、ボディスウィングが大切だ!
中井 マスターズの中継を観ていれば分かりますが、世界最高の名手たちが集っている試合なのに、驚くほど「林の中」の映像が多いですよね。それだけ難しいコースだし、それだけプレッシャーを感じるコースだという証拠です。ならば、マスターズで林の中に入ったことを想定し、それに備えておかなくちゃ。ネーミングはともかくとして。

上杉 ネーミングならお任せください。やはりオーガスタらしく、「魔女からの脱出」、あるいは「アーメンアプローチ」なんてどうでしょうか?

中井 長くなります、その話?

上杉 いや、もう満足しました。それで、この状況ではどうやって打てばいいんでしょう。

中井 この状況からでは、どこに出しても200Y前後の距離が残ります。200Y前後ということは上杉さんの場合、使用する可能性があるのは3番アイアンか4番アイアン、あるいは5番ウッドですよね。このなかでいちばん得意なクラブはなんですか?

上杉 断然、5番ウッドですね。安定したドローが打てる、大得意なクラブです。

中井 5番ウッドで打つ距離は?

上杉 約210ヤードです。

中井 ということは、狙いは残り210ヤード地点。このボール位置からだと、やや右斜め方向ですね。また、フェアウェイの半分より先は、つま先下がりになってドローが打ちにくい。手前のラフの切れ目とフェアウェイセンターの間に絶対に止める、その意識で打ってください。その際、先週教えた通り、手先でクラブを動かさず、フォローでトウが空を向く、ボディを使ったスウィングを忘れないことも重要です。

上杉 了解。じゃ、打ちます(と、打つ)。
(6分40秒後――)
中井 うわーっ、惜しい!

上杉 くそーッ、あとほんのひと転がりでパーセーブだったのに! ……中井プロの言う通りに打ったのに、結局ボギーじゃないですか。

中井 でも、今のは「いいボギー」です。

上杉 中井プロ、ボギーにいいも悪いもありません。ゴルフは結果責任。スコアカードに記される「5」という数字、残されるのはそれだけです。

中井 ちょっと考えてみてください、2打目で確率の低い無理な攻めをしたとしても、よくてパー。悪い場合はダボより悪いスコアもありえましたよね?

上杉 そりゃそうです。

中井 無理に狙わずヨコに出し、なおかつ次に得意クラブで自分の持ち球が打てる地点に運んだことで、3打目でほぼオン。そこからパーパットが惜しくも入らずのOKボギー。このように、状況に応じたショットマネジメントをすることは、とくにオーガスタのような難コースでは絶対に必要なんです。

上杉 うーん、そう言われてみればそうですね。

中井 「つねに狙う」「つねにヨコに出す」はどちらも不正解。つねに、次のショット、さらにその次のショットまでをイメージしてショットマネジメントを組み立てる。そして、「ヨコに出す」ときも、「次で攻める」という意識を持ち続ける。これが、自分で自分のスコアを守る、唯一の方法なんですよ。

 
というわけで、マスターズを目指すには林からの脱出ひとつとってもおろそかにできないものであるなあ、というお話でした! 来週も、目指せ、マスターズ!



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