僕のマグノリアレーン

2011.01.11

【第1回】
「あの~、マスターズに出たいんですけど。」

僕のマグノリアレーン

上杉隆。政治やメディアの問題に深く切り込む気鋭のジャーナリストというのは表の顔。実は彼は、中学時代にゴルフと出会い、高校生のころには関東ジュニア出場経験もある、生粋のゴルファーなのだ。
そんな彼がある重大な決意をしたのは、2010年も終わりに近づいたころのことだった。
「もう一度、競技に出たい」
精力的な取材活動で東奔西走する中でいつしか失った、「戦いたい」という男の闘争本能。それが、彼の体内で再び、フツフツと煮えたぎってきたのだ。
競技に出る。そう決心した上杉が年明け早々に向かったのは、知己のプロゴルファー・中井学が代表をつとめる赤坂のレッスンスタジオ「ファーストゲート」。
競技に出る。その言葉の裏に隠されたとんでもない野望を、このときはまだ、誰も予感すらしていなかった――。

※マグノリアレーンとは……ゴルフの祭典「マスターズトーナメント」が開催されるオーガスタナショナルGCへの進入路。ここを通り抜け、マスターズに出場するのがすべての男性ゴルファーの夢なのだ。

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上杉隆が中井学に打ち明けた
大いなる野望とは……!?

上杉 2011年を前に一大決心をしました。

中井 決心が多いですね、毎回。ランニング、筋トレ、練習場通い……。でも、どれも決意表明で留まってますけど。

上杉 今回は違います。実は、2011年はもういちど競技に復帰する挑戦の年にしようと思っているんです。

中井 それは素晴らしいですね。決意が続けばの話ですが。

上杉 大丈夫です。今回は連載ということで衆人環視の中ですから。

中井 そうですか。まぁ、あまり期待はしてませんが、私でよければ是非、サポートさせてください。

上杉 いいですよ。そのかわり、お礼に大会ではキャディバッグを担がせてあげます。

中井 それは遠慮しておきます(笑)。

上杉 なんでですか? 栄誉なことですよ。行きたくないんですか?

中井 まぁまぁ。それよりも競技ゴルフですよね。上杉さんはホームコースをお持ちではないから、まず目指すべきはパブ選(全日本パブリックゴルフ選手権)ですかね。

上杉 手始めは、そうでしょうね。

中井 手始め?

上杉 はい。手始め、ファーストゲートでしょう、そこは。

中井 お店の宣伝をありがとうございます(笑)。パブ選が手始めというと、さらにその先を見据えているわけですね。目標を高く持つことは上達のためにすごくいいことです。パブ選の先ということは、ホームコースを持って、関東アマ出場あたりを目指すんでしょうか。

上杉 まぁ、通過点ですね、そこは。

中井 通過点?

上杉 はい。セカンドゲートです。そこまでいくと宣伝にならなくなりますね。

中井 ……。それはそれは、失礼しました。では上杉さんの競技ゴルフというのは、もしかして、アマチュア最高峰の試合、日本アマを目指すということですかね。なるほど、きわめてハードルは高いですが、決して不可能ではありません。一緒に頑張りましょう!

上杉 あの~、ちょっと待ってください。

中井 はい?

上杉 その、日本アマも通過点ですけど。

中井 は?

上杉 日本アマあたりはサードゲート。私の目指す競技ゴルフはさらにその先、世界にあります。

中井 はい? すみません、うまく聞き取れませんでした。

上杉 中井プロ、マスターズってご存知ですか。

中井 そりゃ、もちろん。

上杉 そこに出たいんです。

中井 マスターズって……。あの、世界最高峰のトーナメントのマスターズですか? オーガスタナショナルGCで毎年4月に開催される、四大メジャーのひとつの、あのマスターズトーナメントのことですよね。

上杉 はい。水泳のマスターズと勘違いでもしてましたか?

中井 それはありませんが、まさかマスターズとは……。

上杉 さっき目標は高く持てと言ったじゃないですか?

中井 高すぎるのも若干問題が……。マスターズは、日本人プロですら年に2人程度しか出場できない世界最難関の狭き門であり、しかもアマチュアで出場した日本人は過去ゼロ。確かに、2009年から始まった「アジア太平洋アマ」に勝てば出場権が得られますが……(昨年は、日本の大学生・松山英樹くんが優勝し、2011年度の出場権を獲得)。

上杉 そうでしょう、それですよ、中井プロ。アジア太平洋アマに勝って、一緒にマグノリアレーンを走り抜けましょう! ってどうしたんですか、そんなしけた顔して。

中井 いや……。

上杉 見続ければ夢は叶う、かもしれない。でも夢を捨てた瞬間、それは永遠に不可能になります。

中井 それは、太陽が西から上って東に沈むよりは確実に可能性がありますし、どんな物事にも不可能ということはあり得ない、という意味では可能ですね、たしかに。

上杉 バカボンのパパみたいなことを言う人ですね。でも、アジア太平洋アマに勝った松山くんよりも私のほうがゴルフ歴は長いし、少しばかりの蓄えもありますし……。

中井 よし、わかりました。どこまで行けるか、やるだけやってみましょう!

マスターズ出場のための
オーガスタ攻略4カ条

上杉の秘めたる野望、それは「マスターズ出場」というとんでもないものだった。そう、本連載の趣旨、それはアマチュアゴルファーを代表して、上杉隆が見果てぬ夢、マスターズを目指すというものだったのだ。
可能性は限りなくゼロに近い。しかし、夢を追うことを忘れてしまった現代人に、もう一度チャレンジする素晴らしさを伝えたい。同時に、雲の上の世界レベルの目標を掲げることで、ゴルファーはどれだけ成長できるのかを見てみたい。
これは、ひとりのゴルファーと、ひとりのプロゴルファーががっぷり四つに組み、オーガスタへと続く道、選手しか通れない「マグノリアレーン」を目指して突き進む、愛と感動、かどうかはわからないが、とにかくそんなレッスンドキュメントなのだ!

001上杉 幸い、私は昨年、一昨年と2年連続でマスターズの取材に行っています。

中井 週刊ゴルフダイジェストで読みました。

上杉 ありがとうございます。マスターズトーナメントは中学生のころから1回も欠かさずにテレビ中継で見ていますから、コースレイアウトはもちろん、近所の名物レストラン「フーターズ」の可愛い女の子の名前までよく知っていますよ。

中井 そこはあまり関係ないような……。

上杉 えっ、ご飯を食べないでゴルフができるんですか?

中井 いや、そういう意味では……。

上杉 では、そんなこんなで、中井プロには、私の現地情報に基づいた特別レッスンをお願いしたい。

中井 なるほど、いざマスターズに出場するときのために、あらかじめオーガスタ対策を今のうちから始めておこう、というわけですね。

上杉 さすが中井プロ、理解が早い。ということで赤坂にできた「フーターズ日本一号店」にでも行きましょうか?

中井 そこは、いや、全体的に若干順番がおかしい気がしないでもありませんが、一度引き受けると言った以上、もうなんでもオーケーです。

上杉 若干、やけくそになってませんか?

中井 それはそうでしょう。いや、そんなことはありません。それよりも真剣な話、オーガスタ対策をいくら考えても、出場できなければ意味がありませんからね。まずはどのようにオーガスタを目指すか、そこから考えていきましょうか。

上杉 それに関してはご安心ください。既に具体的なプランを考えてきました。まず、飛行機はデルタ航空のマイルがずいぶんと貯まっているので心配いりません。

中井 なるほど。

上杉 ただ、そこからがちょっと悩みどころなんです。

中井 と、言いますと?

上杉 成田からアトランタまで直行便で行くのは決定ですが、問題はそこからです。アトランタからオーガスタまで飛行機を使って空路で行くか、陸路をレンタカーで行くか、そこが難しいところなんですよ。

中井 ……。

上杉 そうだ! 中井プロはアメリカに住んでいたから、運転をお願いしてもいいですか?

中井 え~と、それはいいんですが。上杉さん、「マスターズに出る」ではなく「マスターズに行く」って話になってませんかね。

上杉 ……すみません、ちょっとジョークで場を和ませようとかと思いました。

中井 いや、それはもう十分です。

上杉 というか、いいんです。どうやって出るかは。だって、出た後のことを考えたほうが夢があって楽しいじゃないですか。

中井 そうか、「マスターズに出場するときのために、オーガスタ対策をしておく」が趣旨ですもんね。

上杉 入場経験のある私から最初に指摘しておきましょう。あそこは、左打ちのマイク・ウィアや、フィル・ミケルソンが優勝していることからも分かるように、コースレイアウトがレフティに有利なんです。

中井 またいきなりのご指摘で……。

上杉 で、右打ちならば、基本的に左曲がりのドローボールが求められるんですが、同時に、ボールを正確に止めることも求められる。その点、レフティなら止まる右曲がりのフェードで狙っていけますから。というわけで、私はレフティに転向しようと思うのですが。

中井 ちなみに上杉さん、何年のマスターズ出場を目指しているのでしょうか。

上杉 うーん、そこまで考えてなかったな。いま42歳ですから、えっと、じゃあ2015年でどうでしょう。その時私は46歳、ニクラスのマスターズ最年長優勝の年に初出場って、カッコいいじゃないですか。

中井 今からレフティに直すと、50年かかる危険性があります。

上杉 5年くらいになりませんか?

中井 なりません!

上杉 わかりました。ではやめましょう。

中井 ずいぶんあっさりしてますね。

上杉 善は急げと言うじゃないですか。

中井 誤用です。

上杉 ばれました。さて、では、なにから始めましょうか。

中井 はい。パッと思い浮かぶオーガスタ対策は、大きく分けて4つあります。

1 飛距離の出る高い球の修得と、弾道を打ち分ける高度な技術

2 傾斜地からドロー、フェードを打ち分ける極めてハイレベルな技術

3 ショートゲームの精度の圧倒的な向上

4 オーガスタに特化した精緻なゲームプランの構築

上杉 うーん、さすがティーチングプロ。見事な分析です。「圧倒的な」、とか「極めてハイレベルな」、といった言葉が若干気になりますが、たしかにどれも必要欠くべからざるものですね。それでは、いったいどこから手をつければいいんでしょう?

中井 ズバリ――

上杉 運転!

中井 すみません、やっぱり僕、辞退してもいいですか?

上杉 失礼しました。嘘です。操縦!

中井 帰ります。

上杉 嘘だって~。

中井 まじめにやってください。ズバリ! 飛距離です。なぜなら、このなかでもっとも必要な要素であり、同時に、いまの上杉さんにもっとも欠けているものだからです。

上杉 左腰の大怪我をしてからぜんぜん飛ばないんですよね、ドライバー。

中井 誰でもボールは飛ばせるようになります。オーガスタの13番や15番といったパー5のホールで2オンさせられる飛距離。つまり、キャリー270~280ヤードを打てるスウィングが目標です。

上杉 2打でですか?

中井 ドライバーでです! よし、5年後の出場を目指して、さっそくレッスンをスタートさせましょう!

上杉 よ~し! 目標は2015年!

担当編集者 あの~、ちょっといいですかね。

中井 なんですか、せっかくノってきたところなのに。

担当 この連載、1年間の予定なんですけど……。

中井&上杉 えっ、1年で?

 

と、いうわけではじまった上杉隆と中井学による妄想(?)レッスンドキュメント「僕のマグノリアレーン」。果たして上杉はどこまで上達できるのか!? 連載が終わるまでにマスターズに出られるのか!? 来週からは、本格的にレッスン開始で、いきなり驚異のヘッドスピードアップが実現!? 乞うご期待っ。



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