僕のマグノリアレーン

2011.07.21

【第27回】
安心・安全アプローチ

僕のマグノリアレーン

マスターズを目指す! そう宣言したジャーナリスト・上杉隆と、それをサポートするプロゴルファー・中井学による二人三脚ゴルフレッスンドキュメント「僕のマグノリアレーン」、通称「僕マグ」。今週からは、ショートゲーム編がスタートします!

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「アプローチの安心・安全デマ」を
上杉は信じ込まされていた!

上杉 さて、先週は私が「セベ・バレステロス追悼コンペ」でドラコンを獲得した、というお話でしたが……。

中井 あの~、上杉さん。たしかにそれは事実ですが、あらすじの説明としてはちょっとおかしい気がします。

上杉 ああ、言われてみればそうですね。では改めて。先週は私が「セベ・バレステロス追悼コンペ」で見事優勝した、というお話でしたが……。

中井 それも事実だから反論できないのが無念で仕方ありません。

上杉 ははは、冗談ですよ、私に敗れて2位だった中井プロ。先週は、「クラブはタテではなくヨコに振る」という話でしたよね。それにしても残念でしたね、2位で。スタート前に、「2位じゃダメなんですか?」とでも言われたのでしょうか。

中井 ああ、もう、しつこい。いいかげん、レッスンを始めてもいいですか?

上杉 2位の人間が優勝者に教えることがあるというのであれば、お願いします。

中井 ああーッ(髪を掻きむしる)。競技を離れて気がつけば長い年月が経ち、久しぶりに「負ける」ことの悔しさを思い出させてくれてありがとうございます。あ、ちなみにグロススコアでは15打ほど勝っていることを読者の皆様にご報告しておきます。ともあれ、謙虚な気持ちでレッスンさせていただきましょう。

上杉 よろしくお願いします。

中井 さて、今週はさらなるスコアアップの秘訣をお教えします。ズバリ、ひさしぶりのショートゲームです。

上杉 うーん、たしかにそれは必要ですね。オーガスタではバーディを獲ることもさることながら、グリーンを外したときにいかにパーセーブできるかがポイントですから。

中井 ですよね。今週は、アプローチをレッスンします。それも、「絶対にダフらないアプローチ」です。

上杉 また~、大風呂敷をひろげちゃって! いいですか、中井プロ。「絶対」なんてことはこの世に存在しません。それとも中井プロは「アプローチ安全保安院」の方なのでしょうか。

中井 いえ、このアプローチは「安心・安全デマ」の類とはひと味違います。なぜなら、このアプローチは、原理的に「ダフることができない」からです。逆に、アプローチにおける「安心・安全デマ」ってなんだと思いますか?

上杉 「安心・安全デマ」の名付け親である私をもってしても、わかりません。

中井 正解は、「ボールを右足の前に置いて、クラブを上から打ちこむ」というものです。これは、紛れもなくアプローチの安心・安全デマ。なぜなら、こう構えるとかえってダフリの確率が高まるからです。

上杉 うーん、たしかに私もそのようなアプローチを試みて、ダフることがたまに、いや、往々にして、いや、ごく頻繁にあります。でも、右足寄りにおけばそれだけボールに当たりやすくなるわけですから、打ち方の問題というよりは、腕前の問題ではないでしょうか。

中井 ここは声を大にして言いたいところですが、それは大いなる勘違いです。いいですか、先週ぼくは、前傾して行う以上、スウィングは絶対的にタテ振りではなくヨコ振りになると断言しました。それは、アプローチにも言えることなんです。

上杉 たしかに、球を右足寄りにおくアプローチは、上から打ちこむわけですから、「タテ振り」のイメージですが……。

中井 ですよね。そもそも、ダフリはなぜ起こるのかを考えてみてください。それは、上から下にクラブを動かした結果、リーディングエッジが地面に刺さるから、なんです。そして、「右足の前にボールを置いて、上から打ちこむ」打ち方をしたら、クラブは上から下にしか動きません。それでは、ダフリが出やすくなって当たり前なんです。

上杉 うーん、たしかに。実際、マスターズを取材していても、そのような打ち方をしている選手はいません。

中井 それはマスターズに限りません。視聴環境のある方は、海外の試合の中継をアプローチだけに注目して観てもらいたいですね。ボールを右足の前に置いてアプローチをしている選手は、よほど特殊な状況を別にして、いないはずです。

上杉 うーん、ふだん政府や東電の「安心・安全デマ」を暴く立場にある私としたことが、見事に「アプローチの安心・安全デマ」を信じ込まされていました。

中井 まあ、仕方がありません。それではいよいよ「絶対にダフらないアプローチ」をお教えしましょう。狙いは30ヤード先のあの看板です。まずは普通に構えてください。クラブは上杉さんがいつも使っている58度のウェッジでOKです。

中井学が伝授する
絶対にダフらないアプローチとは?

027中井プロ考案の「絶対にダフらないアプローチ」を実践する上杉だったが……
上杉 構えました。

中井 ボールを左胸の前にセットしてください。

上杉 しました。

中井 では打ってください。

上杉 ……ダフリました。

中井 ですよね。上杉さんは、長い間のクセで、短いショットになればなるほど手でクラブを上げてしまう。そして、上から打ちこんでしまうというクセがあります。打ち方を変えないでボールを左に寄せたら、ダフるのは当然です。ポイントは、あくまで体の回転で球をとらえることです。いいですか、手元は1センチも動かさない、という意識でアプローチしてみてください。

上杉 はい。

中井 では打ってください。

上杉 ……ダフリました。

中井 ……ですよね。上杉さんは、これまた長い間のクセで、なるべくフェース面を変えないように変えないようにアプローチしています。この意識も不要です。手元は体の正面で固定しますが、フェース面は体の回転に伴ってローテーションするのが自然なんです。そして、構えたときにできる右手首甲側の角度、すなわちヒンジ角をホールドしたまま振り抜いてください。よし、もう一球打ってみてください。

上杉 ……ちょっとダフリました。

中井 もう一息です。体を回すイメージをもう一度確認しましょう。それは、「みぞおちを左右に向ける動き」と言い換えられます。30ヤードのアプローチですから、みぞおちをバックスウィングで右に30度、ダウンからフィニッシュにかけては左に60度、向けてください。これで決めましょう。ラスト一球!

上杉 ダフ……らない! なんだこれ。ものすごくいい感触が手に伝わってきました。

中井 ボールを左足寄りに置くことで、クラブが本来のロフト角通り、ライ角通りにインパクトを迎えます。その結果、ボールがしっかりとフェースに乗り、適正なスピンがかかる。そのとき、ウェッジのソール(バウンス)が地面をわずかにえぐる。それらが、得も言われぬ感触を手に伝えてくれるんです。

上杉 うーん、何球打ってもダフらない。すごい! これはまさに安心・安全アプローチです。

中井 クラブをヨコ振りする限り、リーディングエッジが地面に刺さることはあり得ません。「絶対にダフらない」理由がそこにあります。

上杉 腕をまったく使わずに、最近ちょっぴり出てきた私のお腹に右ひじが密着したまま、右の胸でボールをとらえているような感覚です。まさか、この私の余分な肉がアプローチの役に立つとは……。そうだ! 中井プロ。このアプローチを私の比ではないほど豊かなお腹の肉を持つ男にして、1982年のマスターズチャンピオン、クレイグ・スタドラーにちなみ、「スタドラーアプローチ」と命名しましょう!

中井 まあ、命名はお任せします。

上杉 よーし、そうと決まったらじっとしてはいられません。

中井 どこへ行くんですか? 上杉さん。

上杉 何を言ってるんですか、中井プロ! スタドラーアプローチを極めるためには、彼のような体型を手に入れるのが先決。それにはいっぱい食べなくっちゃ。ということで、暑いしウナギでも食べにいきませんか?

中井 我々に必要なのは、ウナギではなくダイエットな気がするんですけど……。

 
上からつぶすアプローチはオーガスタでは通用しません! 読者のみなさんも、せっかくだからオーガスタ攻略に必要なアプローチ、ぜひお試しください。来週はさらに深く、スピンのお話。目指せ、マスターズ!



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