僕のマグノリアレーン

2011.05.26

【第19回】
コックは球筋に直ちに影響するものです!

僕のマグノリアレーン

マスターズを目指す! そう宣言したジャーナリスト・上杉隆と、それをサポートするプロコーチ・中井学の二人三脚空想ゴルフレッスンドキュメント「僕のマグノリアレーン」。上杉の尊敬するプロゴルファー、セベ・バレステロス死去の報に触れ、「セベの遺志を継ぐ」と気合十分な上杉は、先週、ドローボールの打ち方を教わることになったが――。

第1回から読む   バックナンバー

なぜコックをすると
ドローが打てるのか?

担当編集者 中井プロ。先週の内容に関して「よく分からない」「難しい」「眠くなった」等、苦情が殺到しています。どうしましょう。

中井 う~ん、それは困りましたね。たしかに難しい内容ではあるのですが、ここを理解できるか、できないか。そこが、本当の上級者になれるか、なれないかを分かつポイントなのも事実です。

上杉 まあ、いいじゃないですか、読者がなんと言おうと。本連載は、あくまでも私が亡くなったセベの遺志を継いでマスターズに出場するためのもの。つまり、私が理解できさえすれば読者不在でもいいんです、記者クラブのように……。

中井 では上杉さんは、先週の内容は理解していただけたんですね?

上杉 いいえ、あんまり。

中井 ……そうですか。目の前にいる方に伝わらなければ、読者の方に伝わらないのも当然。よし、今週はとにかくわかりやすく説明します。では上杉さん、ちょっと先週のあらすじを説明していただけませんか?

上杉 了解しました。要約すれば、セベのように球筋を操るため、とくに飛距離の出るドローボールを打つためには手首のコックが必須、という話でしたよね。

中井 お、ちゃんと覚えているじゃないですか。

上杉 ただ、そのあとが今イチ分からないんですよ。コックをするのはクラブのライ角を維持するためだとか、なんだとか。あのあたりから急激に眠気に襲われました。

中井 やはりそこですか……。さて、どうすれば伝わるものか。そうだ、ちょっとつま先上がりのライから打つときのことを想像してください。つま先上がりから出やすい球筋といえば?

上杉 フック系ですね。

中井 ですよね。その理由は、つま先上がりではクラブがアップライトになるからなんです。スタンスよりもボールの位置が高ければ、手元の位置も高くなり、クラブはトウ側が立ってきます。ゴルフクラブは、ライ角がアップライトになるほどフェースが左を向く構造。だから、ふつうに振ると左にいくんです。ここまでOKですか?

上杉 おおむねOKです。

中井 逆に、つま先下がりではライ角がフラットになるため、フェースが右を向き、スライスが出る。そして、スウィング中にライ角が維持できないと、やはりフェースは右を向き、スライスになってしまうわけです。つまり、フェースの向きはライ角の影響を大きく受けるわけです。

上杉 少し眠くなってきました。

中井 あと少しの辛抱です。ライ角を維持できないと、ミスになる。そして、ライ角を維持するために必要なのが、セベにあって上杉さんにないもの。つまりはコックなんです。

上杉 先週から思っているのですが、それがどうドローと結びつくのかが分からないんですよ。

中井 コックをすると、手首とクラブに角度が生まれます。手首とクラブに角度がついた状態を維持したまま振ると、クラブは重心方向に動き出します。つまりバックスウィングで開き、ダウンで閉じるという自然なフェースローテーションが生まれるんです。そして、インパクトの瞬間、インパクトの圧力でボールが潰れるほんのわずかな時間にも、フェースは閉じる方向に動き続けます。そのごくごくわずかな、顕微鏡でなければ見えないようなフェースターンの分だけ、球にドロー回転が与えられるんです。

上杉 うーん、そういうことか。ちょっとわかってきました。

中井 そして、お待たせしました、上杉さん。ここまでの内容が分かったら、いよいよボールを打ってみてください。

上杉 長かったですね~。かれこれ2週にわたり、クラブを振っていませんよ、私。中井プロ、プレーは早いが話は長い。そう言われた経験はありませんか?

中井 ない……と思います、たぶん。でも、ここは本当に大切な部分なんですよ。みなさん、スウィングというと軌道のことばかり考えますが、本当に大切なのはインパクトでのフェースの向き。そして、フェースをローテーションさせること。それが球を「つかまえる」ということであり、「操る」ということですから。まあ、とにかく打ってみましょう。

上杉 それで、どの番手で打てばいいのでしょう。ドライバー? それとも、7番アイアンくらいですか。

中井 これでいきましょう(と、上杉のバッグからクラブを抜く)。

上杉 これは……2番アイアンですか! 私が10代の頃から愛用する、マグレガー社の名器「VIPbyニクラス」。自分でバッグに入れておいてなんですが、はっきり言って私はここ最近、いや少年時代から、このクラブをマトモに打てたことがありません。

 コックとヒンジ&ホールドで、
上杉のショットは驚くべき結果に!

019
2番アイアンで放たれた弾道の行方は……
中井 いいから、まあ打ってみてください。大丈夫、上杉さんのスウィングは連載開始当初よりはるかに良くなっています。

上杉 そうなんですよ! 先日おこなった茨城県復興支援のチャリティゴルフコンペでも、参加してくれた多くの知人から「いつの間にこんなに上手くなったんだ!」と絶賛されました。

担当編集者 そういえば上杉さん、中井プロに定期的にレッスンを受けていることを内緒にしていたそうですね。そこに気付いて「凄いのは上杉ではなく、教えている中井プロだ」と喝破した写真家の野村誠一さんもまた凄いですけど。

上杉 そうそう、なんで、ばらしたんですか。昨年の全米オープン前にモントレー半島で一緒にラウンドして以来、久しぶりに野村さんを打ち破るチャンスだと思ったのに……。それにそんな余計なことを言うと、読者からの僕の素敵なイメージが崩れるじゃないですか。まあいいや。ともあれ自分を信じて打ってみます。

中井 あっ、ちょっと待って。その際、テークバックの早い段階で左手首を親指方向にコックするのを忘れないでください。以前は「コックは意識しなくてもできる」と言いましたが、上杉さんの場合、現状では少し意識するくらいでちょうどいいですから。また、コックすることによって右手首が甲側に折れ、ヒンジ角(手首が甲側に折れたときの角度)がつくので、それをインパクトまで保って……。

上杉 分かってますよ、以前教えてもらった「ヒンジ&ホールド」ですね。テークバックでできた右手のヒンジ角をインパクトまでホールドすることで、ナチュラルなアームローテーションが生まれるんですよね。ふふふ、でも、当たるかなぁ(と、打つ)。

中井 ……凄い。

上杉 当たった……。当たったのに、手に感触がない。ちょっと打球を目で追えなかったのですが、どこに飛びましたか?

中井 予想をはるかに上回る弾道ですよ。球もしっかりと上がって、落ち際で左に切れる完璧なドロー。とても大昔の2番アイアンで打ったとは思えません。なにより素晴らしいのが、キャリーで220ヤードほど飛んでいることです。これは凄い。

上杉 220ヤードといえば、この連載がスタートした半年前の私のドライバーの飛距離じゃないですか! うーん、コックを意識して、あとはヒンジ&ホールドしただけなのに……もうちょっと打ってみてもいいですか?

中井 もちろん。どうぞ何球でも練習してください。

上杉 よ~し、今日は打って、打って、打ちまくりますよ。しっかりコックしてライ角を維持して――それっ。ヒンジ&ホールド! どうだっ。ヒンジ、エーン、ホールっ!

中井 上杉さん、練習に励むのはいいけれど、叫びながらショットするのはやめてください……。

 
この2番アイアンショットは本当に凄かった! 半年間で本当に上達した上杉隆は、これからどこまで上手くなるのか? 来週も、目指せ、マスターズ!



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

運営会社 | プライバシーポリシー