僕のマグノリアレーン

2011.09.01

【第32回】
打ち下ろしホールの、「灰色の方程式」

僕のマグノリアレーン

マスターズを目指す! そう宣言したジャーナリスト・上杉隆と、それをサポートするプロゴルファー・中井学。夢かうつつか、本気か冗談か、その辺が曖昧なまま突っ走る、二人三脚ゴルフレッスンドキュメントです。

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オーガスタの6番ホールを
攻略するためのテーマとは?

中井 ついに発売されましたね、上杉さん初のゴルフ本「放課後ゴルフ倶楽部」が。

上杉 ええ。私の中学・高校時代、ゴルフと出会い、24時間ゴルフのことしか考えていなかった青春時代をつづった、ノンフィクションです。まあ、今でも一日のうち約20時間はゴルフのことしか考えていませんが……。

中井 起きてる時間ほとんど全部じゃないスか。ともあれ、「放課後ゴルフ倶楽部」、私も読ませていただきましたが、実に面白い! まるで一篇の青春映画のような作品だと感じました。

上杉 10代に体験した出来事を、なにもかも、余すところなく書きましたからね。本はたくさん出してきましたが、ゴルフの本、しかも自伝的内容ということで、思い入れもひとしおです。

中井 さすが、ゴルフジャーナリストが本業とおっしゃるだけあります。

上杉 うーん、それはちょっと違うんですよね。

中井 ええっ? でも、twitterのプロフィールにも「ゴルフが本業、政治はときどきを目指しています」って書いてあるじゃないですか。そうはいっても、やっぱり政治取材が本業なんですかね。

上杉 分かっていませんね。「ゴルフが本業」だからといって、ゴルフについて取材したり、書いたりするのが本業というわけではありません。「ゴルフをする」。それが本業なんですよ。

中井 そういうことか! う~ん、それにしても、本業でお金を稼ぐのではなく、逆にお金を使う。これは珍しい。

上杉 その他の“副業”で得たお金で、“本業”でマイナスに稼ぐ。やっぱりゴルフはアンダーパー。つまりはそういうことです。

中井 よくわかりませんが、ある意味プロゴルファーより真剣にゴルフと向き合ってますね……。

上杉 そういうことです。というわけで、今週も本業の技をしっかりと磨きたいと思います。今週のテーマはなんですか?

中井 そうですね。ああ、ちょうどいい、今からプレーするこのホールをテーマにしましょう。

上杉 パー3ホールですね。距離は138Y。けっこう打ち下ろしだなぁ。

キャディさん 10Y、打ち下ろしを見てくださいね。

上杉 ということは、128Y打てばいいわけですね。普段の私なら8番アイアンの飛距離が140Y前後。打ち下ろしを10Y引いて……9番アイアンだとちょっと大きいですかね?

中井 まあ、とりあえず、打ってみてください。

上杉 了解です。ヒンジ&ホールドを意識して、しゃがむようにバックスウィングして、重力でクラブを落として……(と、打つ)。

中井 おー、ナイスショット!

上杉 ……うーん、ナイスショットしたのに、ショートしてしまいました。

中井 実にいい“前フリ”をありがとうございます。改めて、今週は「打ち下ろしホールでの距離感」がテーマです。

上杉 なるほど、そうきたか。あまり知られていませんが、オーガスタの6番ホールのパー3は打ち下ろしです。

中井 飛距離で劣る上杉さんは、パー3では確実にパーをセーブしなくてはマスターズで勝負になりませんからね。意外と重要なテーマです。

打ち下ろしのパー3は、
なぜショートするのか?

032ボールの落ちる「角度」に、打ち下ろしホールで飛距離を合わせる秘訣がある……!?
上杉 打ち下ろしって、今もそうですが、ショートする場合が多い気がするんですよね。

中井 なにが原因だと思いますか?

上杉 やっぱり、オーバーだけは避けたいという心理ですかね。打ち下ろしのパー3って、どうしても飛び過ぎるのが怖いから。

中井 はっきり言って、今のままでは「飛び過ぎる」可能性はゼロです。なぜなら、番手選びが間違っているからです。

上杉 なに~。でも、打ち下ろしで通常より短い番手を選ぶのは、ゴルフのセオリーのひとつです。まさか、いつもより大きい番手を持てとでも?

中井 それも、違います。「同じ番手を持つ」のが正解です。

上杉 なんで?

中井 その答えを言う前に、ヒントをひとつ。打ち下ろしのパー3で変化するのは、「飛距離」ではなく、「滞空時間」なんです。

上杉 中井プロ、私は理系専攻ではありませんが、あえてお教えしましょう。距離とは速度と時間の積で表されます。よって、滞空時間が伸びれば飛距離も伸びる。これは理の当然です。

中井 さすが、「黒い池上彰」を自称される上杉さん。分かりやすい解説をありがとうございます。しかしながら、この場合、ボールは放物線を描きながら、空中を移動しています。ココがポイントなんです。

上杉 むむ、どういうことですか?

中井 ティグラウンドと同じ高さにグリーンがある場合に比べ、打ち下ろしの場合、グリーンが低い位置にある分、より滞空時間が長くなり、ボールは遠くに着弾する。これが、「打ち下ろしは飛距離が伸びる」説の根拠ですよね?

上杉 はい。

中井 でも、グリーンの位置がティグラウンドより低い位置にあると、その分だけ落下角度が鋭角にもなるわけですよ。つまり、ティグラウンドとグリーンの高低差があればあるほど、打ち出されたボールはより垂直に近い角度で落下するんです。ゆえに、飛距離は変わらないんですよ。ほっとんど。

上杉 そういわれると、たしかにそんな気がしてきますね。

中井 もちろん、飛距離が200Yを超えるパー3の場合、話は別です。ロングアイアンやフェアウェイウッドで打つと、落下角度が鋭角になり、ランを含めて飛距離は伸びます。しかしながら、コース設計の常識として、200Yを超えて、なおかつ極端な打ち下ろしのパー3というのは、世界中を見渡してもほとんど存在しないはずです。

上杉 でも、セカンドショットが打ち下ろしになるパー4では、私はよくグリーンをオーバーするのですが……。それはどうしてですか?

中井 いい質問ですね~。

上杉 あっ、池上彰さんのパクリだ!

中井 ふふふ。灰色の池上彰とでも呼んでください。ともあれ、打ち下ろしのパー4と、打ち下ろしのパー3は、似た状況に見えてまったく条件が違います。セカンドが打ち下ろしになる場合、たいていボールは左足下がりのライにある。左足下がりだと、クラブのロフトが立った状態でインパクトを迎えますから、事実上、1~2番手上のクラブで打っているのと同じことになってしまうんです。だから、往々にして飛び過ぎる。

上杉 ああ、そういうことかぁ。パー3だと、平らなティグラウンドから打つから、ロフト通りの飛距離になるわけだ。

中井 そういうことです。とにかく、以上の話から、138Yのこのホール、打ち下ろしの10Yは計算する必要がありません。すなわち、持つべき番手は9番ではなく8番アイアン。さあ、もう一度打ってみてください! きっと、ベタピンにつきますよ。

上杉 OK! キャディさん、8番アイアンください。グリップよし、アドレスよし……とりゃ~(と、打つ)。

<ドスンッ!!>

中井 ……。

上杉 ……いてててて。

中井 ……思いっきり、ダフりましたね。

上杉 いかにも、思いっきりダフりました。

中井 番手選び、関係ないじゃないですか。

上杉 結果だけを見れば、そうなりますね。

中井 政治は結果責任と上杉さんはよくおっしゃいますが、ショットも結果責任です。ホールアウトしたら、即刻練習場に行きますよっ。

 
と、いうわけで上杉隆・著「放課後ゴルフ倶楽部」(ゴルフダイジェスト社)絶賛発売中です! 秋の夜長の読書のおともにぜひぜひ! 来週も目指せ! マスターズ!



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